藝道日記。

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白石昇の藝道日記、その他。

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メルマガ名
藝道日記。
発行周期
不定期
最終発行日
2014年01月04日
 
発行部数
234部
メルマガID
0000012912
形式
PC・携帯向け/テキスト形式
カテゴリ
ニュース・情報源 > 一般ニュース > 国際情勢

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メールマガジン最新号

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━前回発行部数 278部━━━┓
┃藝┃道┃日┃記┃                          ┃
┃━┛━┛━┛━┛通巻第0528号 平成26年01月04日 白石昇事務所発行  ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
★公式サイト更新情報

■ 平成 26/01/02更新

お勉強の成果(翻訳メモリOmetaT用の用語集データを同梱)
http://www.geocities.jp/shiraishi_noboru/obenkyo.html

────────────────────────────────────

■新刊リリースいたしましたっ。
 のぼるちゃんのポチ袋。

■エロ本屋仮店舗だより。

■よいこの読書日記(平成十九年度)
05月15日 ナギーブ・マフフーズ短編集-エジプト人文豪の作品より
        ナギーブ・マフフーズ/塙治夫訳 近代文芸社
05月18日 ふてえ奴(上)無我夢中の巻 清水一行 角川文庫
05月19日 タムくんとイープン     ウィスット・ポンニミット 新潮社
06月08日 神様のメモ帳        杉井光 電撃文庫

■思い起こせばもう十五年以上前の日記
 日本の工場労働日記休載のお知らせ

■十年以上前の日記
 妄想自慰日記 平成十三年二月二十七日(火) その一

■連載
         神都    二十七

■今日の五七五

■読者様からのご質問

─[PR]────────────────────────────────

 なんというか、よくあるアジア雑文系ライターのひととは、文章の質のレベル
が違うし、編集力のすごさと、そもそもの行動力のすごさがある感じ。

                      (ブログchamekanの日記より)
                http://d.hatena.ne.jp/chamekan/20140102/p2

────────────────────────────────────

■新刊リリースいたしましたっ。
 のぼるちゃんのポチ袋。



 白石昇ですのぼるちゃんです。お賀正です。←三年前の前回発行と同じ挨拶。


 本当にご無沙汰しております申し訳ありません。


 実に3年ぶりですほぼ。


 もうね、前回配信時にざっくり切った指の傷なんか忘れちゃうくらい久しぶり
の配信でごめんなさい。そうそうおかげさまで指治りました。今ではもうギター
も弾けます。


 その節はみなさまご心配おかけしました。


 さてツイッターやフェイスブック、ミクシイなどをご覧の方はもうご存知だと
思いますが、のぼるちゃん現在北陸におります。


 ええあのここで死んだらあなた泣いてくれますかヒュルリヒュルリララ心細い
旅の女泣かせる演歌の神が棲むと言われる北陸日本海沿岸です。


 さむいですう。


 人生初の雪国越冬日本出稼ぎ(1年8ヶ月ぶり6度目)真っ最中なのです。


 日本の伝統技術をタイ人に伝えようとしているとある組織のためにここで通訳
の仕事をやっておるのですもう11ヶ月以上も。


 あ、どういった仕事の通訳なのか具体的な内容は守秘義務がありまして、聞か
れてもボケるだけですのであらかじめご容赦ください。最低四回はボケられます。


 まあぶっちゃけ越前がにの加工技術をタイに伝えるため毎日蟹工船に乗ってる
わけですけどね(ウソ)。


 というわけで泰日翻訳言語藝人として翻訳速度をあげなければならない事になっ
た(カニ缶のラベル印刷など←ウソ)ので、十年前から導入を検討しつつ迷って
いた翻訳メモリを半年前くらいから使用しておりますのです。


 で、結論から言いますと、使ってみた結果、翻訳速度が2倍以上になりました。


 まあカニ輸出のための書類(ウソ)なんてパターンが似通ってるので原文と訳
文をデータベース化してしまえば自分の記憶力のなさをカバーできてスピード上
がりまくるなんて十年以上前からわかってたことなんですが。


 というわけでそれにもかかわらず半年前まで導入しなかった自分のバカさ加減
に腹を立てておる昨今です。


 今世紀に入った途端に導入してればこれまで訳した千二百ページ以上のタイ語
原文に費やした時間が半分以下になったのに。


 まじで年単位で人生無駄にしてるぞ俺。


 というわけで翻訳メモリお勧めです。使えば使うほど速度上がります。


 そういった土台を踏まえた上で↑上にも書いたとおり公式サイトのほうでわた
くしの泰日辞書データを翻訳メモリの用語集に変換したものを公開いたしました。


 詳しい使い方とかソフトについては同梱のreadmeファイルに書いておきました
のでご参照ください。


 お好きな方以外には何の役にも立たないのぼるちゃんからのささやかなお年玉
です。


 のぼるちゃんは今年もタイ語使いの皆様が幸せになってくださることを祈って
ます。




 で、お好きな方以外にもお年玉です。


 元旦にリリースした新刊です。短く言うと元旦新刊なのです。


 なんだよ告知かよ商売じゃねえかよ、と思う方もいらっしゃるかもしれません。


 すみませんおっしゃるとおりかもしれません。


 そのようなまっとうな商魂イコールよこしまな気持ちが全然ないとはいえませ
ん。


 ですが、今回のリリースは電子書籍なのです。


 無料サンプルをいつでもどこでも無償でみなさまご自分の電書リーダーやタブ
レット、スマホにダウンロードしてお楽しみいただけるのです。


 まあすてきこのメルマガの読者様に金銭的負担をかけることがなく世界中どこ
からでも作品冒頭400詰原稿用紙30枚以上の分量を立ち読み気分でご賞味いただ
けるなんて。


 と心の底からそう思ったのでお知らせさせていただいているしだいであります
押忍。


 つうかぶっちゃけ、前回配信から3年間この作品をずーっと制作してきたので、
是非皆様にご賞味いただきたいのですそれはもう嘘偽りなく。


一応数量化するとこの作品、構想12年取材期間1年制作期間三年強となっておる
わけです。


 というわけで新刊無料サンプルはこちらからどうぞ↓

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ワニポク・パネージョン ― タイ国77県路上ライブツアー ― [Kindle版]

                 白石昇 (著), 永吉克之 (イラスト)

              無料サンプル(内容量2.4/44.0):¥ 0
                     Kindle 購入価格 :¥ 250
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00HM81818/hinkaw-22/

----


 以上2点、のぼるちゃんからのポチ袋でした。


 それでは皆様今年も健康第一で。←三年前の前回発行と同じ〆。


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■エロ本屋仮店舗だより。

 アマゾンマーケットプレイスでも取り扱い中です。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/9749340043/hinkaw-22/
 ミクシィにエロ本コミュがあります。よろしかったらご参加下さい。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=38847

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 エロ本の通信販売、関連情報などはエロ本屋仮店舗↓の方へどうぞ。
http://hp.vector.co.jp/authors/VA028485/erohonyakaritenpo.html

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 藤原新也→沢木耕太郎→白石昇と並べていいのかはわからないが、世界中の夢
の量というのは同じで、昔は少ない数の人が重たい夢を背負って重たい紙の本で
夢を読んでいたのが、今は大勢の人がそれぞれ軽い夢を背負ってタブレットでそ
の夢を読んでいるのかもしれない。そんなふうな気がしてきた。

          (ブログ 極楽通信クロニクル/Next Life/永遠の夏より)
   http://blog.goo.ne.jp/hoozuki/e/06cbef55dea67d5e030075f3502a2936
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■よいこの読書日記(平成十九年度)


05月15日 ナギーブ・マフフーズ短編集-エジプト人文豪の作品より
        ナギーブ・マフフーズ/塙治夫訳 近代文芸社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4773371900/hinkaw-22/

 去年亡くなったんですよね。享年96。コーヒーが好きなおっちゃんだったら
しいです。

 ということはつうかうちのトキばあちゃんのいっこ下かよ。すげえな。比べて
みると人生ってなんかすげえな。

 なんかね日本よりタイでの翻訳が多いみたいなの。十年くらい前にタイの文芸
情報誌で特集やってたからずっと気になってたんだけど、今回初めて読んだの。

 ちなみにタイ語訳持ってます。まだ読んでないしバンコクに置いてきたけど。
一生読めないかもしれないけど。

 読んでみてノーベル賞獲ったこの人が日本よりタイで多く読まれている原因は
あまりわかりませんでした。確かにタイ国民の5%くらいがこの本の中に出てく
る回教徒だと言うことは事実としてありますが、読んでみたら雰囲気的にはあま
り関係ないような気もします。

 あ、でもタイ人でアラビア語読めるひとは日本より間違いなく多いなヘタする
と100倍じゃきかないな。だから親しみやすいのかも。

 でも内容はあんまりアラブアラブしてないのね、エジプト人がアラビア語で書
いたにしては。もしかしたらそれは翻訳者の塙治夫さんが苦労して日本人が入り
込みやすい雰囲気に移し替えてくれたのかもしれません。

 それぞれの短篇は妙に砂漠的なというか、西部劇で枯れ草の固まりが転がって
行くみたいな感じの淋しさが感じられてそれが何かいい感じでした。

 つうかこの人の長編読んでみたくなった。

 ちなみに翻訳者の塙治夫さんも1931年生まれの元外務省キャリア。

 75歳でこの短編集出版かよ。かっこいいなあ。見習いたい。

----

05月18日 ふてえ奴(上)無我夢中の巻 清水一行 角川文庫
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041463688/hinkaw-22/

 ちんこがバタフライらしいです、この主人公。

 子供のときフルチンで川遊びしてガラスの破片かなんかで皮かむりちんこの皮
切ってそれがバタフライ状態に開いているとまあそういうことです。

 で、そのバタフライちんこがどういう効果をもたらすのかというと、勃起した
ときにバタフライがちんこ茎の上でのばされの左右にコブが出来るというわけな
のです。

 そうなのですそのおかげで女にとっては魅惑のちんことなるわけです。すばら
しく女性の皆様に重宝されるちんこなわけです。

 さてそんなバタフライちんこをもつ童貞の主人公が金沢から上京するのが明治
末期、やがて東京でそのちんこの価値が明らかになりますまさに帝都で花開くバ
タフライちんこ。

 でも主人公はそのちんこを利用してうまいことやろうとはしません。まじめに
働いて学校に通います。

 やはりちんこだけではだめなのです。まじめに働いてこそ明治末期から昭和に
かけてのサクセスストーリーは成立するのです。

 ちんこだけじゃだめなんだなあとこの本を読んでわたくしは心からそう思いま
した。

----

05月19日 タムくんとイープン     ウィスット・ポンニミット 新潮社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4105053310/hinkaw-22/

 文章は少ない。少ないけど当然これ以上もなく簡潔な文章。そしてその文章が
本業の漫画をきっちり補完している。

 自分のアニメにピアノで生演奏をつけるこの人のライブを観たり、前作
『everybodyeverything』を読んだときにも思ったのだが、この人のサイレント
漫画は妙に深い味があってすばらしくすごい。

 ピアノもうまいしライブでのアニメ上映とサイレント漫画のスタイルでずっと
やっていけばきっとこの先日本だけじゃなくて世界的に評価されていくんだろう
な。

 サイレントなら翻訳いらないし。

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06月08日 神様のメモ帳        杉井光 電撃文庫
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4840236917/hinkaw-22/

 最初は良かったんです。読み始めはなんかナイス導入っぽかったんですが、途
中でなんかよくわけがわからなくなってしまいました。短く続く会話文と最初の
ナイス導入がなんか乖離しているように感じられるのです。

 それでも新鮮な設定のせいか最後までおもしろく読めました。

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2004年12月26日、スマトラ島沖で起きたマグニチュード9.1という巨大地震によ
る津波によって、インド洋沿岸諸国では22万人を超える死者が発生した。このと
き、プーケットでカメラマンの助手兼通訳を務めていたひとりの日本人が見た、
津波後の現実と悲劇のドキュメント。

                     (ダ・ヴィンチ2009年7月号より)
           http://d.hatena.ne.jp/Tears_of_Andaman/20090609/r1

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■思い起こせばもう十五年以上前の日記

    日本の工場労働日記休載のお知らせ。

 すみません鉛筆書きで消えかけていて下書きノートをバンコクにおいてきてし
まいました。誠に申し訳ありません。再渡泰後に再開いたします。

─[PR]────────────────────────────────

大きな被害に終始がちな報道記者とは違った、等身大の目線で被災地の姿を報告
している。

     バンコク発データ情報誌『ダコ』(262号・2009年4月5日発行)より
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/9749340043/hinkaw-22/
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■平成十三年度 妄想自慰日記

平成十三年二月二十七日(火)

その1。

 起きると洗濯物は乾いていなかった。あたしは仕方なくその生乾きの服をビニー
ル袋に入れて鞄に詰め込む。

 今日は珍しく隊員さん全員が朝からミソカツ市まで行って自治体の宣伝イベン
トをするらしかった。

 今日と、おっちゃんが到着する明日の二日間、宣伝イベントには組織の方から
人が送られてくることになっている。

 ああそうかだからゴロツキはここ何日かあせってたんだな、とあたしは思った。

その2につづく。

─[PR]────────────────────────────────

 そして2004年12月26日にスマトラ沖地震が発生。日本の報道機関に取材の通訳
として雇われて現地へ行き、翌年1月19日までの間に彼が目にした現地の惨状の
様子は、あまりにも悲惨で心が痛い。

                             CHAO150号より
       http://d.hatena.ne.jp/Tears_of_Andaman/20090728/1248765048

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■連載

    神都

         二十七






                △



 シロップを氷の中に入れ、水を加えてゆっくりとそれを飲んだ。身体中に甘さ
がと冷たさが一瞬にしてにして浸み渡った。気が遠くなりそうだった。二杯目の
シロップをグラスに注いだとき、

「その一杯までにしておけ、あまり飲むと、試合中、腹に来るぞ」とガイが言っ
た。

 スタジアムの前にある食堂で、ソンポーンは焼き豚の切り身をご飯に掛けても
らい、食べた。凄く美味かったのは最初の何口かだけで、半分ぐらい食べるとす
ぐに満腹感が押し寄せてきた。胃が縮んでしまっているのだ。ソンポーンはこの
三日間、毎日トマト一個と餅米一握りだけしか摂取しなかった。腹が減るのには
慣れたが、水分をとれないのが辛かった。ゆっくりと時間をかけて噛みしめる一
個のチェリートマトが宝石のように輝いて見えた。頭の上半分が、接着剤で固め
られたように水のことしか考えられなくなっていた。

「この一皿は絶対に食え。食わないと絶対に動けないぞ」

 豚肉と米をスプーンで持て余しているソンポーンを見てガイが言った。

「もうこの体重では試合できないよ」

 ソンポーンはぼそりと言った。言っても仕方がないことだったが、言わずには
おれなかった。ソンポーンの身体は一〇五ポンドまで落とすにはもう、筋肉が付
きすぎていた。ランキングに関係する試合になればなるほど、計量はシビアになっ
てくる。この試合をクリアすれば、タイトルマッチが出来るかもしれないという
話だった。オーナーはたまにジムに現れ、ことあるごとにソンポーンやガイにそ
のことをほのめかした。だから、上の階級で試合させる気は毛頭ないようだった。

 ソンポーンは赤い液体を少しだけすすり、皿に残った豚肉と残りの米を口の中
に入れ、まだすべて嚥下することができないまま、春雨の炒め物をかけたご飯を
一皿追加した。減量中時折、夢に出てきた料理だった。まだ水分を制限せず食事
だけ制限していた頃、ソンポーンは街の定食屋でその料理を見るたびに奥歯をか
みしめ、口の中で舌を泳がせた。ひと口食べると一瞬、味がわからなかったが、
そのうちに油と玉子の味が口の中一杯に広がった。そのひと口だけで満足したが、
全部食べなければならなかった。身体の状態ががはっきりとわかるほど、内臓を
をはじめとしてソンポーンの身体全体が鋭敏になっていた。食わなければ夜、リ
ングで半時間、動き続けることは出来ない。

「じゃあ、先に戻っているから、食べたら戻って来いよ、戻って寝て、それから
また何か食べよう。食べたいものを考えとけ」

 ガイはそう言ってタクシー代をソンポーンに渡し、立ち上がった。ソンポーン
は頷き、春雨とご飯をスプーンで掬い取って口に入れる。胸がつかえ、胃が張っ
ていたが、何とか嚥下することが出来た。胃はゆっくりと再び確実に膨らみ、元
の大きさを取り戻しつつあった。


               △ △


 トモノリは入ってくるなり、

「勝ったよ、ソンポーン」

 と言って白い封筒をソンチーに渡した。ソンチーは熱で火照った頭で笑顔だけ
作って見せ封筒を開く。手紙には、久しぶりに朝ご飯が食べられて嬉しかったと
言うことと、これから試合で、相手は強いけど、勝てばタイトルマッチが出来る
かもしれないから勝つ、ということが書いてあった。トモノリは新聞を開いて、
ソンポーンが相手を蹴っている写真のところを開いて見せてくれた。ソンチーは
ゆっくりと時間をかけて手紙を読み終えると、

「怪我は大丈夫なの?」

 とトモノリに聞く。

 トモノリは少し間をおいて、

「しばらくは寝てたけどもう大丈夫、もうすぐまた練習を始めるよ」

 と言った。ソンチーはその言葉に頷くと、もう一度雑誌に視線を落とす。左足
で相手を蹴っているソンポーンの顔は、眼に力があり、顔の輪郭が鋭くて、三年
以上前に列車の中で見たときと同じ人間じゃないように思えた。それに何より、
小さくちぎった粘土を貼りつけたように、ソンポーンの手足や胴には鋭い筋肉が
巻きついていた。ソンチーはその写真があまりにも自分が想像していたソンポー
ンの身体とは違うことに苦笑した。ソンチーの頭の中にあったソンポーンの身体
は、トモノリの身体そのもので、今自分が見ている写真みたいに鋭利ではなく、
なだらかな柔らかさを持ったものだった。ソンチーは今のこの身体のソンポーン
に抱かれることを想像してみた。それは、自分がこんな病気になった今となって
は不可能なことだったが、考えれば考えるほどその時自分にどういった感覚や感
情になるのかは、さっぱり予測がつかなかった。

 トモノリがふとためらいがちに、

「検査してきたけど、僕の方は大丈夫だった」

 と言った。トモノリはどういう表情をして言っていいのか迷っているように感
じられた。それを聞いて一瞬何のことかわからなかったが、即座にソンチーは、

「よかった」

 と溜息とともに言葉を発した。熱のことを忘れるくらい嬉しかった。この病気
に罹ってから時折心配だったのは、自分が他の人に感染させていないかというこ
とだった。実際にもう自分を買ったお客さんに会うことはないだろうから確認す
ることは出来ないが、そういう事実がないことをソンチーはいつも祈っていた。
「あのひと、週末に来ていたあなたの友たちにも、感染してないといいんだけど」

 ソンチーはトモノリを最初に連れてきた、日曜日に必ず自分を抱きに来ていた
無口な男を思い出しながらそう言った。

 ソンチーがここに来て考えることはすべて想い出だった。暇さえあればソンチー
は産まれてからお父さんと山に行き始めた頃からここに来るまでの、自分が過ご
してきた時間を何度も頭の中でなぞった。外が晴れていて、まだ発病していない
患者さんが窓の外に見えるときなら、楽しかったことばかりを思い出せたが、少
し曇りがちで誰も窓の外にいる気配がないときは、お父さんの下で身体を開いて
いる山岳民族の女の姿や、買ってきた宝くじを家で並べて新聞に血走った目を走
らせるお父さんや、バルコニーに立つ四番の事など、あまり楽しくないことばか
りを思い出した。

 ソンチーはたまの天気が悪い日はあまり昔のことを考えないようにしていた。

「わかったよ。検査するように言っておくよ」

 トモノリはそう言った。

「あの男の人に言った方がいいのかしらねえ、私のこと」

 と呟くようにソンチーは言い、おそらくそれを言うことによって混乱する事に
なるあの男の姿を思い浮かべた。トモノリも同じ事を考えているらしく、二人の
間にしばらく会話がなくなった。

 その状態が居心地悪く感じられてソンチーは便箋を広げ、ペンを走らせはじめ
た。いつものように、極力自分のことは書かないようにした。トモノリが雑誌を
持ってきてくれたお陰で、それを材料にすればいくらでも書くことはあった。形
通りに、チャンピオンになれるよう、頑張って下さい、と書きながらソンチーは、
まるで暗示にかかったように、自分が本心からソンポーンにチャンピオンになっ
て欲しいと思っていることに気づいた。


              △ △ △


 本当の事を話したらヤスさんはおそらく検査になんか行かないだろうと思った
のでトモノリは、

「一緒に検査しときましょう」

 と言ってヤスさんを病院に誘った。結果は陰性だった。

「ほら見てみ、俺がエイズのはずないやん」

 ヤスさんはそう言い、トモノリは、

「そうすね」

 と答えたが、ヤスさんの言葉には何の根拠もなかった。人間に他人と繋がりた
いという感情がある限り、誰もがソンチーのように感染する可能性を持った病気
なのだ。普段接するジムのボクサーやトレーナー、アパートの管理人のオヤジが、
酔ってよく、

「俺だけは感染しないんだ」

 という言葉を口にしたが、その言葉には何の説得力も根拠もなかった。自分の
周りに感染者が出てみないと誰もが事の重大さに気がつかない。生きる意志を持っ
た人間は自分が死ぬ事なんて考えていないのだ。

「目先の事しか考えられへんからなあ、あいつらは」

 ヤスさんはこの国の人間をひと括りにしてよくそう言った。ヤスさんも三年の
月日でそういう考え方をするように変わってしまったようにトモノリには思えた。
三年前、工場で働いていたときのヤスさんは、工程の流れを把握して、その日一
日の仕事を安全に生産数を落とすことなく完了させられるように、与えられた作
業のすべてに気を配っていた。そのヤスさんはもう今、毎日の生産数だけを重要
視する管理者になってしまっていた。それはしようがないことだ、とトモノリは
思う。どこの国の人間だろうが関係なかった。誰もが目先の、自分が得になる刹
那の数字しか見ていなかった。そしてそれを悪いことだと判断する権利はトモノ
リにはなかった。

 それは、しばらくの間はトモノリに生活に必要な金の心配がないからそう思う
だけなのかもしれない。電話営業のバイトをしていたときは自分だって日々の契
約数を気にしていたし、ナーマが近づいてきたら迷うことなくやった。自分はた
だその場の自分に正直なだけだった。誰だって同じだ、とトモノリは思う。

 ただ、ソンポーンやソンチーを見ていると、トモノリは自分がこれからどうに
かしてやってゆかなければならないのだろうと思った。だが、どうしてゆけばい
いかはいくら考えても結論が出なかった。



(つづく)
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■今日の五七五。

超痛い あられが顔面 向かい風

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■読者様からのご質問

 質問はありませんでした。
---- ---- ---- ----
白石昇に質問がある方は、件名を、しツモん、としたメールを新しいメールアド
レス、hinkawあっとまーくchan.ne.jp(全部半角英子文字、あっ
とまーく、は@)まで送って下さい。回答はこのメールマガジン上で執り行いた
いと思います。よろしくお願いいたします。

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