ほぼ日刊日々是映画

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メルマガ名
ほぼ日刊日々是映画
発行周期
日刊
最終発行日
2016年05月25日
 
発行部数
883部
メルマガID
0000032940
形式
PC・携帯向け/テキスト形式
カテゴリ
エンターテイメント > 映画 > レビュー・映画評

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=================================================2016/5/25=
                         -vol.2965-
  ほぼ日刊 日々是映画         発行:cinema-today
                http://www.cinema-today.net/
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2965号です。

お、半年ぶりですか。
私は元気にやっております。
映画を見たら書く!を改めて自分に課さねばならないと肝に銘じる
今日このごろです。

今日は『あん』です。


■ 今日の映画 - あん


<1行コメント>
桜や木々が印象に残り、日常の美しさと生きることについて考えた


--cinema2773------------

 あん

 2015年,日本=フランス=ドイツ,113分

-----------------------

<キャスト&クルー>

監督 河瀨直美
原作 ドリアン助川
脚本 河瀨直美
撮影 穐山茂樹
音楽 

キャスト 樹木希林
     永瀬正敏
     内田伽羅
     市原悦子
     水野美紀
     浅田美代子


<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<レビュー>

街角で小さなどら焼き屋をやっている「千太郎のところに一人の
老婆が訪ねてきて、「働かせてくれないか」と言ってくる。
確かにバイトは募集していたが、年寄りには無理だと考えた
せんちゃんはその申し出を断る。しかし、その老婆・徳江は、
この店は餡がいまいちだからと、自分が作った餡を店主に食べて
もらおうと持ってくる。その餡を食べた千太郎は美味しさに
驚き、働いてもらうことにし、お店も繁盛するのだが…

すごくキレイな映画だ。河瀨直美監督といえば映像がキレイな
イメージがあるが、この映画は映像というよりも映っているもの
すべてがキレイという印象を受ける。

序盤から美しい桜が映り、美しく整ったどら焼きを清潔な女子
中学生が食べる。店主の「せんちゃん」は美しいというわけでは
ないが、清潔で汚さは見えない。店もこじんまりとしているけれど
キレイに整理されていてすっきりとしている。

そのせいもあってかどこか夢の様な印象も受ける。その印象を
見終わった後に振り返ってみると、この映画がフランス、ドイツ
との合作であるということもその一つの要因なのかもしれないと
思ったりもした。これは推測にすぎないけれど、この作品の編集や
ポストプロダクションはおそらくヨーロッパで行ったのだろう。
撮影は日本だけれど、作品が形作られたのはヨーロッパだ。作品の
雰囲気をつくり上げるのはそこに映っているものだけではない。
編集をする人が感じている空気もどこかで作品に影響をあたえる
のではないかと思う。

もちろんヨーロッパだから「キレイ」ということはないのだけれど、
アジア映画のごちゃごちゃした雰囲気とは違うキレイさがこの
映画には有るように感じられたのだ。

そして、この雰囲気というのは映画にとってじつは非常に重要だ。
作品のテーマの一つとなっているハンセン病は、らい病と呼ばれた
時代、伝染病と間違われて患者たちは隔離されたと言われている。
しかし、隔離の原因の一つはその患者の見た目が「醜い」もので
あったことだとも言われる。溶け落ちたり、歪んだり、崩れたり
する人間の肉体、それは見る人に恐怖を感じさせる。それが患者を
隔離する一つの要因となったのだ。

しかし、この映画に登場するハンセン病の元患者たちは、樹木希林や
市原悦子はもちろん、一瞬登場する実際の元患者の方たちに恐怖を
感じることはないし、その醜さも決して嫌なものには感じられない。
そこにこそこの映画のすべてがキレイなほんとうの意味があるのでは
ないかと思う。

ハンセン病の元患者も私たちと変わらないと言葉で言うのは簡単だが、
それに説得力をもたせるのは非常に難しい。理性で考えたことを
感情が塗り替え、思わず拒否反応を示してしまうということは、
ハンセン病にかぎらず私たちにはあるものだ。しかしこの映画は
彼らの姿を段階的に、私たちと同じ「キレイな世界」の住人として
描くことでそこに説得力を持たせる。見た目ではなく、心を通わせた
上で、彼らについて語ることで、その見た目に対する恐怖が起こる
のを防ぐ。

別に社会的なメッセージを発しようと思って作られた映画ではないと
思うが、社会から疎外された人たちがいて、その人達も社会の側が
もっと暖かく受け入れるべきだという主張がじんわりと染みこんで
いくような作品で、じんわりと暖かい。

美しくて暖かい、そこから感じるのは「どら焼き食べたい」という
ことだけということもあるかもしれないけれど、それこそが特別
ではない日常について考えさせ、生きるということについても
考えが及ぶかもしれないなどとも思った。




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                     日々是映画第2965号
                      2016年5月25日発行
                     発行:cinema-today
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