月刊小説クラッシュ

  • ¥0

    無料

作家・歴史研究家の横山茂彦(著書に『軍師・黒田官兵衛に学ぶ絶対に負けない経営術』宝島文庫、『真田丸のナゾ』サイゾー、『大奥御典医』二見文庫など)が発行する、小説と歴史研究のメルマガです。

著者サイト
 

メールマガジンを登録(無料)

もしくは

※ 各サービスのリンクをクリックすると認証画面に移動します。
※ 各サービスで登録しているメールアドレス宛に届きます。

メールマガジンを解除

もしくは

※ 各サービスのリンクをクリックすると認証画面に移動します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
 
メルマガ名
月刊小説クラッシュ
発行周期
ほぼ 月刊
最終発行日
2018年02月15日
 
発行部数
46部
メルマガID
0001670194
形式
PC向け/テキスト形式
カテゴリ
アート・文芸 > 文芸 > 小説

まぐまぐ!メールマガジンの用語集です。
下記の用語以外の不明な点はこちらをご覧ください。

 
発行周期
週1回、月1回などの発行頻度です。
部数
メルマガの配信数を記しています。
カテゴリ
まぐまぐ!に登録されているカテゴリです。
形式
メルマガには以下の配信形式があります。下部「メルマガ形式」をご参照下さい。
 
最終発行日
最後にメルマガが配信された日付です。
メルマガID
メルマガを特定するIDです。
RSSフィード
RSSを登録すると、更新情報を受け取ることができます。

― メルマガ形式 ―

  • PC向け
    パソコンでの閲覧に最適化したメルマガ
  • 携帯向け
    スマートフォンやフィーチャーフォンでの
  • PC・携帯向け
    PC・携帯どちらでも快適にご購読いただけます。
  • テキスト形式
    文書だけで構成された、一般的なメールです。
  • HTML形式
    ホームページのように文字や画像が装飾されたメールです。
  • テキスト・HTML形式
    号によって形式が変更する場合があります。

閉じる

メールマガジン最新号

『月刊小説クラッシュ VOL.24(2018年2月号)』
●本号の内容

「中年と小悪魔」 前編 グラスマン

短編連載「人妻不倫 濃紺の下着」  東山はるか

ミステリアス官能巨編「危険なボディ」 高輪茂

ブログ
http://07494.cocolog-nifty.com/blog/

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●お知らせ
新刊! 2月26日発売。
『誰も書かなかったヤクザのタブー』(タケナカシゲル・鹿砦社新書)600円+税
https://7net.omni7.jp/detail/1106846347-1106846347?cateType=1&siteCateCode=421202

『山口組と戦国大名』(横山茂彦・サイゾー刊)発売中。
http://7net.omni7.jp/detail/1106646827

『体験告白 歳の差カップルはドラマチック』(横山茂彦)好評発売中。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/480021520X/yokotou01-22


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

★☆∵∴*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:..:*:・゜★:* 

   「中年と小悪魔」 前編   グラスマン

「すいません、ここ空いてますか?」
 明らかに若いと分かる女性の声が聞こえたが男は自分に向けられた声だとは思わずにすぐには反応しなかった。
「あのう、ここの席空いてますか?」
 再度そう聞こえて初めてその質問が自分に向けられたものだと理解した。視線を上げると細身の若い女性が立っている。天井のクリーム色のライトが後ろから照っているせいか肩ほどの髪は茶髪に見えた。
「あ、ああ、空いてますよ」
 男は予想だにしない若い女性との会話に戸惑いながら早口で答える。そして同時にテーブルの上に置いていたコーヒーの紙カップを自分の方へと引き寄せた。そんな一連の動作が傍目には挙動不審に映ったのか近くのテーブルの客たちが一斉に男へ好奇の目を向けた。
「ど、どうぞどうぞ」
 そんな周囲の視線を感じつつ男は声を掛けてきた若い女性に席を勧めた。
「どうもありがとうございます。今日は本当に混んでて座れないかなと思っちゃいました」
 若い女性は嬉しそうに微笑みながら男の正面に座った。

 男は小杉純一49歳。中堅の住宅販売会社に就職して今年で27年目になる。
純一の会社は主にマンションの販売を得意としていて、純一自身も就職以来年間平均50件ペースで販売してきた。成績としては他にもっと売り上げる営業マンは多くいるが、純一がこの歳で自慢できるのは一度も転職したことのない生抜きであるということである。業界として近い不動産と並んで住宅販売の業界には転職組が多い。あまり高くない基本給とは別に設定されている歩合給に魅力を感じて他業界から流れ込んでくる者が多いのだが、その一方で才能の無い者たちはすぐに消え去るのもこの業界の特徴でもある。
 そんな入れ替わりの激しい業界にはレアな生抜きである純一だが、社内での肩書は販売3課のサブリーダー、分かりやすく言えば係長クラスの肩書である。22年前に結婚した妻にはほとんど諦められているが、純一には出世欲というものが全くといっていい程無かった。
「あの子ももうすぐ大学を卒業するのよ。しばらくは就職して働くつもりみたいだけど、そのあとは結婚したいって言ってるわ。その時にはもう少し箔のある役職についていて欲しいわ」
 元々気の強い妻だが娘が成人した頃を気に純一が傷つくことなどお構いなしに言いたい放題になってきている。人生を通じてほとんどキレたことが無い純一はそんな妻に対してもいつも苦笑いで逃げるようにしてその場を離れるだけであった。
 昨年末、純一と同じく生抜きだった先輩に定年を迎え再就職をせずに退職する際の送迎会でこっそりと耳打ちされたのは、
「嫁さんが思いやりのないことを言い始めたら要注意だぞ。そうなったら男ができたか離婚を考え始めたかのどちらかだ。俺の場合は……離婚されたけどな」
 ハハハと笑った先輩であったがその明らかなカラ元気が逆に純一には痛々しかった。
「自分の妻がまさにそれです」とは言い出せなかった純一であった。

 一人娘が大学に進学した頃から純一は会社の帰りにある楽しみを見つけていた。
それは自宅から数駅手前にあるカフェで本を読むこと。全国的にチェーン展開しているその店のコーヒーにそれほど入れこんでいるわけではなく、1杯280円で2時間ほど本を読み耽ることができることが何より嬉しいのだ。
一旦家に帰るとリビングのテレビは妻の所有物であり、寝室にある小さなテレビでは味気ないし、何よりミジメなので見る気になれない。
そしてヒッソリと何かを楽しもうにも口煩い妻の監視からは逃れられないので自宅では実質何もできないのだ。
そんな中、たまたま降りた駅前にあるカフェで持ち合わせた小説を読んでいた際にあまりの居心地の良さが忘れられず純一は週に2、3度は立ち寄るようになっていた。読む本はその時によって違う。推理物であったりサスペンス物であったり、時にはドギツイ官能小説なども読むのだが、ここ最近はとある作家の恋愛エンターテインメント小説がお気に入りであった。おじさんとギャルが恋に落ちたり、おばさんとイケメンボーイが激しく絡み合う中になったりとおよそ純一には縁の無いストーリー展開が主なのだが、その非現実的な世界観が気に入っていた。
(誰も俺がこんな小説が好きだなんて思わないだろうな)
 そんなことをいつも心の中で呟いていた。

 そんな純一のお気に入りのカフェは特に金曜日の夜になると席が埋まってしまうのだ。おそらく純一と同じような趣向の者が多いのだろう。ビジネスの視点で考えれば時間制などにして回転を良くしたいところだろうが、このチェーン店は特にそんな対策は採らないようで一度席を確保できれば満足するまで居座ることはできるのだが、その反面満席の場合は残念な思いで帰らざるを得ない。今夜は満が良くテーブル席を確保できた純一だったが、冴えない中年オヤジと相席でも構わないうら若き強者が現れたといったところであった。

 純一の正面に座った女性はピンク色のバッグから本を取り出し読みだした。予想通りの行動に納得しつつ純一もしばらく本へと視線を落としていた。
「コーヒーは詳しいですか?」
 ふと正面の女性が話し掛けてきた。
「え?」
 と、純一は一瞬思考がフリーズする。
「私はあまり詳しくないのでいつも何を頼もうか迷うんです」
 正面の女性は明らかに純一に話し掛けている。純一は半信半疑ながら、
「私も全然コーヒーのことは分かりません。だからいつもアメリカンか本日のお勧めのどちらかですよ」
 と答えた。
「いつもサイズはそのサイズですよね」
 女性は滞りなく言葉を続けた。
「いつも……はい、このサイズですけど。でも、なんでそんなことを?」
 初対面だと思い込んでいた相手から投げかけられた意外な質問に純一は戸惑いを隠せなかった。
「前から気になっていたんです。よくいらっしゃるし、いつも楽しそうに本を読んでいらっしゃるから」
 若い女性はにこりと笑いながら純一に言った。その柔らかい微笑みは一瞬にして純一を虜にした。
「あの、どうして私を……観察するんですか?」
 中年オヤジならではの無粋な質問にも、
「特に理由なんてないですよ。ただ、気になる異性のことはずっと気になってしまうのって、どうしようもないでしょ?」
 そう口にした女性は少し悪戯っぽく唇を尖らせる。
 そんな仕草に純一は忘れていた男の本能の部分が蘇ってくるのを微かに感じていた。
(どうにかして会話を続けなければ……)
 そんなプレッシャーを感じながら、
「君はどんな本を読むの?」
 少し年長者らしさを演出するように聞いた。
「私は主に歴史小説です。今は黒田官兵衛、何年か前に大河ドラマになった……小説を読んでます」
 嬉しそうに答える女性はまるで彼氏に自慢するかのような表情で本のタイトルを見せる。
 純一は夢のような気持ちであった。
(これは……いわゆる逆ナンってやつか?)
 以前呑み屋で聞いたことのある単語が脳裏を過る。しかしすぐにある不安が増大した。
(美人局……うん、そうに違いない)
 純一はそう思い至るとおもむろに本を閉じた。そして、
「さあ、そろそろ私は帰るとします。楽しくお話しできて良かったよ。また機会があればよろしく」
 そう言いながら席を立とうとした。
「ええ、もう帰るんですか? いつもはもう少し本を読んでるじゃないですか。今日は特別な用事でもあるんですか?」
 女性は実に残念そうな表情で純一を見つめた。そんなシチュエーションに慣れていない純一は脆かった。
「あ、あの、特に用事って訳でもなんだけどね」
「だったらせっかくご一緒の席になれたんですからもう少しお話し相手になっていただけませんか?」
 女性の表情はおねだりをする子供のようであった。

                続く
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
★☆∵∴*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:..:*:・゜★:* 
短編連載
『人妻不倫 濃紺の下着』
東山はるか
 窓の外が死角になっていると思ってるのだろうか。それとも、わざと?
 ケンタは立ちどまったまま、ブロック塀のはざまから窓を凝視した。白いネグリジェを脱いで背をのばした瞬間、弾力のありそうなバストが弾んだ。グラビアで見るような巨乳ではないが、プルンとした感触がわかる形のよさだ。その頂にあるオレンジ色の蕾を、ケンタはしっかりと網膜に焼きつけていた。歳は二十五、六だろうか。目もとが涼やかで、モデルをやっていてもおかしくない美貌とプロポーションだ。
彼女が穿いている下着は、濃紺のビキニショーツ。ショーツとセットのブラのホックを、身体をねじりながら脇にまわしてはめている。セミロングのブラウンヘアをかき上げて、乳房をカップにおさめる。そして彼女がTシャツとショートパンツを着おえるまで、ケンタは息を殺していた。気になっていた女性のセミヌードを観たよろこびに、息苦しいほどの興奮をおぼえた。でも、もう行かなきゃ。
 学校に着いたら、アレでもしないとおさまらないぞ。硬く膨張した股間が左右にゆれて、どうにも歩きにくい。彼女のセミヌードにくらべたら、学校の女の子なんてもうガキにしかみえないと思った。
 授業がはじまる前に、親友がやってきた。クラスメイトのジュンだ。
「ケンタ、計画はまとめたのかい?」
 そうだ、「計画」をまとめる約束があったのだ。「計画」というのは、勉強とか合宿のことではない。二人で実行すると決めた「童貞卒業計画」なのである。
「まぁね。でも、いろいろと候補が多くて」
「いろいろって……、ハルミとやるんじゃないのかい?」
「向こうが了解したわけじゃないし。それに、ちょっと気になる女(ひと)がいてさ」
「おッ、そうなのか。教えろよ」
 ジュンが耳もとにささやくように言う。
「おれが見きわめてやるよ、攻略法をさ。クラスの子かい?」
「ちがうよ。おれはもう、ガキみたいな女に興味がないのさ」
「へぇ、大人ぶっちゃって」
 ケンタのこだわりが気になるらしく、その日の放課後に濃紺の下着の女を見に行くことになった。うっかりセミヌードのことを喋ってしまい、ジュンが「濃紺の下着を見たい」と言い張ったのだった。
「いつも下着姿でいるってわけじゃないよ。たまたま見たのさ」
 待ち遠しい放課後、二人は自転車が故障したふりをして、彼女が死角になっていると思い込んでいるブロック塀に近づいた。ちょうど、彼女が出かける準備をしているところだ。白いワンピースがまぶしく、サングラスがカッコいい。彼女はリビングを出るときに、クルマのキーを手にした。
「すげぇ、ヤバイ女じゃん」
 ジュンは彼女の美貌におどろいた様子だ。
「たしかに、白いワンピースに透けて見えたよ。濃紺の下着」
「そうかい、おれには見えなかったな。クルマでお出かけだよ」
 そうしているうちに、ガレージから赤いワーゲンが出てくるのが見えた。路地をまがって、二人が立っているそばを通り抜けていく。ケンタはしゃがみ込んで、自転車のギアを調整しているふりをした。
「行き先はわかってるよ。ショッピングモールだ」
 もう二度も、ケンタはショッピングモールで彼女の赤いワーゲンを見たことがある。旦那さんの白いレックスよりも、ずっと素敵なクルマだと思う。彼女の情熱的な息づかいが、そこにやどっているかのように思えるのだ。
「じゃあ、チャリンコで行くかい?」
「おれは、べつにどうでもいいんだけどね」
 ケンタは、このうるさ型の親友に彼女のことを話したのを後悔しはじめていた。
 ショッピングモールに着くと、ふたりは手分けして白いワンピースをさがした。ほどなく、カフェテリアで見つけたとジュンからメールがはいった。
「勘がいいだろ。ティータイムにセレブが落ち着く場所は、カフェのほかに考えられないからね」
「君のは、嗅覚ってやつじゃないの」
 などと喋っていると、彼女が座っているボックス席に男が現れた。すぐに座って、親しそうに話をはじめた。
「旦那かな?」
「ちがうよ。旦那はもっと背が低いし、歳もとってるよ」
 本屋の雑誌コーナーで立ち読みするふりをしながら、ふたりは人妻の昼下がりの不倫を想像して緊張した。
 まもなく、彼女とその彼氏が連れ立って出てきた。
「駐車場だ」
 とジュンが小さくさけんだ。
「えッ、どうするの?」
「追いかけるに決まってるだろ。こいつは不倫だぜ」
 すぐにジュンが走りはじめた。ジュンが自転車に飛び乗ったので、ケンタも仕方なくしたがった。駐車場の出口で待っていると、赤いワーゲンが飛び出してくる。向かった先にラブホがあるのを、ケンタは息苦しい気分で意識した。
 今朝、彼女のセミヌードを見たときは、こんなことになるとは想像もできなかった。それにしても、夫のいない時間に若い男と。何て自由で奔放な女なんだろう。だとしたら、おれにもチャンスがあるかもと、胸がときめくのを感じた。
「たしかに、あそこに入ったね」
「まちがいない」
 ふたりは思わず顔を見合わせていた。
「ショートは二時間だな」
 ジュンが携帯のカメラモードを調整している。
「待つのかい?」
「決まってるだろ。おれにまかせなよ、これで計画が実行にうつせるかもな」
「えッ」
 その意味はすぐにケンタにも理解できた。不倫の現場写真を材料に、あの人妻と交渉をするというのだろう。困惑に表情をゆがめる彼女に、口止め料として肉体を要求する。
彼女が「仕方がないわね。一人ずつ? それとも、二人いっしょに?」などと答えて、憂鬱そうな顔を見せながら、ワンピースのボタンをはじく、そんな光景まで想像できた。
 とはいえ、ラブホテル以外には何もない、郊外で高校生が所在なく立っているのでは補導されかねない。ジュンが言った。
「きみ、おカネあるかい?」
「どうするんだい」
「隣のラブホからカメラを構えよう。必要経費だよ」
「お、おれは?」
「高校生の男子が、ふたりで入るわけにゃいかないだろう。モホーの不純同性交遊なんて、停学の理由としてはいちばん恥ずかしいよ」
 やむなくケンタは、ホテル街の出口で待つことにした。ジュンのこの作戦は、思った以上にうまくいった。ケンタは暗い車内撮影に失敗していたが、ジュンは太陽光のもと見事に不倫カップルがラブホから出てくるところを活写したのだ。相手は大学生風の若い男。彼女よりもすこし年下だろう。
(つづく)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
★☆∵∴*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:.:*・゜゜・*:..:*:・゜★:* 
ミステリアス官能巨編 『危険なボディ』 連載第24回
                           高輪茂

 真の恋愛は死の観念をありふれた、容易な、少しも怖くないものにする。(スタンダール『恋愛論』断章46)

【前回までのあらすじ】25歳の銀行員・有馬大輔は派遣会社のシステムエンジニア・三好奈緒美に憧れているが、彼女の素顔がわからない。40歳の飯沼次郎は自動車メーカ―から販売会社に派遣されたエリートだが、趣味のスポーツバイクで知り合った名も知らぬ女性が気になっている。還暦をむかえた福原総一郎は、飯沼の会社のイベントを手がける代理店社長。彼はいきつけの酒場のパート店員に、高校時代の記憶の女を重ね合わせている。仕事で接点のある三人が、それぞれに憧れる想い人は、30歳ほどの美女なのである。

第五章 愛と死の儀式


 ストリングス(Tバックショーツ)一枚の裸身をくねらせながら、直美は飯沼の肉体に肌を合わせている。
 ちょうど、柔らかい肉のシーツが戯れて絡み合うように、飯沼の性感の芯が怒張に変わるまで、ていねいな愛撫をくり返した。
「約束して、儀式に参加すると」
「う、うん……。するよ」
 そう言いながら、飯沼は思考停止の状態だった。あれほど望んだ美女とのセックスと引き換えに、殺人者にならなければならないのだ。それも、いま目の前で決意が求められている。
 彼の分身は、すでに直美の中に入ることを前提に身構えているというのに、脳裏にあるのは臆病なためらいだった。
 この女といっしょに生きられるのなら、それもいいかもしれない。だが、彼はもともと妻子を捨てる覚悟まではして来なかったのである。どう考えても、そんなことが出来るとは思えない。殺人も、妻子を捨てることも――――。
 直美が身体を入れ換えるように、ゆっくりとストリングスのサイドを足の指ではずした。器用なことに、彼女は手を使わずにみずからの下腹部を露出したのである。
 まだピッタリと太ももを合わせているものの、そこはもう無防備な女の城砦だった。ふっくらとしたヴィーナスの丘には、柔らかそうなアンダーヘアがそよいでいる。
「ねえっ、決心した?」
 と、直美がうながした。
「……くどいな。参加するとも」
 直美は慌ただしく、飯沼を戒めているロープを解いた。
「じゃあ、あなたを貰うわ」
 身体を合わせると、飯沼は直美の首すじに舌を這わせた。
「うんっ」
 直美のように筋肉質の女を感じさせるのは、飯沼のテクニックでは比較的容易だった。皮膚の表面から少し下にある神経体を意識して愛撫すれば、たちどころに反応がある。
 とくに、耳から首まわりの性感帯が過敏になっている。
「はぁっ……」
 と、直美が喘いだ。
 反応は上々だ。これでもう、この女の神経体はいただいた。と、飯沼は愛撫の虜にしたつもりだった。
 ところが、本格的な愛撫が始まっても、直美の脳は別のところにあるようだった。
「ねえっ、違うのよ。自分の利害で簡単に股をひらく女だって、そう思われるのは仕方ないけど……」
「……」
「あたしにとっては、生きるか死ぬかなの。もう十五年も、あの男たちから逃げてきたの」
「十五年も」
 つい飯沼も、話に乗ってしまっていた。
「十五年って、君……」
「そう、十五年よ。沖縄ではホテルの部屋を襲撃されたわ、シャンパンのルームサービスを頼んだら、ギャルソンが気絶させられて」
「……もう黙って」
 と、飯沼は彼女の首すじから胸に舌先を移した。
「いっしょに居た人が、プールに落ちて大怪我をしたわ」
「え……?」
 飯沼は思わず愛撫の舌先を止めた。
「落ちたって、骨折したのか?」
「ええ、太ももの骨を折って……、可哀相に」
 そう言うと、こんどは直美がみずから弾力のある乳房を飯沼の唇に押しつけてきた。
「んっ……はあっ」
 充血した先端が硬い感触で、飯沼の前歯に当たった。軽く噛むと、直美の上半身がビクンと跳ねた。
「で、ホテルでは? その怪我をした男と……?」
「なっ、何もしてないわ。悪者に追われてるから護ってくれって、そうお願いしただけなのよ」
 と、直美が明らかに動揺した声で言い訳をした。
 飯沼はそれ以上の詮索を避けた。気になるのは、沖縄で大怪我をしたという有馬大輔の存在だった。彼の恋愛相談の中身が脳裏をかすめ、つぎにはおおまかに全貌を理解したように思えた。
 この女が……彼を。肉体の欲望よりも、好奇心が飯沼を衝動的にさせた。この女の心を開かせてみたい。いや、あばいてみたい。
「あ、あっ……!」
 女の部分を指でわけると、しっとりと濡れた花びらが絡みついた。それはまるで生きているような動きで、ねっとりと飯沼の指を迎え入れて包んだ。
 女の樹液が指先に溢れるのを感じると、飯沼は彼女の内部から指を抜き取った。そのせつなにも、敏感な反応が腰をふるわせた。
「自転車のサドルでエクスタシーを感じることは?」
 という飯沼の意地悪な質問に、
「あ、あるわ」
 と、直美は顔を赤らめた。
「軽い感じで、イッちゃうことがあるわ。あと、水泳でもキュッと締めつけると、イッちゃうわ。競泳のコーチはそれ、やらないように指導するのよ。溺れちゃうから」
 などと、直美は女性アスリートの秘密を告白した。
 飯沼は彼女のバストに手を伸ばしたまま、片手でベッドの横にあるテーブルをさぐった。ホテルの要領で避妊具を探したのだった。
「必要ないわ、安全日なんです」
 と、直美がそれに気づいた。
 考えてみれば、ベッドサイドに避妊具を置いている女はいないだろうと、飯沼は自分の行為に苦笑した。
「ねえっ」
 と、直美がせがんだ。
 襲撃だの殺せだのと、物騒なことを口にするわりには、ベッドの中の直美は少女のように可憐だった。
 飯沼は彼女の片脚を手繰ると、ゆっくりと愛でるように折り曲げた。太ももの付け根が広がり、女の亀裂がパックリと口をひらいた。すでに陰唇が広がり、複雑な女の構造が一目瞭然である。
 飯沼はいったん、そこに首を入れて直美の中心にキスをした。
「ああっ」
 直美は腰を揺すってそれを悦んだ。
 ふたたび身体を合わせると、自然に挿入されていた。グッと持ち上がるような抵抗があって、こんどは迎え入れる柔らかさで包み込まれた。飯沼が動きはじめると、直美がその動きに身体を合わせた。すぐに淫蕩な接合の音が響き、否応なく淫らな気分が部屋の中に横溢した。
 ついに、ついに俺はあの女の中に入った。と、飯沼は彼女の颯爽としたサイクリングロードでの姿を思い浮かべ、そして目の前のしどけない裸身にそれを重ねていた。
「あうっ、うっ」
 明らかなオルガスムスの反応を、飯沼は間近に聴いていた。
「あう、う……、ねえっ、殺して、あたしの敵を殺してね」
 その喘ぎのせつなの言葉が、飯沼には仇になった。飯沼のモノは萎えていた。殺人を請け負うという、これまでに体験したことのない恐怖が彼を萎えさせたのである。
「あら……」
 と、直美が冷たく反応した。
急速に萎えてゆく飯沼の分身は、あたかも恐怖に断ち切られたかのようだった。

(つづく)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 ∧_∧       
(・ω・` )_
O┬O ) /   
◎┴し'-◎ ≡   
メルマガ全文を読む
 

▲ページトップへ

▲ページトップへ