ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」

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ジャーナリスト嶌信彦が政治、経済などの時流の話題や取材日記をコラムとして発信。 会長を務めるNPO法人日本ウズベキスタン協会やウズベキスタンの話題もお届けします。

 

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メールマガジン最新号

2017年 6月 28日 vol.167

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トランプ外交に翻弄されるな
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世界を惑わせているトランプ外交の特色とその濃淡が徐々にはっきりしてきた。

■従来の価値観では測れないトランプ
第一に明確化させたのが反TPP(環太平洋パートナーシップ協定)である。オバマ政権時代は、TPPの旗振り役を任じ、アジア・太平洋貿易の新しいルール作りを目指しているようにみえた。

自由化・反保護主義を基軸にアメリカの競争力が強い農業や知的財産などの分野で日本や中国・アジアに切り込む狙いがあったと思われる。しかし、トランプ大統領はTPP反対を明言し、今後の貿易協定は多国間ではなく二国間で“取引き”したいと言い出したのである。

第二は、オバマ政権時代は人権や環境など地球的価値観に共鳴し、21世紀の中・長期的環境問題のルール作りに理解を示していたし、リード役になる心づもりはあったようである。特に人権については、北朝鮮や台頭しつつあったイスラム国のふるまいに対し強く牽制していた。しかし、そのやり方は外交的対応が中心で直接的な対峙ではなかった。いわば、アメリカの伝統的価値観に則った手法であり、日本やEUにはわかりやすかった。

ところがトランプ政権になると“アメリカ・ファースト”を唱え、特に当初は白黒のメリハリをはっきりつけた物言いと手段をとったりしたので、世界中が混乱した。たとえば対中外交では、これまでの“一つの中国”論に対して「誰がそんなことを決めた」と言い、就任したばかりの台湾の蔡英文総統にお祝いメッセージを送り、アメリカに招待したりした。
アメリカが一つの中国を否定するような言い方をしたのは、1970年代の米中国交回復以来、初めてのことだった。このため中国と台湾を分けて付き合っていた世界の国々、特に日本を驚かせた。

また、環境問題で中長期の地球環境問題の対応を取り決めたパリ協定に対しても参加しないと言い出した。これにはドイツのメルケル首相も、地球的問題の価値観を共有できない国は同盟国とは言い難いという趣旨の発言をし、世界に波紋を投げかけた。

さらにシリアへの突然の空爆もトランプの“やる時はやる”姿勢を示したものとして、アメリカ外交の読み方を難しくさせた。

■再び日米貿易摩擦も?
第三は日本をアジアの同盟国と位置づけ、尖閣問題などで時折り中国の対米貿易黒字の巨額さを取り上げ、アメリカ産品の購入増大や対米投資の増額を要求していることだ。

ちなみにアメリカの貿易赤字は、対中国赤字が3470ドルと断トツに多く、日本は第2位で689億ドル、ドイツが649億ドル、メキシコが632億ドルと続いている。

このため、一時は中国を為替操作国と断定し、4月に習近平主席が訪米した際に「貿易不均衡を是正する“100日計画”を策定することで合意した」と発表した。また中国だけでなく日本に対しても貿易不均衡の是正策を具体的に求めてくる可能性も強い。日米間では貿易摩擦が課題となることは久しくなかったが、日本の円安傾向などについて恣意的な動きと捉えられたりすると再び日米貿易摩擦が厄介な課題になってくるかもしれない。

このほかにもメキシコに工場を作り、安い労働力とメキシコからの対米輸出の安い関税率を利用した企業の行動についても、企業名をあげて批判してきている。トランプ大統領の何をしでかすかわからない行動が数多くあるだけに日本企業も戦々恐々といった体である。


■対北朝鮮外交でカヤの外にならないか
最も気になるのは、対北朝鮮問題だろう。偶発的な事件から戦争になる可能性は「50%以上」という専門家が多い。北朝鮮がアメリカまで届くICBM(大陸間弾道ミサイル)、さらには核の開発に成功したら、とてつもない大きな“弱者の脅し”を仕掛けてくる可能性もあるわけで、その時のトランプ大統領の対応がシリア爆撃のような先制攻撃の形で出てきたりすると本格的な戦争となり、中国も日本も巻き込まれる危険があるわけだ。

このため、北朝鮮に強い影響力を持つ中国の出方が注目されているが、中国がどこまで北朝鮮に圧力をかけて思いとどませられるのか、読み取りにくいのが実情なのだ。


■米朝高官同士が直接接触!?
そんな中、アメリカは北朝鮮に人質となっているアメリカ人救出のため、ひそかに北欧でアメリカと北朝鮮の高官が接触したようだ。1970年代の突然のニクソン訪中による中国との和解を思い起こさせるが、トランプ大統領なら頭越しに有利なディール(取引)外交を行なう可能性も大きい。

ニクソン訪中で日本は対中国の外交を大きく変えたが、トランプ大統領と北朝鮮の接触に対し日本はどう向き合うのか。アメリカは対北朝鮮外交のカードをすべて机の上に出してあたるといわれているが、日本には手持ちのカードは少ない。結局、トランプ大統領に振り回されてついてゆくしかないのだろうか。せめて国民には日々の動きを正確に知らせて外交判断をしてもらいたいものだ。


■トランプ外交の法則性を読み取れ
トランプ外交は突然驚くようなことをしているようにみえるが、その本質はかつての価値観とは一線を画したアメリカ・ファーストの取引外交に真骨頂があると思える。トランプ大統領がいつ・どんなディールでアメリカ第一を勝ち取ろうとしているのか。当初言明していたことを変える可能性も多々あることもわかってきた。

対中方針なども随分とやわらかくなっている。口で厳しいことを言っておいて、相手が姿勢を変えたら柔軟な対応に変える幅もあるということも知っておいた方がよい。

その意味で、トランプ大統領の発言と行動、方針には常に目を凝らしておかなければなるまい。また、アメリカ・ファーストと日本の国益が合致しないときの方策も考えておくべきだろう。あわてて追随ばかりしていると、結局日本の信用を世界で落とすことになろう。
【Japan In-depth 2017年6月23日】

◆お知らせ
・25日 TBSラジオ『嶌信彦 人生百景「志の人たち」』(21:30-22:00)
 ゲスト:国谷裕子様(キャスター)二夜目 音源掲載 来週水曜正午までの限定公開
 激動の時代にワールドニュースのキャスターを担当してきた国谷様が心機一転。多岐に渡るジャンルを扱う番組「クローズアップ現代」を担当する決意をした理由や、「クローズアップ現代」でキャスターとして拘ってきたことなどについてお伺いしました。

 前回の子どもの頃から海外を行き来する生活していた国谷様がアメリカの大学を卒業後、帰国して日本の会社に就職するもすぐに退社し、世界一周旅行に出かけたこと。その後ジャーナリムの世界に興味を持つようになっていった経緯について伺った放送は水曜正午までお聞きいただけますので、お聞き逃しの方は合わせてご利用いただけると幸いです。
 http://nobuhiko-shima.hatenablog.com/entry/201706261

 次回はゲストにジャズシンガーの綾戸智恵様をお迎えする予定です。

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2017年06月28日
 
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