アートシンクタンク通信

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「アートで社会を変える」というキャッチフレーズのもと、アート界の成熟と芸術文化の社会普及をめざしている<NPOアートシンクタンク>のメルマガです。まずはアートの鍵で魅力的な扉を開けてみましょう。建築の若手研究者・木下知威(ともたけ)さんの寄稿も好評連載中!

   

メールマガジン最新号

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 ■NEWS!   2012.12.27版  http://art-thinktank.com
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

 ★次号は当面予定されておりません★
 
 ★足掛け8年に亘る本メールマガジンも、今号でとりあえずの最終号という
 ことになりました。ご購読下さり、ありがとうございました。

 元々はNPOにっぽんmuseumの広報活動を進めるため発刊したもので、五十嵐
 太郎さん、暮沢剛巳さん、木下知威さんの連載、あるいはその間にご登場下
 さいました方々のお原稿をいわば看板にしながら続けてきましたが、一旦お
 休みをいただくことをお許し下さい。もし再開するときも、これまでとは異
 なる形でゼロからの広報になると思います。

 女「そうやって私のこともすぐ忘れちゃうんだ」
 男「忘れたら……」
 女「忘れたら?」
 男「忘れたら……、もう一度出会えるさ」

 元々発行者がメールマガジンのお届け先を把握できない仕組みになっており
 ますので、個人情報についてはご安心下さい。またメルマガ配信を解除する
 方法も、本メール末尾からご案内しております。

 本メルマガを支えて下さった皆様に、あらためて御礼申し上げます。
 Crazy for you.

 編集長 天内大樹

 ▼
 この度の大震災に際し、被害のあった皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 一日も早い被災地の復興をお祈り申し上げます。

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 ■LesClefsd'Art=アートの鍵 「ホログラフィー・アーキテクチャー」
            「テレビ・ゲームと空間」    木下知威
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
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 ★☆メルマガ編集長
 ☆★天内からのコメント

 建築計画・設計の木下知威(きのしたともたけ)さんの連載です。ゲームを
 とりまく知覚、身体についてのお話を続けています。

 私としてはきわめて安易な落書きなのですが、大学講義で毎学期やってみせ
 るとそれなりに反応があるように見えるので、繰り返しているものがありま
 す。キュビスムが何かを体感させる落書きなのですが、ピカソや同時代の芸
 術家に言わせると、我々人間は一つの立体的な対象を、ある一焦点からじっ
 と見ているだけで把握できるわけではないという認識が前提になっていま
 す。眼球は元々ぴくぴく動いているし、多くのひとは両眼でみている上に、
 大抵の人はふらふら頭を動かしたり歩いたりすることで、立体をできるだけ
 多面的に見ようとしています。カントが述べた「空間」という「カテゴ
 リー」がどのように成り立っているかという問題に当時の人々が総出で取り
 組んだとも言えるでしょう。そこで多視点から見た(ことを記憶で再生し統
 合できる)ことで、やっと人間が把握できる立体的な対象の像を、一目で認
 識できるよう二次元の平面に展開するのが、キュビストにとっての眼目だと
 いうのです。そこで私がやる落書きとはとても単純で、ひとの横顔の輪郭を
 描き、続いて横から見た眼や耳を描くことなく、正面から見た人の眼や眉や
 耳を描いてしまう、あるいは先に正面から見た顔の絵を描き、横から見た鼻
 や耳を付け加えてしまうことになるのです。

 今週の参考資料はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/M_perrier/20121227
 これまでの連載はこちら→ http://d.hatena.ne.jp/ATTT/
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 2012年も終わりですね。そして、ホログラフィー・アーキテクチャーもつい
 に最終回を迎えることとなりました。前回はテレビゲームにおける色のパ
 ターンについて、1から5まで、具体例をもとにみていきました。このよう
 な色のパターンの最後は、「6:ポリゴンによる立体性の強調(2000年以
 降)」です。

 ★「多角形」表現の及ぶ範囲

 ポリゴンというのは、多角形の組み合わせをコンピュータグラフィックスに
 よって表現するという現在もっとも主流の技術です。背景、キャラクター、
 ステージの形態を容易に設定する「エンジン」というソフトウェアを活用し
 つつ、テレビゲームが製作されていることがほとんどです。

 テレビゲームにおいて、ポリゴンの技術がよく認識された機会というと、
 「バーチャファイター」(1993)が思い出されます。これは、一対一の格闘
 技ゲームの「ストリートファイター」シリーズによく類似したものです。

 キャラクターをみると、ポリゴンはまだ荒く、角張っていて、色も一色で陰
 影があり、目、眉、口といった小さな部分はポリゴンにシールをはりつけた
 かのようなドットの表現になっていることがわかります。このようにして出
 てきたポリゴンは、やがて少しずつ丸みを帯び、写実的になっていきます。
 要するに、本物のようになるということです。

 これはおもしろいことに、近代美術史を逆行するかのような現象です。1830
 年代には、クールベやドーミエのように、写実的な絵画を押し進めていく時
 代があるのですが、20世紀初頭にキュビズムが生まれ、身体を荒く幾何学的
 に表現していく流れがあります。キュビズムのように、多角形のような人間
 ──ジョルジョ・デ・キリコとパブロ・ピカソというと言い過ぎかもしれま
 せんが、彼らの絵画に特徴的なモチーフとして幾何学的な身体表現がありま
 す。

 ポリゴン技術のように、身体がリアルに近づくことは、美術史において、
 キュビスムから写実派という逆流現象のようです。

 テレビゲームにおける色の6パターンをみていくと、40年間にわたって、
 テレビゲームの空間が非常に短い速度で変容しています。

 ★多面的な「ホログラフィー」

 さて、本連載「ホログラフィー・アーキテクチャー」は、4年間にわたって
 続けられました。それを振り返って、終幕にしましょう。

 1、身体をめぐる自由と不自由

 この連載は2008年11月からはじまりました。まず、野口英世、水木しげる、
 山中伸弥さんのiPS細胞からみた身体不自由をめぐる話とスーパースタジオ
 の建築構想を語ることからはじめました。バーナード・ルドルフスキーのよ
 うに、建築家のいない建築もあり、J・J・ギブソンがいうように動物が建築
 をすることもありました。

 ただ、まずわたしは人が建築をする前に、身体がいかにおぼろげな存在であ
 るかを述べようとしました。そして、人のように、建築も外見や内部、使わ
 れ方において変化することがあることを、京都国立博物館が開館したときと
 現在の様子を比較しましたし、Amazonやグーグルの施設をひいたこともあり
 ました。

 2、躯体と設備

 建築理論においては「サポート/インフィル」という、ニコラス・ジョン・
 ハブラーケンによる理論が注目された時代がありました。彼の本は『サポー
 ト──マスハウジングに代わるもの』(1962年 未訳)でした。

 サポートはある住宅・集合住宅で使われる共通の構造(躯体、住民同士のコ
 ミュニティや共同空間)、インフィルは設備(間取りや水周りなど)をさし
 ますが、世界初の家庭用テレビゲーム「オデュッセイ」と照応させて語りま
 した。これは本体とカセットに分かれている点でサポート/インフィルの概
 念と共通します。

 ここでは、建築やテレビゲームは人や技術とともに、求められる機能を常に
 変えるために、変えることができる/できない部分、余地をデザインしなけ
 ればならなかったことを指摘しました。

 3、建築とテレビゲームにおける「シリーズ」

 テレビゲームにおける「シリーズ」にも着目しました。人気のあるゲームや
 映画には少なからず続編が製作されますが、建築もまた、一度落第した案が
 ほかのコンペで当選するということがあります。つまり、一度考えられた建
 築のアイディアが敷地や法的制約といった条件に整合するよう、その姿を作
 り直されることでした。

 それはテレビゲームにおいても家庭用テレビゲーム機の性能によって、その
 シリーズを作り直すことに類似していることを述べましたが、ややこじつけ
 だったかもしれません。

 4、建築と政治

 近代日本を代表する建築家・岸田日出刀と政治家・石井桂を取り上げ、建築
 家が政治をすること、政治家が建築をすることの例として広島平和記念公園
 と東京タワーにおける設計背景をみながら、論じたこともあります。近代日
 本建築史において岸田は外せない存在ですが、石井はどちらかというと月の
 ような、隠れた存在のように思います。今後、建築家・石井桂の業績と思想
 が解明されるとよいなと思います。

 5、素材のイメージについて

 2010年に復元された三菱一号館をとりあげ、煉瓦がもつイメージをテレビ
 ゲームのそれを比較したこともありました。建築では地震に耐えられるよう
 な構造をしなければなりませんが、テレビゲームにおけるそれは真っ先に壊
 される対象であり、煉瓦が果たしている役割が真逆であることを考えたこと
 もありました。

 6、スペースインベーダー論

 日本においてテレビゲームが流行したきっかけとなる「スペースインベー
 ダー」におけるエイリアンの表現と火星人について、宇宙人のイメージの歴
 史、SF小説の古典オーソン・ウェルズ『宇宙戦争』をひもときました。

 これに平行して、開発者の西角友宏さんの発言をもとに細かく分析したこと
 もありました。これは2010年7月から2011年6月のほぼ1年間にわたるもの
 で、この連載においてもっとも長いシリーズだったのではないかと思いま
 す。

 7、対談・旅行談

 天内大樹さんとパックマン展を訪問したときの会話をしたり、わたしが台
 北、京都、四国を旅したときの建築やテレビゲームについても書いたことが
 ありました。

 8、『リヴァイアサン』におけるイメージ

 2012年4月からはホッブズ『リヴァイアサン』における感覚の問題と建築、
 テレビゲームにおけるイメージの話を書きました。1651年に刊行された本で
 ありながら、その内容はテレビゲームをプレイするわたしたちのイメージの
 働きと深く結びついているように思います。

 9、その他

 雑多なものとして、鏡をめぐるモチーフとして松田聖子の歌と篠原一男の建
 築を見比べたことや戦車ゲームとシミュレーターの歴史、サーカスとジョル
 ジュ・スーラ、ギブソンの視覚論とカーレースゲームやドライブシミュレー
 ター、ブルジュ・ドバイと「ファイナルファンタジー4」におけるバブイル
 の塔や「ドルアーガの塔」なども取り上げましたし、最後としてテレビゲー
 ムにおける色パターンの変化についても整理しましたし、時事的なトピック
 として展覧会の情報も盛り込みました。

 思えば、テレビゲームについては1980年代を中心にしたままで終わってし
 まったことや取り上げたい建築が多く残ってしまっていることが心残りです
 が、しかし逆にいえば、テレビゲームの空間は途方もない広がりをすでに獲
 得していることではないかと思います。

 最後になりますが、本連載において、NPOにっぽんmuseumの皆様と編集長の
 天内大樹さんには深く感謝しています。隔週ごとに、天内さんに原稿を送る
 ことが無くなるかとおもうと寂寥感があります……さようなら、またどこか
 で。

 (了)

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 ☆★メルマガ編集長・天内の
 ★☆「美学研究室」
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 先日、久しぶりに大学・大学院時代の出身研究室の飲み会に顔を出してみた
 のですが、僕の先生と同じかそれ以上の年齢のOB(つまり別の大学の先生)
 がいらしたり、お会いできませんでしたが新著として『ももクロの美学』が
 予定されている先生がいらしたり(期待です)、相変わらず楽しいです。
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