なごみLABOの野良芸術ニュースレター

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仁城亮彦(なごみLABO)の発行するニュースレターです。岡山県井原市青野町にある「なごみ農園」の野良仕事や作物について、また、農村の文化的な資源を編集する「なごみLABO」の活動などをお知らせします。芸術やデザインに関する考察なども試みます。

   

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なごみLABOの野良芸術ニュースレター 第5号 20120408


□□□ 目次 □□□□□□□□□□□□

■言葉の根っこ
 「なごみカルチャー」誕生!


■1ヶ月のいろいろ
 お休みします。


■編集後記
 メルマガ発行直前の気分。
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■言葉の根っこ


「なごみカルチャー」誕生!


(1)朋有り、遠方より来る

大阪に農業とデザインの関係を模索している山中史郎がいる。大学時代からの旧友である。彼はハイカルチャーという名前で世の中にデザインを提示していて、2011年度グッドデザイン賞を受賞した。

■グッドデザインファインダー 茶畑 [タツミ茶園 梅月]
http://www.g-mark.org/award/detail.php?id=38146&sheet=outline

「茶畑のオーナーになることは、私たち日本の四季に富んだ風景のオーナーになるということです。」

農業のブランディングデザインを通してそのようなメッセージを発信する彼と、ぶどう栽培から始めるワイナリー作りをすることになった。

なごみLABO×ハイカルチャー=なごみカルチャー
青野ワイナリープロジェクト始動!だ。

ぼくらはお互い異なる言葉遣いでこのプロジェクトへの思いを語る。

なごみLABOは、これまで青野に住む個人的、家族的な意義を、地域の文化的、精神的な資源の編集によって見出そうとしてきた。今回のプロジェクトでは「なぜ青野はふるさとなのか」と問い、地域にもう一歩踏み出す。

ハイカルチャーはこれまで消費者と生産者をつなぐ第三者的なデザイナーだった。生活は消費者、仕事は生産者寄りという立場から、生活を生産者寄りに、仕事を生産者自身へとスライドし、より地域へ踏み込んだ上で地域ブランディングの実践へ向う。彼の言葉を借りるなら「土にまみれる永続的なデザイン」プロジェクトというわけだ。

ぼくらは、そういったお互いのコンセプトをつき合わせながら、土に汗し、地域農業で飯を食っていこうと、意気投合した。

ぼくたちは地域に向けて次のようなことを宣言する。

1.青野でぶどう作りから始めて青野のワインを作ります。
2.パンやチーズも青野で作ります。
3.それらを提供する小さなレストランを作ります。
4.安心してワインを楽しめるように宿泊施設も作ります。
5.ワインを中心としたイベントを企画します。
6.多様な農業の姿、地域の表現を内外に発信します。
7.地域農業で日本の未来を示唆します。
8.ぶどうの里青野のブランド価値を高めます。

ぶどうの里青野というときのエリアはいわゆる青野地区(青野町、稗原町、北山町)のことをいう。なごみカルチャーは青野町の仁井山地区に活動拠点を置く。一般に「地域」と呼びうるもっとも小さな、かつもっとも身近な場所だ。そこを選択するのは、なごみLABOの経験を踏まえれば必然である。

最終的には、住居、ぶどう畑、ワイナリー、レストラン、宿泊施設、それらすべてを仁井山地区内に作りたい。どこにでも歩いて回れる範囲内に、すなわち誰に来てもらっても風景の一部になって歩いて楽しめるようにしたい。ささやかに、地域を再定義したい。

単に生産者ではなく、単に消費者でもないという、立場の選択はいかにして実現するのか?

地域を作っていきつつ、時に地域から地域への移動を試みる、楽しむ。それらを生き方として自覚するには?

ふるさとに生きるには?

ともあれ、現在なごみカルチャーは準備期間だ。仁井山地区民(もちろん「なごみ農園」以外)からぶどう畑を提供してもらい、ひとまずぶどうの木や畑の手入れを始めた。今年の秋にはワイン用のぶどうが収穫できるだろう。中には収穫まで数年かかる畑もある。

でもワイナリーはない。だから、当面はワインではなくワイン用ぶどうを提供する他ない。あるいは、ワイン用ぶどうをジュースやジャムなどにする。なんと贅沢な!これらを活かし、ワイナリーの資金を得たいと思っている。

※オリジナルなオーナー制度を設計中である。詳細はまたいずれ。

ぼくらはオーナーに、ぶどうの里青野が「もう一つのふるさと」と思ってらえるための努力を惜しまない。このメルマガ読者の皆さんもどうか「青野ワイン」のオーナーになって楽しんでほしい。どうぞよろしくお願いします。


(2)「青年就農給付金『経営開始型』」

なごみカルチャーは、本格的に地域で農業を始めるにあたって、今年度始まったばかりの国の新しい就農支援制度「青年就農給付金『経営開始型』」を活用しようとしている。経営が安定するまでの生活費として一人につき年間150万円が最長5年間支給されるというものだ。

これを得るためには地域の既存農業組織(行政・JA・地域の農家)に向けて主張を展開し、地域農業の中心となる経営体として認めてもらわねばならない。

ぼくらの目指すのはオルタナティブな地域農業であり、その思いは、日本の農業再生を目指して作られた国の新制度の思想と一致する。日本の農業が死んでいるという認識に立つからこその日本の農業再生。国がリーダーシップをとって日本の農政のあり方を抜本的に反省する試みというわけだ。

ぼくらはその制度を活用しようとするので、否応なく、地域で農業改革の最前線に立たされる、が、実にエキサイティングな経験だ。地域という現場で、トップダウンとボトムアップが同時に進行しているのだから。

既存の農業組織は「我等こそが地域である」と思い込んでいる。だから「我等に受け入れられねばここで農業はできない」と素人のぼくらに迫ってくるのだ。確かにこれまでの就農支援制度はそのことが前提だった。行政がJAに就農支援の実施を丸投げしてきたからだ。

「JAも地域農業の一形態に過ぎない」という考え方を地域で実践する人は過去にもいただろう。しかし、既得権や潤沢な資金を持っている、社会的にすでにある程度高い地位にある人たちに限られていたはずだ。

国の新しい就農支援制度は、ぼくらのようなお金もない素人にまで地域農業への間口を広げるという、制度としては実に画期的なもの。その制度が地域に向けて画期的に作用するかどうかは、ぼくらの強い動機と、そして地域住民のこれらに対する理解にかかっている。プロジェクトの初動としてしっかり活かしたい。

この制度の本質は「人・農地プラン(地域農業マスタープラン)」にある。これは市区町村が作成しなければならないが、地域の「検討会」がそのプランにオーケーを出さなければならない仕組みになっている。

「検討会」のメンバーは、地域農業再生協議会のメンバーであるJA、農業委員会、土地改良区等関係機関のほか、必ず大規模個別経営、法人経営者、集落営農の代表者等(※1)のほか、メンバーの概ね3割は、女性農業者等の他、関係機関からも役職を問わず女性等(※2)で構成される。

(※1)の「等」は、それ以降の「メンバーの概ね3割」に対する含みであり、(※2)の「等」は、例えば経営者の妻、同居の高齢者、あるいは息子や娘等に対する含みではないかと思われる。まさに、既存の農業組織に偏らない、地域挙げての「検討会」のイメージが描かれているのだ。

プランの中身は、大きく4つで構成される。(1)これから5年後に経営が拡大することを具体的にイメージできる地域農業者(今後地域の中心となる経営体)のリスト、(2)それ以外の農業者のリスト、(3)中心となる経営体に地域内で提供される農地のリスト、(4)地域の農地集積マップ、で構成される。

今後地域の中心となる経営体のリストに、なごみカルチャーもリストアップされねばならない。厳密にはリストアップが確実であると判断されるのでもいい。あえていうなら、ひとまずは、そこにリストアップされる「だけ」でいいのだ。

これまでの就農支援というのは、すなわちJAの指導のもと市場に向けて規格化された農産物の生産を請け負うことができるようにすることだった。それに従うもののみが就農支援を受けられた。

しかしこの制度にはどのような農業をするのかというのは、まったく関係がない。この点も含めて、国は従来の農業政策を根底から問い直していることが伺われる。

確かに活動を地域住民に認められなければならないというのは簡単なことではないかもしれない。ただ、なごみLABOとしては、むしろそこにこそ向かってきた。渡りに船とはこのことだ。

今、井原市農林課職員、JA職員、JAぶどう部会の幹部農家、岡山県農林水産部農産課担い手育成班職員、すなわち長年「従来の農業政策」を担ってきた方たちが、現在この制度のなごみカルチャーへの適用をめぐって、話し合いの初期段階にある。

案の定、現時点では適用除外の空気が流れている。もちろん、想定の範囲内だ。プロジェクトの進捗状況をぼくらの拠点とする地域(と農水省)に伝える努力を怠らなければ、徐々に流れは変わるだろう。

ぼくらは、地域で、すなわち日本で農業を始めるための新しい王道をデザインしているのだと自覚している。

「もっとも大切なことは紳士的な対応だ」
ぼくは山中君にそういって釘を刺されている。彼は「なごみ」の扱いを心得ている。


(3)終わらなければ始まらない

あの日、世界は終わった。もちろん、日本の農業も、そして、地域も死んだのだ。

農業と地域での生き方を結びつけることのできた思想家、芸術家は、どこの地域にも存在したわけではなかった。一方で、農業は単に経済活動とだけ思い込める人だけが、日本で、地域で農業ができた。

しかし地域は壊れた。農業も死んだ。人はなぜ死ぬのかという問いと同様、その根本の原因はわからない。地域が死んだのは、地域の命が途絶えたから、としかいいようがない。ただ地域の命とは何だったのかと問うことはできる。

転勤族となって引っ越しを繰り返したり、もう実家や田舎がないという人。あるいは暮らしている場所が、原発事故によって放射能に酷く汚染されたり、間もなく限界集落になる地域に暮らしたりする人。

そのような人たちの中に「ふるさと」を「もう帰れないどこか」と思い込んでしまっている人はいないだろうか。

その思い込みはかつて国民規模で共有され、この国を経済大国にする原動力となった。しかし、この国は死んだ、この国の命が途絶えてしまった。

原発再稼働に必要な「地元同意」を巡って、大飯原発を抱える敦賀市の河瀬一治市長は「立地自治体が『地元』」といい、一方で、滋賀県の嘉田由紀子知事、京都府の山田啓二知事は、いずれも大飯原発の「地元」に当たるという。そして枝野経産相は国会で「現時点では再稼働に反対」「日本全国が地元」と述べた。

また、おおい町の時岡忍町長は「発言できる立場でない」、「地元」の範囲についても「国が決めること」としたという。

それぞれがいろんな思惑で地元、地域を定義しようとしたり、定義を拒んでいる。それが政治家なのだ。

その意味では、ぼくもまた政治家なのかもしれない。

ぼくは、地域の命とは「ここがふるさとだ」と思う人の気持ちに他ならないと考える。もちろん「ふるさと」はいくつあったっていい。しかし、そのためには「なぜここがふるさとなのか」と問いを発し、その地域で答えを探し、それをお互いに支えあっていかねばならない。

これからは、そういうことが地域を生かしていく、地域に生かされていくということだ。ぼくらが、死んで、生まれ変わるとはそういうことだ。その営みこそが地域を再定義していくだろう。

「なごみカルチャー」は、前世紀末に京都の芸術大学で共に学んだ二人が、再会し、全くの素人農家として経営する農業法人(準備中)だが、ぼくとしては、このような考え方をもって始めた。



◇◇◇編集後記◇◇◇

ずいぶん、間があきました。
今回は、これが早くも最終回か、と思って書き始めましたが、書き終わってみると、これからこそ書かねばならないという気持ちにもなっています。

毎年春に強い風が吹く日があります。たいていそこで突然体調を崩します。発熱し、黄色、時に赤褐色の鼻が出ます。
直接の原因は黄砂のような気がしてます。自分ではそう思うけれど、本当のところはわかりません。花粉症では無いですが、しばらくは杉檜の花粉と同じ時期にはマスクをしたほうがよさげですね。

今号をほぼ書き終えてから、大阪出張して昨晩帰って来ました。ナゴミカルに話も弾んだので次号を書くのが楽しみです。今後ともよろしくお願いします。


「なごみLABOの野良芸術ニュースレター」
発行 : なごみLABO
編集・文責 : 仁城亮彦
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メルマガ名
なごみLABOの野良芸術ニュースレター
発行周期
ほぼ 月刊
最終発行日
2012年04月08日
 
発行部数
0部
メルマガID
0001312270
形式
PC・携帯向け/テキスト形式
カテゴリ
アート・文芸 > 美術・デザイン > その他

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