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ノンフィクション・ライター小野登志郎のメールマガジン~牡羊座が見たディープな出来事とスターたち~

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毎週 木曜日(年末年始を除く) 今月3/4回(最終 2017/04/20)
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ノンフィクション・ライター小野登志郎のメールマガジン~牡羊座が見たディープな出来事とスターたち~

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ノンフィクションライター小野登志郎のメールマガジンです。週刊で小野登志郎が取材した情報をお伝えしていきます。

プロフィール:1976年、福岡県生まれ。早大中退後、フリーのライターとして執筆活動を始める。社会問題を中心に取材し、暴力団や外国人犯罪、それを追う警察、そして日韓の芸能界などについて、月刊誌や週刊紙に記事を執筆。著書に『怒羅権』(文春文庫)、『アウトロー刑事の人に言えないテクニック』(洋泉社)、『ドリーム・キャンパス』(太田出版)などがある。出版、web、映像の制作会社(株)小野プロダクション代表。

サンプル号
サンプル号


▼第00号
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                       2012/06/15
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  ノンフィクション・ライター小野登志郎のメールマガジン
    ~牡羊座が見たディープな出来事とスターたち~
Vol.00

毎週木曜日発行
───────────────────────────────────
【今週の目次】
1. 時事ネタ総論
2. 続・龍宮城 日中闇のオセロゲーム
3. 韓流ドラマの視点で見る北朝鮮
4. 東方神起とJYJについて
5. 小説『名をば捨てよ――武田信玄暗殺計画』(横山茂彦)
6. 編集後記

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1.時事ネタ総論

 今週の時事ネタから気になった物をピックアップ。一つ一つのニュースの、
主要メディアに書かれない真相、裏側についてひも解いていきます。
 
◆2012年現在の時点での、芸能界における暴力団との関わりはどうなっているのか? 
また、いわゆる「暴対法」「暴排条例」対策に関して、どのように考えれば良いのか。
元神奈川県警国際捜査課の刑事、小川泰平氏(『現場刑事の掟』イーストプレス刊著者)
に聞いた。

――(小野登志郎)暴排条例と芸能界についてお話ください。

小川泰平氏(以下小川)「分かりました。それには前置きが必要ですね。
まず現在、日本全国に正式な暴力団員と呼ばれている者は、約35000人います。
これは、暴対法で指定暴力団と言われている全国22団体の暴力団員の数です。

(1)六代目山口組17000人
(2)住吉会 5900人
(3)稲川会 4500人
(4)松葉会 1200人
(5)極東会 1100人
(6)道仁会  800人
(7)四代目工藤会 600人
などですね。

 マスコミでは、暴力団の数7万人とか8万人とテレビ等で発表していますが、
これには準構成員や周辺者も含まれています。
 暴対法が出来る前は、暴力団事務所等に行くと名札が掛かっており、組長から
始まり、代行、本部長等々、肩書きがあり、立派な木の名札に素晴らしい
墨の文字で書かれた名札か掛かっていた。暴対法が出来ることにより、全国の暴力
団事務所からこの「名札」が消えた。それまでは、事務所等の「ガサ」に行った際
に、写真1枚で組員が把握できたというわけです。

 また、所轄の暴力団担当刑事が定期的に事務所に行き、新しい組員が増えていないか、
確認していたものです。この「名札」はもちろんだが、カレンダーになったホワイトボ
ードや黒板があり、そこに「当番」の名前が記載されていた。「当番」というのは、
「電話番」のことで、暴力団事務所は24時間体制です。

この「当番」の名前に新しい知らない名前が入っていれば、新しい組員発見と
いうことになります。新入りは、当然「当番」するからですね。今から考えれば
ずいぶん牧歌的な時代ということになります。

だが、暴対法が出来てからは、この組員の把握が難しくなり、既存の組員はいい
としても新規の組員把握が難しくなってきたことは事実です。それでも、名刺を押収
したり、各種事件事故の取り扱い等から、暴力団員と認定しているというわけです。

 暴力団員として活動している情報はあるが、実際に名刺の押収等に至っていない、
本人からの言動(供述)がとれないような理由で、指定暴力団員になっていない者も
数多くいるのも事実で、準構成員や周辺者止まりになっていることもまた事実です。

 だが、昨今の各都道府県の暴力団排除条例により、「反社」と「密接交際者」という
言葉をよく耳にすると思う。反社というのは、反社会的勢力の略であり、つまり、
「ヤクザ」「暴力団」のことです。

 で、「密接交際者」というのが、ちょっと厄介なもので、決まった定義がない。

 少し前に「紳助ルール」というのが確立されそうだった。島田紳助氏が引退会見で
述べた、自分ではセーフと思っていたがアウトだった。このアウトの理由は、

(1)メールのやり取り(2)数回の食事(3)写真撮影(4)そのような立場にあることを知り頼みごとをする、です。

 島田紳助さんは、警察やマスコミが「密接交際者」と認定する前に、自分から、
「密接交際者」と認めて引退をしてしまったわけです。この程度で「密接交際者」と
されては大変だと思っている芸能関係者の方々も大勢いるのではないかと思われる。
私も現職時代に、暴力団の宴席に紅白でとりをつとめるような超有名芸能人が
数名参加し歌を歌っている映像を見たことがあります」


――(小野)日本の警察は、外国のマフィアや暴力団員を「反社」と
認定することはできないのでしょうか? また、いったいどうすれば認定することが
でき、または、彼らが何をしでかしたら認定できるようになるのでしょうか?

小川「『反社』と認定することは可能だとは思いますが、状況次第だと思います。
日本の芸能関係者とも関係の深い韓国でお話をしますと認定するかしないかは別として、
仮にA氏がいるとしましょう。A氏は過去に犯罪歴があり、韓国内で暴力団(カンペ)
として活動していた事実がある。それだけでは、現時点において、『反社』とは言えないと思います。

 日本でも同じですが、過去に犯罪歴があり、元暴力団員でも現時点で真面目に稼働していれば、
『反社』とは言えないと思います。

 ですが、現時点ではカンペでなくとも、元カンペとして、その勢力威力を駆使したり、
現役のカンペと付き合い等があることが分かれば、「反社」「密接交際者」といえるのではないかと思われます。

 ただA氏が海外となると、海外での認定が不可欠になると思います。海外で「認定」されても、
日本国内において、その勢力威力を示し活動している等の事実が必要になります。
必ずしも犯罪構成要件を満たす必要はないと思われます。

 そのような行為が日本国内で認められ、日本国内の警察が海外の警察に照会する必要があります。
正確には、日本の警察庁から韓国警察庁に照会し、回答を得ることが必要となります。
ただ回答が来るか、正確な解答なのかは非常に疑問ですが。また、そこまでやるか? 
というと疑問もあります。

――(小野)では、例えばそのA氏が日本で何かしでかしたら認定できるようになるのでしょうか?

小川「これは仮定の話になります。日本国内で、現役の『反社』と言われている者と、
『共犯』関係で何かの犯罪を犯せば、待ったなし、だと思います。

 また、そのような「反社」の者と付き合いがあれば、「密接交際者」と認定されることは確実です。

 これは、『その筋の人間から証言を得ている』だけでは全くダメです。何の根拠もないことです。
例えば、親しくしている証拠が必要です。『紳助ルール』で申せば、メールのやり取り、
食事を共にする、写真を撮る、相手の立場を利用し何かを頼む、といったようなことがあれば
『密接交際者』候補にはなるとは思いますが、これは、その者本人が島田紳助氏のように、
全面的に認めた場合です。やはり、これも日本の『反社』の者と犯罪をしでかして、
逮捕されるのが一番確実なことだと思います。

 海外の企業、法人会社を『反社』と認定するのは非常に難しいと思います。
韓国に限って言えば、韓国国内で『カンペ排除』の号令がかかり、かなり厳しく
取り締まりを受けていることは事実ですが、あくまでも現役のカンペでのこと。
カンペの交際者までにその域が及ぶと大変なことになると思います。

 韓国の芸能関係は、日本に比べ閉鎖的なところがあり、興行権等まだまだ、
その筋に頼っているところがあるようです。これには、金銭的な問題が大きく
関わっているからです。日本の芸能界も過去はそうだったのではないでしょうか。

 なので、韓国内では普通に一企業として成り立っているものを、その中の1人が
元カンペだから、現在『密接交際者』だからという理由だけで、その企業を『反社』とか
『密接交際者』として認定することはないと思われます。

 また韓国以外の国で言えば、普通にマフィア関連が興行権を握っている国もあるわけです。
海外の企業、例えばプロダクション等に、そこまでを求めるのは無理だと思います。
その国では、マフィアでも日本にアーティストを送り込む時は、通常のルートで
行っている場合は、そこまでは何も言えないでしょう。

 ただ韓国の場合は、隣国と言うこともありますが、最初から日本でのデビューを
目指したり等、日本での活動を前提にしており、反復継続しての営業活動であり、
日本の代理店、日本国内のプロダクション等々との付き合いが考えられます。日本の企業
(プロダクション等)の判断が問われると思われます。ですが実際問題は、非常に難しいです。

例えば、D社という、韓国のプロダクションがあったとします。今までは、
健全な仕事をしていましたが、日本に進出するにあたり、都内の『反社』と
言われる組織の力が必要になり、韓国内でその組織に顔が効くカンペを雇ったとします
。ですが、役員名簿にも、従業員名簿にも名前がなければ、それを知る余地はありません。
実際にブローカー的な人が存在するのは事実です。

 また、役員名簿や従業員にいたとしても、韓国は、キムやパクやチョンさんだらけです。
その人達を全員、いったい誰が調べるんですか?

 韓国でも把握されてないことも数多くあります。そのような理由から、それなりに
難しいと思われます。

 この件は、日本のプロダクション、または場所提供者(東京ドーム等)などの
判断によるところが大だと思いますが、法とは別に、興行に関してはルールが
必要になると思います。ですが、やはり大きなお金が動きますから、
そこまで真摯に調査をするバカはいないでしょう。また、そのように調査機関もありませんから」

――(小野)仮に「反社」と認定できたとしても、警視庁でいえば
組対三課や暴力団追放センターが企業や個人からの照会に対し、答えたりするのでしょうか?

小川「それは、無理だと思います。日本人でも難しいのに、外国人や外国の企業を
認定すら出来ていないのに、答えられること自体が出来ないのが現実だと思います。
そんなことしたら、日本以上に世界にはマフィアの数が多いと思いますので、
大変なことになります。香港や、マカオや中国は、ヤクザだらけですよ」

――(小野)では、外国の犯罪組織、国際犯罪組織に対しては、
日本の暴対法や暴排条例は無力ということなのでしょうか?

「無力と言われると、非常に残念ですが、結論から申しますと事実だと思います。
日本で言う『反社』、つまりヤクザ者も海外の組織であれば、ある程度認められている
場合もあります。私の知識の範囲ですが、日本の『反社』つまり暴力団と海外の暴力団とでは、
立ち位置が全く異なります。

 また海外の場合は、日本のように、指定暴力団といったように、
明確な区別がない国が多いようです。私は世界各国すべてを熟知しているわけではないので、
日本以上に把握しており、厳しい国もあるかも知れませんが、日本に多く来日してくる者の国に
限っては把握されていないと思われます。

 ただ、薬物や銃器の前歴者の把握に関しては、日本以上に厳しい国はたくさんあります。
外国の犯罪組織、国際犯罪組織、というものを本当に日本の警察が把握しているかというと、
非常に疑問です。

 私が現職時の話になりますが、外国人被疑者を逮捕してから、
組織名が判明し(被疑者の供述から)その国に照会しても、無回答か、
そのような組織は無い、という回答ばかりでした。本当に把握していないのか、
そうでないのかは分かりませんがね」

――(小野)暴排条例で混乱した状況が芸能界にはそこかしこで見られます。
中にはビジネス上の争いが生じた時に、悪意を持って「あそこは『反社』だ」
と虚偽のデマを流す場合すらあります。芸能人はイメージが命であり、
そういうことを公言されてしまったら致命傷になります。今の状況に関して、いかが思いますか?

小川「確かに芸能関係者の中には戦々恐々としている方々もいると思いますよ(笑)。
小野さんのおっしゃることは理解しています。ですが、これは法整備といいますか、
一般企業や一般市民に対して色々と注文をつけ、中には罰則まで設けている条例です。
が、これは企業や一般市民のために作った条例だと考えています。

 例えば、銀行の口座開設にしても、銀行は『反社』の方の口座を作りたくないのです。
普通に取引するだけならいいのですが、例えば、小さい話で言うと、
月末は銀行が混んでますよね。それをヤクザ者は文句タラタラ言って早くしてもらう。
それがマンネリ化し、常に待ち時間なしのVIP待遇です。融資に関しても同様に、
ムリムリが多いと聞きます。それが、今回の条例によって、口座開設を
断らなければならなくなったのです。この条例を盾に、断わる名目が出来たわけです。

 マンションの賃貸でもそうです。貸す方も、仲介する不動産屋も、
そのような『反社』の者に貸したくはありません。ですが、実際は貸していたわけです。
マンションなどの場合、隣室の者はテレビの声は最小にし、
中にはヘッドホンを使用したり、喋り声も聞こえないよう、ヒッソリ住んでいる者もいるのです。
結局今回の条例を盾に、断われる名目が、大義名分が出来たわけです。
今では、不動産売買にしても、賃貸にしても、重要事項説明に一文
付け加えられています。不動産屋なんて、もろ手を挙げて喜んでいます。
冷や冷やしているのは芸能人くらいでしょう」
(おわり)

【オウム 高橋克也容疑者逮捕】
 オウム高橋克也容疑者を追うのに、東京と神奈川の警察や記者はてんてこまい。
他に手が回らない事態になっていた。「オウム菊池直子逮捕の広報をしなけれ
ばすぐにに高橋克也を逮捕できたかも」と警察関係者。ニュースが無ければ
高橋は逃げていなかったろう。警視庁は神奈川県に5000人の警官を配備。
対する神奈川県警は高橋容疑者追跡に動員したのは170人。
「神奈川が警視庁に占領された」(神奈川県警関係者談)。

 今回の高橋容疑者の追跡は刑事部が中心となったが、もともとオウム事件は
公安部案件だった。それが国松長官狙撃事件の未解決で公安部は身を引き、
刑事部が捜査に当たることになったと聞いた。
それはともかく、かつて(今も)公安部の不倶戴天の敵であった新左翼過激派の
元幹部は、この高橋容疑者の逃亡について下記のように語ってくれた。

■某新左翼過激派元幹部。東大出身。

「逃亡者高橋克也に関しては、経験した者にしか分からないことだが、逃亡には
かなりのエネルギーが必要とされる。わたしもかつて逃亡のミニ体験があり、
また殺人容疑で指名手配された仲間の、数年にわたる逃亡を“幇助”した経験が
ある。その経験が今回の高橋の逃亡に当てはまるか否かはよく判らないが、
逃亡という日常生活とはかけ離れた体験は、した者にしか判らない“過酷”なものなのだ。
 そこで自分の体験を述べながら高橋克也の逃亡生活について想像してみたい。
 自分の経験から言えば、逃亡を成功させるには何点かの要素が必要だ。
 自分はそれを「金」つまり逃亡資金、「逃亡を補助するネットワーク」、
「逃亡生活を支えるモチベーション」、「そしてそれらを駆使しての偽装」の
4点に尽きるのではないかと思っている。
 高橋克也のみならず現在日本には逃亡している指名手配犯が何人もいるが、
過激派とされる者たちや暴力団には組織もあり、逃亡に当たっては組織の支援が
得られるので、単独犯よりは状況はいい。高橋の場合これに当てはまったのか
どうかは疑問もあるが、自分は何らかの形で旧オウムの関わりがあるのではないかと思っている。
そして暴力団の場合は知らないが、過激派の逃亡者の場合、彼らは
ただ単に逃亡しているだけではない。彼らにとっては逃亡ではなく“地下に潜っている”だけ
のことである。彼らにはそれぞれ“任務” があり、彼らのモチベーションはかなり高く、
それが苦しい逃亡生活の支えとなっているのである。

 また高橋を含むオウムの3人や指名手配された過激派のメンバーは何故、
こうも長く逃亡生活を続けられるのか不思議に思われる方も多いと思われるが、
その背景には日本の警察の能力に対する過信があるのではないだろうか。
一般市民が思っているほど日本の警察は優秀ではない。いや、かなり抜けている側面があるのだ。
 先に述べた、殺人容疑で指名手配された仲間は、自分と大学が同じで
同期の親しい間柄であった。当時、活動の第一線から退いていた自分をその仲間は、
全国指名手配される前日に訪ねてきて、事件についてその詳細を語ってくれた。
その夜、彼と自分は遅くまで語り合い、翌日の昼過ぎ帰っていった。
その後、喫茶店で遅い朝食をとっていた自分は見ていた新聞の記事に目が釘付けになった。
なんとさっきまで一緒にいた仲間ほか数名が殺人容疑で全国指名手配されていたのであった。
 その男は、所属する過激派の幹部であり自分と実に近い関係にあったことは、
当然警察も掴んでいたはずである。だが、当日はもちろん、その後も自分に対する事情聴取は
一切行われなかったのである。それだけではない。その数日後、自分のところに
彼とは別の指名手配者数名を数日間か匿ってくれと依頼があり、近くに住む友人
に頼み3名を数日間匿った。この時も警察の動きは一切無かった。
自分をマークしておれば一網打尽に出来たのにも拘らず……。

 そして極め付きがあった。先に述べた自分の友人は1年後に接触してきた。
彼は同じ大学、同期であることから自分との接触は1年間我慢したのである。
 そして、彼は以後の逃亡生活に対する援助を要請してきた。そして、
新たなるアジトを構えるまでの数日間、自分のアパートに潜んでいたのである。
そんな時ハプニングが起きた。自分と連れ合いが働きに出た後、
なんと警官がアパートに訪ねてきたのだ。その時、彼はこのアパートローラー作戦に
参加していた警官にまともに対峙したのである。その時彼は、
アパートの借主の従兄弟であると名乗り、しつこく事情聴取を迫るその警官を
罵倒さえしたのである。然るに、この間抜け警官はこの人物にほとんど疑いを
抱くことは無かったようである。以後自分に対する再聴取も無かった。もちろん、
自分は万一を考え、彼を別の友人宅に退避させたのだが……。

つまり、日本の警察官は上から指示された事しかやらないようである。
想像力はほとんど無かったように思う。この警官が自分のデータと照らし合わせて
事情聴取を行っていたら、すぐさま対応した男が指名手配犯であることに
気づいていただろう。彼は自ら褒章のチャンスをふいにしたのであった。
 この一件からも、一部かもしれないが日本の警察官がいかに間が抜けているかが判るであろう。

 長期の逃亡生活には“なりすまし”がなにより重要である、実際オウムの3人も
他人の住民票を使うなど他人に“なりすまし”て、これまで十数年に亘る逃亡生活を
続けてきた。もし、彼らが何らかの形でオウムの支援を受けていると仮定すると
高橋の再度の“なりすまし”は可能であったと思われる。
 その第一の要素は、世間のほとぼりが冷めるまで、潜伏できるアジトの存在が
不可欠である。自分の場合でもそうだが、警察権力が旧オウムのメンバー、
そして裾野に位置するシンパまでどの位把握しているかが大きな鍵となる。
 また、オウムが武装蜂起を企てていた段階でそれなりの“草”(非公然の協力者)を
用意していた可能性も排除できない。“草”と普通の市民を峻別するのは優秀な警察官を
持ってしてもかなり困難なことである。ましてや間が抜けたのが少なくない日本の警察では不可能だったろう。

 そこで“なりすまし”である。
 自分の場合は、親の名義で都内某所に小さな一軒家を借りた。名目は、自分が
アルバイトで関わっていた設計事務所の下請け事務所兼住居ということにした。
そこで30前後の男達が出いりしても奇異には受け取られなかった。不動産屋も
下請け実績などを示すと簡単に信じた。そして出入りには製図を入れた筒などを
常に携帯する様に注意した。それでも警察のローラーを受けた時のため地下に穴を掘り、
彼を隠す部屋を用意した。一軒家の物件を探す際、土の地面にじかに立っている物件か
どうかに留意した。このアジトは2年ほど暮らしたがその間、危険な兆候は皆無だった。
このアジトは指名手配者の組織での任務が変更されると供に閉鎖されたのだが……。

 つまり、“なりすまし”は協力者がいれば、さほど困難なことではないのである。
そして人間の記憶は時がたつに連れ手薄れる。つまり“ほとぼり”は、いつかは冷めるのである。
もう捕まってしまったが、もう少し高橋が逃亡することに成功していれば、協力者のアジトに
2年ほど潜み、ほとぼりが冷めた頃、新たな人格に“なりすます”し、普通に市民生活を送るのは
それほど困難なこととは思われない。

 問題はこれを可能にするネットワーク、もしくは“草”の存在である。
もし“草”が存在したら高橋の発見はかなり難しいこととなっていただろう。
しかし、元オウムのメンバーの看護師と一緒に暮らしていたのを警察は見落としていたことを
見ても、ある程度の潜伏生活は可能だったかもしれない。

さて長期の逃亡生活にはもう一点不可欠な要素がある。それはモチベーションである。
菊池が逮捕時に呟いた「もう逃げずにすむ」と言う言葉は本音であろう。長期の逃亡生活、
そして“なりすまし”は精神的にかなりの負担が掛かるのである。
 オウムの場合はどうか知らないが、過激派の場合は少し様相が違う。過激派の場合、
逃亡はすなわち“地下に潜る”ことであり、革命家にとっては、いわば「望むところ」でもあるのだ。
“地下潜行者”はじっと隠れているのではない。地下に潜りながらも組織と連絡を保ち、
資金などの補給も受け、指令された任務も完遂するのである。それに彼らは何より逮捕を恐れない。
逮捕はあくまで活動の結果に過ぎないのである。つまり彼らにとって“逃亡”はそれが目的ではなく手段に過ぎないのだ。

 しかし、一度組織が崩壊したり、足場が無くなると、この構造は即座に壊れる。
日本本国にほとんど足場の無かった日本赤軍の丸岡や重信が半ば出頭と言う形で逮捕されたのがその実例である。
 では高橋になおも逃亡を続けるモチベーションがあったのか。
それは現段階では何ともいえない。尊師こと麻原の罪状の軽減のための逃亡だとしたら、
麻原への帰依の度合いが問題とされるだろう。菊池の場合、どうも麻原への帰依が薄れてきたか
の様子が垣間見えるが高橋の場合はどうであろうか。
 もう一つの可能性はかなり妄想だが、武装蜂起を夢見るオウムの残党が未だに存在する
ケースである。もしかしたら穏健派を装っているアレフに“地下組織”があるのかもしれない。
もしそうだとすれば、そして高橋克也がそのメンバーであるとしたら、高橋のモチベーションは
維持できたであろうし、この場合彼を捕捉することはかなり困難なことになっていたのかもしれない」(元過激派幹部談)

【『週刊文春』6月14日号の「沢尻エリカ大麻疑惑」】
ここでもエイベックスのコンプラインス問題が提起されている。文中にある
エイベックス関係者の「三年も前のことで、いつまでエリカを犯罪者扱いするのか」
という文春記者への抗議に半ば同意。じゃ、約三年前に逮捕収監されたC-JeS
のペク・チャンジュ氏のことを今になって「コンプライアンス上問題ある」としたエイベックス。
その基準はいったいどうなっているの? となるが……。
 ちなみに『週刊文春』、「小沢夫人手記」のおかげで久々の完売とか。
編集部の雰囲気も良く、知り合いの記者さんたち、楽しそうです。

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2. 『続・龍宮城 日中闇のオセロゲーム』
 
 2009年4月に太田出版より『龍宮城』として、また今年4月に文芸春秋社
より『怒羅権』として文庫化され出版されたノンフィクション。ここでは、
本には書けなかった内容や、その後に起こった新しい展開などをメルマガで
書いていきたいと思います。

■プロローグ 大震災時に出会った日本と中国のアウトロー

 ダークグレーのスーツを着た、レスラーのような体形をした40絡みの男は、
店に入ってきた時にはすでに、まっすぐに歩けないくらい泥酔していた。
友人と思しき男を一人従え、席に着くなりごろんと横になり、店内にいたわたしと
中国人店長に向かって中国語と日本語でしきりに悪態をつく。店長は笑いながら
それを受け流していた。「どうぞどうぞ。日本人になりやがって。勝手にやれよ、
ああ、ハイハイ」などと、意味不明な言葉をわたしにも投げかけ挑発してくる。
2011年3月23日、東日本大地震が襲った後の新宿歌舞伎町、深夜2時のことだった。
「おい、俺は、オマエがオムツしていた時からこの街と店長のことは、よく知ってるんだよ!」

 男が怒鳴り、側にいた連れの男があわてて口を抑える。10秒ほどだったか、
わたしはじっくりと考え込んだ。しかし、この度重なる無礼な言動に対し、
抗議の一つもしたくなった。男の顔を見て、言った。
「そのオムツをしていたオマエとは、もしかしてわたしのことですか?」
 その瞬間である。「そうだよ!」と怒鳴るや、いきなり男は持っていたグラスを
わたしに向けて投げ付けた。距離にして4メートルほどだったか。グラスは、
わたしの左目の少し上のところに、ゴチャッという鈍い音と共に――わたしにはそう聞こえた――
命中し割れた。破片と水しぶきがわたしの顔と服に飛び散った。
今から考えると、それは、直線的にではなく、いくらかふわふわと楕円を
描いて飛んできて当たったのかもしれない。ともかく、男の投げたグラスは
わたしの頭に直撃した。そして男は、なおも追い打ちをかけるように猛り立ち、
ガラス製の灰皿を自分の頭の上に持ち上げると、目の前にあるテーブルに思いっきり
ぶつけ激しい衝撃音とともに叩き割った。
「これでオマエの頭、殴りつけてやる!」

 怒りと怖れがない交ぜになり打ち震える手で、わたしは、顔や服に付いた水しぶきと
破片を払いながら、相手の男を睨みつけた。連れの男も身構えこちらの出方を窺っている。
あまりの出来事に店長が驚き慌て、グラスをもろに受けたわたしの顔におしぼりを当てている。
「ほら、かかってこいよ。ここは、歌舞伎町だろ、ええ。警察呼んでいいよ。おい、どうなんだ!」
 さらに挑発する男と、それをニヤニヤとしながら横目で見やる連れの男。
酔っているとはいえグラスを顔面に受けるとは、反射神経にかなり問題があるな。
あれが拳銃だったら、一発で仕留められているな。増幅する怒りと屈辱の中、
衝撃を受けたはずのわたしの半分の頭は、それなりに冷静にこの状況を分析していた。

「ああ、ハイハイ、ごめんなさい、悪かったです。ハイハイ、ごめんなさいねえ。ほら、いつでも来いよ!」
 不良中国人の取材を初めて十年以上が経つ。脅しを受けたり嘲笑や口汚い罵りを受けたり
など、この間、様々な出来事を経験してきたが、この世界にある微妙な間合いというものを、
それなりに体得しているつもりだった。しかし、目の前にいる男には、
それが全く通用しない。そしてなにより、「彼ら」との付き合いの中で、
これまでで最も不快な思いであり、味わったことのない複雑な感触だった。

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3、韓流ドラマの視点で見る北朝鮮 

 二代目である金正日が死去し、息子金正恩に変わった北朝鮮。
今後、どんな変化が起きていくのか。韓流ドラマからその様子をお伝えしていきます。

韓流ドラマは何故、人々の心を捉えて離さないのか
 
ここ数年、韓国ドラマが恐ろしい勢いで日本を席巻している。
衛星放送には韓国ドラマが満ち溢れ、地上波でもNHKをはじめ数局が放送している。
またレンタルビデオ店では韓国ドラマ、韓国映画のコーナーはでは多くの
作品が並んでおり、ある意味レンタルビデオ屋の経営を支えている。
韓国ドラマは日本で猛威を震う韓流の核心コンテンツであるのだ。
2002年に韓国KBSで放送されたテレビドラマ「冬のソナタ」は2004年12月
日本のNHKで放送されるや大きな反響を呼んだ。主人公ペ・ヨンジュンは
日本で一躍大人気となり、以後韓流の大きな流れの第一歩となった。
続いてNHKは韓国時代劇「チャングムの誓い」を放映した。
この「チャングムの誓い」もまた大ヒットした。日本のTVから殆ど姿を消してしまった
時代劇が大きな関心を呼んだのである。この韓国時代劇は「朱蒙」「イ・サン」「トンイ」と立て続けに放映されている。 

以後BSを中心に韓流ドラマは数多く放映され、その勢いは止まるところを知らない。
また韓流の世界はドラマの世界だけに止まらずK-POPの一大流行を生んだ。
そしてドラマ、K-POPの世界を超え現実世界でも韓流が日本を席巻しつつある。
その聖地が東京新大久保界隈にあるコリア・タウンである。この日々増殖し続ける
コリア・タウンには女性を中心に日本人が大挙押し寄せ大変な賑わいを見せている。
そしてそれがまた、新しいコンテントへの需要を生み出しているのだ。
 ところで現代劇、時代劇を問わず、韓流ドラマが日本人、
それも特に女性の心を掴んで離さないのは何故か。そこには様々な理由があるようだ。
その一つに韓流ドラマが韓国、北朝鮮を問わず朝鮮民族の人生観を濃厚に
反映していることがあるように思われる。韓流ドラマの魅力の一つにそこで展開される
濃厚な人間模様があるがそれが人気を支える秘密のよう感じられる。そこには
現実の韓国の濃厚な家族関係、人間関係が反映されており、それが、
人間関係が希薄になりつつある今の日本人には“新鮮”に受け止められているのかも知れない。

 韓国人にとって人間関係の基本は家族関そのものである。それは北朝鮮でも変わらない。
南北を問わず朝鮮民族が何よりも大事にするのが家族であり、そして家族を巡る
様々なことが社会の規範となっているのである。現在日本で韓国の若者が主人公のラブコメ、
恋物語が数多く放映されているが、こうしたドラマが日本と決定的に違う点は、
それがたとえラブコメであろうとも、必ず家族の問題が出てくることだ。
韓国ではたとえ自由恋愛であろうとも家族、それも両親、祖父母抜きにその恋愛が成就することは決してない。

 そして朝鮮民族の家族は深い絆で結ばれているが、同時に愛憎もまた
不可欠に絡んでもいる。さらに後妻(継母)や彼女が生んだ子供が絡んだりすると、
愛憎は一気にドロドロの争いに発展する。そしてそれに家督争い、
後継者争いが加わるとそうしたドロドロは極限化する。「朱蒙」にはその世界が克明に描かれている。

この要素は韓国ドラマに不可欠で、現代劇、時代劇を問わずヒットの大きな
要因となっている。そうした時代劇の代表が「朱蒙」であり、
現代劇のそれが韓国で大ヒットし日本でも何度か放映された「製パン王キム・タック」である。
ところで韓国時代劇の多くは朝鮮王朝時代を扱ったものが多いが、
「チャングムの誓い」「トンイ」などヒットしたものも多いので記憶している
方も多いだろう。朝鮮時代は1392年から5百年近く続いたこと、
そしてその社会規範が現在の韓国、北朝鮮の社会の規範となっていることから共感を
呼ぶ点が多いのであろう。それは当然にも現代劇の中にも生きている。
また「チャングムの誓い」に代表される朝鮮王朝の料理は大きな関心を呼んだが、
その他にも礼儀作法、儒教精神など日本がほんの少し前まで持っていた世界と
近いことも共感を呼ぶ原因の一つかもしれない。 

 ところで520年間も続いた朝鮮王朝だがその時代は平静であった時期は短く、
宮廷では高官たちの派閥争いが絶えず、それが庶民生活にも反映し庶民が塗炭の
苦しみを舐めたのであり、こうした事態に反抗する庶民が後を絶たなかった。

言い換えれば朝鮮王朝時代は政争と陰謀と動乱に事欠かない時代であったのだ。
つまりドラマの要素に事欠かない時代だったのである。先にも述べたが、
こうした事態は現代にも引き継がれている。現在韓国最大の企業である三星で
激烈な後継者争いが繰り広げられているが、それは朝鮮王朝時代の後継者争いの
ドロドロに勝るとも劣らないものであり、正にドラマの世界そのものである。
この三星の後継者争いは王朝を巨大財閥に置き換えれば朝鮮王朝時代の世継ぎ争いと
殆ど構造は同じである。そして庶民はこうした自分とはかけ離れた世界での
「ドロドロ」をドラマのように眺めうっぷん晴らしをするのである。
朝鮮王朝時代はドラマのテーマになるものが多いようで、
これまで実に50余もあるのである。これからメルマガで朝鮮王朝時代を
舞台にした代表的ドラマを紹介していこう。

(北朝鮮に詳しいジャーナリスト、N・A氏取材 構成・小野登志郎)


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4、東方神起とJYJについて

 東方神起、JYJなど韓流スターたちの表と裏にまつわる
情報を書いていきたいと思います。

■専属契約書

 下記の契約書を初めて読んだ時、衝撃を受けた。
 いったいどのように解釈をしてよいのか。今でも分からない。

「エイベックス・マネジメント株式会社(以下「甲」といいます)と
、C-jeS ENTERTAIMENT CO.,LTD(以下「乙」といいます)とは、
乙に所属するアーティスト『本名:KIM JAEJUNG、本名:KIM JUNSU、
本名:PARK YOUCHEON』(個人であるとグループであると問わず総称して
以下「本件アーティスト」といいます)の録音録画活動、著作物創作活動及び
芸能活動等に関し、次の通り合意し、専属契約(以下「本契約」といいます)
を締結するものとします」

・第29条(特記事項-2)
「万が一、グループ実演家『東方神起』の構成メンバー「本名:SHIM CHANGMIN、
本名:CHUN YOUNHO」が、S.M.ENTERTAINMENT Co.,Ltd及びその系列会社と契約関係
が終了(解除を含みます)し、レコード会社、芸能プロダクション又はモデル事務所等に
属さなくなった場合において、甲が当該2人と契約することを希望する場合は、
甲は、乙及び本件アーティストと協議の上、当該2人と専属契約について
協議・交渉・締結するものとします。尚、当該2人が乙の所属アーティストとなった場合に
おいても、甲が乙と当該2人に関する契約を希望する場合は、甲乙別途協議の上、
別途書面を取り決めるものとします」

 この契約書の内容を理解するには、少し時間が掛かりそうだ。
ゆっくりと考えてみたいと思う。

「本題」に入る前に、少し長いが、わたしなりに考えた彼らのことを、
書いておきたい。

 東方神起事態と呼ばれる事象を調べるにあたり何度も考え込んだ。
わたしが東方神起とJYJのことをきちんと書くことに何か価値があるのか。
いや、そもそもその必要があるのだろうかと。

 つらつらと考えるに、彼らは今までの日本の、そしてアジアのエンターテインメントの
歴史書を文字通り書き換えてしまったと思っている。それも大幅に。

 しかし、あまりにも不確定な噂や「真実」が飛び交っている、
まさに混とんの中にあった。いまだ現在進行形のこの事態を調べ切ることは
いろんな意味で難しい。世界の図書館に収まってしかるべき書物は、
今はまだ作るべき時期ではないのかもしれない。そう感じてもいた。

 とにかく、何度も何度も彼らの映像を見返した。五人の東方神起が
生み出してきた静と動。というよりもまさに「劇」的なインパクト。
若い圧倒的な感情を爆発させるその表現力は、ただただ凄まじいという他はなかった。
彼らのパフォーマンスを真剣に真正面から見据えたのならば、震えない者はいないはずだ――(つづく)。

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5. 小説『名をば捨てよ――武田信玄暗殺計画』

 こちらの原稿は、作家横山茂彦さんより寄稿いただいた小説です。
横山さんの織りなす世界をゆっくりとお楽しみください。
 

 永禄十一年も年末の夕暮れどき、富士川沿いの駿河国境におびただしい
兵馬が集まっていた。菱紋の旗指物をひるがえした大軍勢の先鋒は、すでに
国境の関所を難なく突破したとみえて、あたりには火をかけられた要害が
散見される。これら火をかけられた要害は、国境の関所を監視する役目を
受け持っていたはずだ。侵攻したばかりの窪地にたむろする将兵たちは陣幕を張り、
冬場の寒さをしのぐ野営準備に余念がない様子である。
 この甲駿国境の異変は、その日のうちに小田原城にもたらされた。すなわち、
武田信玄の相甲駿三国同盟破棄、駿河今川攻め合戦の勃発である。西相模は
狩野村の与七が足柄山の棟梁殿に出頭を命じられたのは、その深夜のことだった。
「もうそなたも知っておろうが、武田殿が駿河攻めのことじゃ。先刻、小田原の
松田様より使者を通じてわが一党に叱責のことあり、ついてはそなたの仕置きにも言及された」
 と、棟梁殿は疲れた顔で言う。
「武田様が駿河を? まったく存ぜぬことで……」
 与七は平伏したまま、目を泳がせていた。
「だから、わぬしの忍び稼ぎが不届きと言われておるのじゃ。このところ、
甲斐の郡内にも足をのばしておらぬようじゃの? 与七よ。そもそも武田殿の
違約は、昨年より気配がみえておったこと」
 与七は平伏したまま、うつろに目を泳がせるしかなかった。
「われら忍びの稼ぎは、足を棒にして情報をつかむほかに成すべきことなし。
こたびのことは、そのほうの失態じゃ!」
「ははっ……」
 板の目に指を入れるように、与七は床に這いつくばった。
「武田勢は駿河国境を越え、はやくも由比に陣を張っておるという。御本城様も
御屋形様も小田原城内に評定衆を集められ、今宵は寝ずの評議じゃ。
わぬしは、すぐにも駿府におもむき、模様見をしてまいれ! 
配下の者を使うことかなわず、わぬしがその眼でしかと確かめよ」
「ははっ!」
 ここにいう御本城様とは前の相模国主北条氏康、御屋形様とは北条氏の
当主北条氏政のことである。俗に後北条氏三代目、四代目とも称する。
「もうゆけ、今宵はわしも寝ずの稼ぎじゃ。明日の夕刻にも、使いの者をもって
駿府の情勢を知らせるべし」
 と、棟梁殿はしわがれた声で言い添えた。(つづく)

■横山茂彦:作家。近著に『合戦場の女たち』(情況新書・世界書院刊)、
『大奥御典医』シリーズ(二見文庫)など。
ブログ: http://07494.cocolog-nifty.com/blog/


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6.編集後記
 
 当メールマガジンの編集人、担当編集中村直人による、編集後記をお届けします。
ちょっとしたこぼれ話や、読者様からのご質問に対するお返事などを掲載していく予定です。
 
 今回はサンプル号の配布です。今週はこの辺にしたいと思います。
 今後も新しく価値のあるコンテンツをお届けできるよう精進いたしますので、
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