詩人・小山正孝の伝言

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丸山薫賞の詩人、小山正孝の詩のメッセージをお届けします。

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メルマガ名
詩人・小山正孝の伝言
発行周期
週刊
最終発行日
2013年05月05日
 
発行部数
39部
メルマガID
0000097097
形式
PC・携帯向け/テキスト形式
カテゴリ
アート・文芸 > 文芸 > 詩

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詩人・小山正孝の伝言     NO.246 2013.5.5
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 感泣亭の2013年度の予定

 感泣亭例会   11月10日(日) 

 感泣亭亭別会  7月20日(土)

 感泣亭句会   6月19日(水)、9月18日、12月18日

 感泣亭秋報8の発行  11月10日

 以上の件についての詳しい内容については、

 oyamamasami@gmail.com までご連絡下さい。

  

  目撃者

透明な冬の日の午後の空気の中を
悲しみを乗せて走る自動車
目の前を先導の霊柩車が白木の彫刻をゆらせながら道を切り開いて行つた
左側に石垣の崩れかけた所があつて
石垣の上の傾斜地は温室の跡なのであらう
棟木と屋根の木には白いペンキがはげてついてゐて
割れたガラスがところどころに殘つてゐた
かこまれた中では 八重葎が枯れきつて茶色にばうばうと風にゆれてゐた
道はそこから急に下りはじめ
大きいすり鉢のやうな地形になつてゐて
自動車はぐるぐる同じやうな道を廻りはじめた
コンクリートの太い煙突が足もとに見えた
つらなつた自動車は 木木のあひだを 石垣の前の道を
たがひに見えかくれしながら
煙突を中心にして螺旋状にどんどん下りて行つた
霊柩車と我等の自動車は追ひかけつこをしながら下りて行つた

開けられた黒い扉に放りこまれようとしてる枢の前で
つめたい風は 白く 急につむじ風になつた
時間がすぎて ひき出された あたたかい鐡板の上の
純白の骨が人の形をして並んでゐた
丸い頭蓋の下に歯がくひしばるやうについてゐた
一本一本抜き取りそれぞれの骨を眞中でくだき
頭蓋を割りながら 係りの人は言つた
この人は 苦しみもなく なくなつてゐます
頭蓋の内側がきれいなのでわかるのです
毒をのんだ人のは内側が黒くなつてゐるものです
生きてゐ時 病院では 係りの人に お大事にと言はれたものだ
最後に お氣の毒でしたと言はれたが
ここの係りの人はあとは何も言はないでおじぎをした

道をもどりながら 自動車の中で
かはるがはる 輕い白い布に包まれたものを胸に抱いた
先導の車もなく木立ちをくぐり 橋を渡り
急流の白い泡立ちに目をやりながら
靜寂の中を いろいろなこと感じながら歸つて行くのであつた
すり鉢の底から這ひあがつた我等の自動車は
いまや速力を増して行くのであつた

おどろいたことに 温室のところに來ると
そこは春の朝日にかがやいてゐた
廢墟は見事に昔をとりもどしてゐた
すべてのガラスがつややかにみがかれてゐるのであつた
白いペンキでふちどられた温室の中には
あたたかい湯氣がこもつてゐるのであらう
大つぶの水滴が線條をつけてゆつくりとたれて行つた
水滴はかたまつてキラキラと光つてゐた
ゴムの葉 長い芭蕉の葉
高い天井のガラスを何の葉か 大きい葉がはね上げさうについてゐた
緑の菫と葉の茂つてゐるあひだには
赤や黄色の花が ぽつぽつ 強烈に高く首をのばしてゐた
自動車はすぐ近くを走りすぎた
一人の少女が 花の手入れをしてゐるのが
ちらつと 見えた

下り坂になつた廣いアスフアルトの道は
もう曲つてゐない 一直線に下つて行く
兩側から迫る山が重なりあつて正面に眞黒に立ちふさがつてゐた
山の上の空は赤い それは
葡萄色にうち沈み また 燃えさかる炎のやうにゆれた
無言の我等 うす暗い自動車の中で
うちくだかれた頭蓋 かの人の
温室の中の横顔
自らの眼を疑ふものはゐなかつた

          詩集「山の奥」より


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