現代文・小論文講師 出口汪氏

大人の日本語能力は訓練で飛躍的に伸びる 論理力を養い、仕事や生活をランクアップ

出口汪氏
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出口汪の大人のための日本語トレーニング
  • 発行日:毎週月・木曜日
  • 登録料:840円(税込み)
サンプル詳細

あなたは頭の良さや、鋭い感受性は、生まれつきのものだと思っていませんか?もちろん、一人一人生まれたときから、能力は異なっているのは事実です。だが、それ以上に、後天的な訓練によるものが大きいのです。

私たちは生涯日本語を使って、ものを考え、ものを感じます。ところが、普段何気なく言葉を使っているだけに、逆に論理的な使い方や微妙な使い方を知らないままでいるのです。

曖昧な言葉の使い方しかできない人に、論理的な思考は困難です。まずは言葉の規則を知り、規則に従って日本語を自在に使いこなすトレーニングをしましょう。言語処理能力を高めることで、あらゆる知的活動がスムーズに運ぶようになります。

ただし、言葉は習熟(無意識のうちに論理的な使い方ができること)しなければなりません。だから、日々のトレーニングが欠かせないのです。

素材は文学です。週に二回、私が最高傑作の小説をお届けします。だから、面白くないわけがありません。文学的感動を味わいながら、言葉のトレーニングをしませんか。

発行者プロフィール
出口汪(現代文講師)
1955年、東京生まれ。受験界の現代トップ講師として20年以上活躍するカリスマ講師。東進衛星予備校講師の傍ら、自らの理想を追い求め、大学受験予備校スパー・プレップ・スクール(SPS)を設立。その執筆になる受験参考書は発行部数400万部を超える。日本語の「論理」から合理的・客観的に難問を解明していくスタイルは、受験現代文の世界に革命をもたらしたと言われる。論理を全ての学問のエンジン部分と考え、それによって情報の処理能力を上げるという考えに基づいて画期的日本語養成ツール『論理エンジン』を開発した。現在、全国の小中高で導入されている。さらに、日本語を伸ばすということは、単なる学力の向上のみならず、人生を豊穣なものにする力が養われるとして、さまざまな教育活動的に取り組んでいる。
出口汪の大人のための日本語トレーニング

毎週二回、出口が選び抜いた文学作品には、出口の文学案内、オリジナル問題、その答えと解説が付いてきます。あなたは新たな読書体験をすることになるでしょう。文学の面白さを発見すると同時に、オリジナル問題を解くことによって、論理力が身につき、感性が磨かれ、文学的教養を手に入れることができるはずです。今までになかった、画期的なトレーニング!

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                       2009年03月12日号 Vol.000
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                出口汪の大人のための日本語トレーニング
              ~名作を読みながら、論理力や感性を磨こう~
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はじめに

大人のための日本語トレーニングの目的

このトレーニングは、
(1)日本語の正確な使い方を身につける
(2)論理力を鍛える
(3)感性を磨く
(4)文章の深く、正確な読み方を身につける
(5)文学の面白さを発見
といった目的のメルマガです。

その結果、どんないいことが起こるかというと、
(1)日本語の使い方がうまくなる
(2)文章力がアップする
(3)頭が良くなる
(4)感性が磨かれる
(5)論理力が身につく
(6)記憶力がアップする
(7)コミュニケーション能力が身につく
(8)仕事がうまくはかどる
(9)受験、試験などに合格する
(10)文学が面白くなる
(11)名作をじっくり読める
等々、実はまだまだ驚くべきことがきっと起こります。
といった魔法のメルマガにしたいと、作者(出口)ははりきっています。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
大人のための日本語トレーニングの基本的な考え方
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では、何故夢のようなことがかなうのか?

 人間は言葉でものを感じ、言葉でものを考えるからです。そして、その言葉
は私たちにとって日本語に他なりません。
 今、一切言葉を使わずに、何でもいいから考えてみて下さい。

       ★

 どうでしたか?
 「さあ何を考えようかな」と無意識に思った人は、すでに約束違反です。言
葉を使わずに、そう思うことすらできないからです。
 言葉を使わずに、何かを考えようとしても出来ない状態、それがカオス(混
沌)です。

 では、次に言葉を使わずに何でもいいから感じてみて下さい。

       ★

 どうでしたか?
 たとえば、「暑い」という言葉を使わずに、「暑い」と感じることができる
でしょうか?
  当然不可能です。
 もちろん、「暑い」と感じるのは皮膚であり神経かもしれませんが、言葉がな
ければそれを「暑い」と認識できません。
 やはりその時の状態がカオスなんです。
 つまり、思考も感性も言葉と無関係には成り立ちません。

 追々詳しく説明していきますが、言葉を曖昧にしか使えない人は曖昧な思考
しかできず、おおざっぱな言葉の使い方しかできない人は雑な感性しか持てな
くなっていきます。
 人は言葉を使っているようで、実は言葉によって復讐されているのかもしれ
ませんね。
 
 人は言葉によって、外界や内的世界を整理します。なぜなら、カオスに耐え
きれないのが人間だからです。
 私たちはあらゆるものをいったん言葉に置き換え、整理し、その上でものを
考えたり、感じたりする生き物なのです。
 それがコンピューターでいえば、OSに当たるもので、しっかりとしたOSを頭
脳に構築しなければ、私たちは論理的にものを考えることも、繊細な感じ方を
することも不可能です。
 だからこそ、日本語の使い方を訓練することで、言語処理能力をアップし
(OSを強化し)、論理力と感性も同時にアップさせようというのが、今回のト
レーニングの趣旨です。
 私たちは生涯にわたって、日本語で考え、日本語で感じ、日本語で表現し、
日本語でコミュニケーションを図っているわけであって、決して英語でそれら
をやっているわけではありません。


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文学を読む面白さ
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 実は、このトレーニングには、もう一つ大きな仕掛けがあります。
 私が日本の近代文学の中から、とびきり面白い作品をチョイスして、それを
じっくりと読んで貰おうというわけです。
 メニューの一部を紹介しましょう。
 一応レベル設定をしていますので、文学作品を読み慣れていない方は、レベ
ルの低い方からトレーニングすることを、お勧めします。

レベル1 宮沢賢治「よだかの星」・有島武郎「一房の葡萄」など
レベル2 夢野久作「少女地獄」・梶井基次郎 「Kの昇天」など
レベル3 森鴎外「最後の一句」・芥川龍之介「地獄変」など
レベル4  エドガー・アラン・ポー 「アッシャー家の崩壊」など
レベル5 太宰治「女の決闘」・夏目漱石「それから」など
レベル6 森鴎外「舞姫」・夏目漱石「こころ」など
 タイトルを見ただけで、思わず読みなくなる作品ばかりでしょう。
 他にも一度は読んでおきたい名作をチョイスして、週に二回メールにてお届
けします。
 大人のための日本語トレーニングで、日本文学の最高傑作に次々と巡り会え、
新しい形での読書の習慣が身につきます。


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創作問題を解く
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 私が発案した論理エンジン〔論理力を養成する独自のプログラム〕は、現在
私立高校だけでも百五十校以上正式採用し、今や中学から、大学まで幅広く成
果を上げています。
 論理エンジンの考え方に基づき、言語処理能力を高め、論理力を養成するた
めのトレーニング問題をふんだんに用意します。
 その問題を解くうちに、自然と日本語の正確な使い方が分かり、論理力が養
成され、感性が磨かれるといった仕掛けです。
 しかも、その作品世界が深く理解でき、文学の面白さが発見できる、そんな
トレーニングにしていきたい。
 もちろん、私なりの文学案内も存分に味わえるはずです。
 
 近年、文学離れが言われるようになって久しくなりました。
 実際、文学作品の文庫本を次々と絶版になり、私たちはそれらを気楽に手に
取ることが難しくなりました。
 確かに、文学作品は読み慣れていない人にとっては、活字離れが進んだ今ハー
ドルの高いものになっているのかもしれません。
 でも、本当は文学ほど面白いものはありません。

 毎週、月曜と木曜の二回、私が名作を吟味して届けます。
 私の独自の設問を解いているうちに、誰でも文学の面白さを実感できるよう
になるはずです。
 文学は精神の食べ物だと、宮沢賢治が書いています。
 栄養いっぱいの食べ物を、私が最高の料理にして差し出します。


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大人のための日本語トレーニングのコンテンツ
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(1)選び抜かれた文学作品
(2)出口の鑑賞の手引き
(3)論理エンジンの考え方に基づくオリジナル問題
(4)オリジナル問題の解答と詳しい解説

 では、スタートしましょう。


__________________________________

 第一回目は、梶井基次郎の短編です。
  頭のトレーニングですから、できたら印刷してじっくりと取り組んで下さい。
(今回のサンプル版は、少し難しめの問題ですが、心配しないで下さい。
実際には、レベル1の簡単な文章からトレーニングを始めますので、誰でもス
ムーズに力をつけることができます〕
___________________________________
 
作家 梶井基次郎
 私が文学青年だった頃、大抵の小説家志望の若者が自分の文体を作り上げる
ため、名文家と言われる作家の文章を原稿用紙に写したものです。
 その作家は、志賀直哉か梶井基次郎のどちらかが圧倒的でした。
 それくらい梶井の文章は当時の文学青年の熱狂的な支持を得ていて、私も例
外ではなく、たった二十編の短編を繰り返し読んだ記憶があります。
 梶井基次郎のイメージは、まさに不遇の一言に尽きるのではないでしょうか?
      ◆
 梶井は1901年生まれ、昭和初期に活躍し、32歳の若さでこの世を去っ
ています。その間、発表された作品は、たった二十の短編。
 彼の生涯には、いつも「死」がつきまとっていました。
 十二歳で祖母が、十四歳で弟が、ともに肺結核で死亡します。
 当時の肺結核は不治の病と言われていました。
 梶井も肺結核を恐れていたに違いありません。そして、とうとう十九歳で、
彼自身も肺結核を発病します。
 丁度その頃、彼は文学熱に取り憑かれ、特に漱石に傾倒していくのですが、
彼の文学的野望の果てには「死」が待ち構えていたのです。
 二十三歳で東大に入学しますが、その年にとうとう妹までが肺結核で死亡し
ます。 
 翌年、二十四歳で同人雑誌「青空」を創刊。以後、「青空」に作品を発表し
ていくのですが、文学界からは黙殺され続けます。
 ようやく三十一歳の時「のんきな患者」が商業雑誌中央公論に掲載され、初
めて印税を手にします。だが、その年彼はとうとう肺結核で死んでいくのです。
 皮肉なことに、「のんきな患者」が評判を呼びますが、その後彼が作品を発
表することはありませんでした。
 梶井の死後、生前の作品群が評価されることになったのです。
      ◆
 人が「死」を絶えず意識して生きるとき、世界はどのような映っているので
しょうか?
 私たちはこれから先も永遠に生き続けることができると、心のどこかで信じ
ているので、美しい自然も日々の営みに紛れて余り目にとめることがありませ
ん。
 梶井はこの世界の美しさを、一つ一つ拾い上げて、見事に構築された言葉の
世界を私たちの前に提示してくれます。
 だが、その「生」の美しさの影に、「死」が潜んでいることを、梶井は決し
て忘れません。
 「桜の木の下には」は彼の二十七歳の頃の作品、まさにこの短い文章の中
に、彼の世界観が凝縮されていると言ってもいいでしょう。



===================================

梶井基次郎 「桜の樹の下には」

 桜の樹の下には屍体が埋まっている!
 これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲く
なんて信じられないことじゃないか。俺はあの美しさが信じられないので、こ
の二三日不安だった。しかしいま、やっとわかるときが来た。桜の樹の下には
屍体が埋まっている。これは信じていいことだ。

 どうして俺が毎晩家へ帰って来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選
りに選ってちっぽけな薄っぺらいもの、安全剃刀の刃なんぞが、千里眼のよう
に思い浮かんで来るのか、おまえはそれがわからないと言ったが、そして俺に
もやはりそれがわからないのだが、それもこれもやっぱり同じようなことにち
がいない。

 いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あた
りの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った
独楽が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの
幻覚を伴うように、灼熱した生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それは人
の心を撲たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。
 しかし、昨日、一昨日、俺の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。俺に
はその美しさがなにか信じられないもののような気がした。俺は反対に不安に
なり、憂鬱になり、空虚な気持になった。しかし、俺はいまやっとわかった。
 おまえ、この爛漫と咲き乱れている桜の樹の下へ、一つ一つ屍体が埋まって
いると想像してみるがいい。何が俺をそんなに不安にしていたかがおまえには
納得がいくだろう。
 馬のような屍体、犬猫のような屍体、そして人間のような屍体、屍体はみな
腐爛して蛆が湧き、堪らなく臭い。それでいて水晶のような液をたらたらとた
らしている。桜の根は貪婪な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃく
の食糸のような毛根を聚めて、その液体を吸っている。
 何があんな花弁を作り、何があんな蕊を作っているのか、俺は毛根の吸いあ
げる水晶のような液が、静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあが
ってゆくのが見えるようだ。
 おまえは何をそう苦しそうな顔をしているのだ。美しい透視術じゃないか。
俺はいまようやく瞳を据えて桜の花が見られるようになったのだ。昨日、一昨
日、俺を不安がらせた神秘から自由になったのだ。
 二三日前、俺は、ここの溪へ下りて、石の上を伝い歩きしていた。水のしぶ
きのなかからは、あちらからもこちらからも、薄羽かげろうがアフロディット
のように生まれて来て、溪の空をめがけて舞い上がってゆくのが見えた。おま
えも知っているとおり、彼らはそこで美しい結婚をするのだ。しばらく歩いて
いると、俺は変なものに出喰わした。それは溪の水が乾いた磧へ、小さい水溜
を残している、その水のなかだった。思いがけない石油を流したような光彩が、
一面に浮いているのだ。おまえはそれを何だったと思う。それは何万匹とも数
の知れない、薄羽かげろうの屍体だったのだ。隙間なく水の面を被っている、
彼らのかさなりあった翅が、光にちぢれて油のような光彩を流しているのだ。
そこが、産卵を終わった彼らの墓場だったのだ。
 俺はそれを見たとき、胸が衝かれるような気がした。墓場を発いて屍体を嗜
む変質者のような残忍なよろこびを俺は味わった。
 この溪間ではなにも俺をよろこばすものはない。鶯や四十雀も、白い日光を
さ青に煙らせている木の若芽も、ただそれだけでは、もうろうとした心象に過
ぎない。俺には惨劇が必要なんだ。その平衡があって、はじめて俺の心象は明
確になって来る。俺の心は悪鬼のように憂鬱に渇いている。俺の心に憂鬱が完
成するときにばかり、俺の心は和んでくる。
 おまえは腋の下を拭いているね。冷汗が出るのか。それは俺も同じことだ。
何もそれを不愉快がることはない。べたべたとまるで精液のようだと思ってご
らん。それで俺達の憂鬱は完成するのだ。
 ああ、桜の樹の下には屍体が埋まっている!
 いったいどこから浮かんで来た空想かさっぱり見当のつかない屍体が、いま
はまるで桜の樹と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしな
い。
 今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、
花見の酒が呑めそうな気がする。
===================================
___________________________________

問題1
 桜の樹の下には屍体が埋まっている!
(                        )
(                        )
(                        )
 これは信じていいことなんだよ。桜の樹の下には屍体が埋まっている。 
 これは信じていいことだ。

問 (  )に入る文章を、次の選択肢を並べ替えることで完成しなさい。
(1)しかしいま、やっとわかるときが来た。
(2)何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃ
   ないか。
(3)俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。
____________________________________

解説
 日本語の持つ論理性をしっかりと捉まえたかどうかの問題。
 まず(1)の冒頭「しかし」をチェック。
 「しかし」は逆接なので、(3)「俺はあの美しさが信じられない」、(1)
「しかしいま、やっとわかるときが来た」とつながります。
 次に、(2)の「何故」に着目。(2)の位置は(3)(1)の前か後しか
ありえません。
 もちろん、(2)は「桜の樹の下には屍体が埋まっている」の理由ですから、
(3)(1)の前に来ます。
  
  「俺」はまず「桜の樹の下には屍体が埋まっている」と述べ、その理由とし
て、「何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃ
ないか」としているのです。
 「俺」は満開の桜の木の下に立ち、その美しさがどうしても信じられません。
そこで、その地面の下に屍体が埋まっていると幻視することで、ようやく納得
できたのです。

答 (2)(3)(1)

===================================

論理としての接続語

 接続語とは、文と文、語句との論理的関係を示す記号です。そして、論理的
とは、先を予想することでもあるのです。

 私は一生懸命勉強した。

 私たちは当然成績は上がるだろうと予想します。そして、予想通りの時は、

 私は一生懸命勉強した。だから、成績が上がった。

 と、順接の「だから」を使います。
 逆に、予想に反した結果の時は、

 私は一生懸命勉強した。だが、成績は上がらなかった。

 と、逆接の「だが」を使うのです。このように、論理的に文章を読むとは、
先を予想して読むことに他ならならず、その際、論理的関係を示す記号を使う
ことになるのです。
 このように言葉の規則に従った使い方を習熟することで、次第にあなたの論
理力が養成されてくるのです。

===================================



___________________________________

問題2
 どうして俺が毎晩家へ帰って来る道で、俺の部屋の数ある道具のうちの、選
りに選ってちっぽけな薄っぺらいもの、安全剃刀の刃なんぞが、千里眼のよう
に思い浮かんで来るのか、おまえはそれがわからないと言ったが、そして
俺にも(   )それがわからないのだが、それもこれもやっぱり同じよう
なことにちがいない。
 いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あた
りの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。

問(   )に入るひらがな3文字を、次の中から選びなさい。
 し、ま、か、し、は、り、や、る、で
____________________________________

解説 
 まず空所が3文字のひらがなであることから、「わからない」を修飾する副
詞〔述語となるものを修飾する言葉〕だと推測できます。
 次に、空所前後を検討します。
 空所直前に「おまえはそれがわからないと言った」とあり、「俺にも
(    )それがわからない」とあるので、「やはり」が答え。

答 やはり


___________________________________

問題3
 それは、よく廻った独楽が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演
奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱した生殖の幻覚させる後光のよ
うなものだ。それは人の心を撲たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、
美しさだ。
 (   )、昨日、一昨日、俺の心をひどく陰気にしたものもそれなのだ。
俺にはその美しさがなにか信じられないもののような気がした。俺は反対に不
安になり、憂鬱になり、空虚な気持になった。しかし、俺はいまやっとわかっ
た。
問(   )に入る接続語を次から選びなさい。
(1)そして (2)つまり (3)しかし
____________________________________

解説
 冒頭の指示語「それ」は、前段落の真っ盛りの花を指します。どんな花でも、
真っ盛りの状態では、人に「灼熱した生殖の幻覚」を与えるものなのです。
 空所直前は「不思議な、生き生きとした、美しさ」、直後はそれが「俺の心
をひどく陰気にした」とあるので、逆接。
 「俺」には、花が真っ盛りに魅せる、その幻覚を伴うような美しさが信じら
れません。
  ところが、今やっとわかったのです。

答(3)


____________________________________

 いよいよ「不思議な、生き生きとした、美しさ」の理由が、次に明かされま
す。今までは桜の満開の下で、何故あのような美しい花びらを咲かせることが
出来るのか、不思議で仕方なく、それ故「俺」は不安に駆られていたのです。
 では、どんな理由によるものか、少し先を読んでいきましょう。

      ▼

 おまえ、この爛漫と咲き乱れている桜の樹の下へ、一つ一つ屍体が埋まって
いると想像してみるがいい。何が俺をそんなに不安にしていたかがおまえには
納得がいくだろう。
 馬のような屍体、犬猫のような屍体、そして人間のような屍体、屍体はみな
腐爛して蛆が湧き、堪らなく臭い。それでいて水晶のような液をたらたらとた
らしている。桜の根は貪婪な蛸のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃく
の食糸のような毛根を聚めて、その液体を吸っている。
 何があんな花弁を作り、何があんな蕊を作っているのか、俺は毛根の吸いあ
げる水晶のような液が、静かな行列を作って、維管束のなかを夢のようにあが
ってゆくのが見えるようだ。
 おまえは何をそう苦しそうな顔をしているのだ。美しい透視術じゃない
か。俺はいまようやく瞳を据えて桜の花が見られるようになったのだ。昨日、
一昨日、俺を不安がらせた神秘から自由になったのだ。
 
解説
 「俺」が今心をひかれているものは、まさに生そのものの持つ美しさです。
そして、その生は命を生み出す、生殖という神秘的な情熱を伴っています。
 桜の木の満開の下で、いま「俺」はそのことを感じ、そして、その一方地面
の下には腐乱した屍体を幻視するのです。
 そう、美しい生の営みを背後から支えているのは、この醜い死そのものの現
実だったのです。
 そのことに気が付いたとき、「俺」は自分を不安がらせた神秘から自由にな
ることができたのです。

____________________________________

____________________________________

問題4
 二三日前、俺は、ここの溪へ下りて、石の上を伝い歩きしていた。水のしぶ
きのなかからは、あちらからもこちらからも、薄羽かげろうがアフロディット
のように生まれて来て、溪の空をめがけて舞い上がってゆくのが見えた。おま
えも知っているとおり、彼らはそこで美しい結婚をするのだ。しばらく歩いて
いると、俺は変なものに出喰わした。それは溪の水が乾いた磧へ、小さい水溜
を残している、その水のなかだった。思いがけない石油を流したような光彩が、
一面に浮いているのだ。おまえはそれを何だったと思う。それは何万匹とも数
の知れない、薄羽かげろうの屍体だったのだ。

問 「しばらく歩いていると、俺は変なものに出喰わした。」の「変なもの」
と同じものを単語で2箇所抜き出しなさい。

解説
 生と死、「俺」は今その対照に目を奪われているのですが、その例として
「薄羽かげろう」を挙げます。
 薄羽かげろうの生誕の影には、何万匹ともしれない薄羽かげろうの屍体があ
ったのです。
 実はこの話の展開は、論理的に言えば「イコールの関係」です。

 桜の満開の花     地面の中の屍体
      =           =
 薄羽かげろうの生誕 薄羽かげろうの屍体

答 

 問題は、「変なもの」とは何かですが、その直後「それ」とあり、その内容
が、次に「光彩」と述べられているので、これが一つ目の答え。
 次に、「光彩」と「イコールの関係」にあるものを捜すと、「それは~」薄
羽かげろうの屍体」とあるので、「単語」という条件から、「屍体」が答です。
答 光彩 屍体

                         
問題5
 隙間なく水の面を被っている、彼らのかさなりあった翅が、光にちぢれて油
のような光彩を流しているのだ。そこが、産卵を終わった彼らの墓場だったの
だ。
 俺はそれを見たとき、胸が衝かれるような気がした。墓場を発いて屍体を嗜
む変質者のような残忍なよろこびを俺は味わった。
 この溪間ではなにも俺をよろこばすものはない。鶯や四十雀も、白い日光を
さ青に煙らせている木の若芽も、ただそれだけでは、もうろうとした心象に過
ぎない。俺には惨劇が必要なんだ。その平衡があって、はじめて俺の心象は明
確になって来る。俺の心は悪鬼のように憂鬱に渇いている。俺の心に憂鬱が完
成するときにばかり、俺の心は和んでくる。
 

問 「俺はそれを見たとき、胸が衝かれるような気がした。」の「それ」が指
すものを次から選べ。

(1)水の面
(2)翅
(3)光彩
(4)墓場
____________________________________

解説
 単純に指示語の問題です。
 指示語はまず直前から検討しましょう。
 散乱が終わった薄羽かげろうの屍体を見て、胸が突かれる思いをしたのです。
答 (4)
____________________________________

問題六

 おまえは腋の下を拭いているね。冷汗が出るのか。
(     (1)     )
 それは俺も同じことだ。何もそれを不愉快がることはない。べたべたとまる
で精液のようだと思ってごらん。それで俺達の憂鬱は完成するのだ。
(     (2)     )
 いったいどこから浮かんで来た空想かさっぱり見当のつかない屍体が、いま
はまるで桜の樹と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしな
い。
(     (3)     )
 今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、
花見の酒が呑めそうな気がする。

問 次の文章を(1)~(3)の適切な箇所に挿入しなさい。
「ああ、桜の樹の下には屍体が埋まっている!」
____________________________________

解説
 (2)の直後に「いったいどこから浮かんで来た空想かさっぱり見当のつか
ない屍体が、いまはまるで桜の樹と一つになって、どんなに頭を振っても離れ
てゆこうとはしない」とありますが、これが「桜の樹の下には屍体が埋まって
いる」と「イコールの関係」にあることから、(2)が答え。
 このように冒頭、桜の花が何故美しいのかと問題提起をし、その後、地面の
下に屍体が埋まっているからだと、その答を示します。
 次にその具体例として、薄羽かげろうをあげ、最後にもう一度満開の桜の木
の花へと話が戻っていきます。
 このように短い文章でも、梶井基次郎の作品は他の名作がそうであるように、
実に論理的な構成を持っているのです。

答 (2)

  
===================================
      

 どうでしたか?
 難しかったでしょうか?
 次回、一回目はレベル1の宮沢賢治から始めようと思います。
 小学生でも読める簡単な文章ですが、論理的に読もうとすると少しは今まで
と違った頭の使い方が必要かもしれませんね。

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著者:出口 汪
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