西多昌規
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精神科医・西多昌規が明かすメンタルヘルスの深層

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精神科医・西多昌規が明かすメンタルヘルスの深層

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精神科医の西多昌規です。一般書やブログ、SNSには書きづらい精神科医療とメンタルヘルスの裏の実情を紹介します。医学研究や医学部教育の問題点にも切り込みます。
*個人的な診察希望や医療相談は、受け付けておりません。

著者プロフィール

西多昌規

精神科医、早稲田大学准教授。1970年石川県生まれ、東京医科歯科大学卒業。自治医科大学講師、ハーバード大学、スタンフォード大学の客員研究員などを経て、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授。精神科専門医、睡眠医療認定医など。専門は睡眠、身体運動とメンタルヘルス。著書に「『昨日の疲れ』が抜けなくなったら読む本」「休み技術」(大和書房)、「『テンパらない』技術」(PHP文庫)、「悪夢障害」(幻冬舎新書)、「職場にいる不機嫌な人たち」(KADOKAWA)など多数。

シュアな臨床経験・研究・教育に加え、一般書も数多く出版している、信頼できる人気精神科医

サンプル号
精神科医・西多昌規が明かすメンタルヘルスの深層

「薬漬け」「薬に頼らない」医療の深層


●「薬漬け」の深層
一般の人からは、
「薬を出せば出すほど、先生も儲かるんでしょ」
 とよく訊かれる。
 結論から言うと、わたしのような雇われの勤務医がいくら薬を出そうと、もらえる給料に変わりはない。クリニックや病院を経営する開業医にしても、薬の種類を1、2種類増やすよりは、患者数を1人でも多く増やした方が、確実な増収につながる。
 「薬を出すと、その薬を作っている製薬会社からおいしいことがあるんじゃないですか?」
 これも答えはNOだ。病院での薬の販売成績は把握できたとしても、医者個人の処方内容を把握することまでは、暇と人数がいれば可能かもしれないが、現実的には難しい。製薬会社の接待も、2012年に規制が入ってからは、単に高級店でメシを食うだけという集まりはさすがに持てなくなった。

 ではなぜ、薬漬けになってしまうのか。
 日本の外来診療、特に精神科は、「薄利多売」が儲かるからである。
 本質は、ラーメン屋と同じだ。
 薄利多売、すなわち患者数が多ければ多いほど、儲かるシステムである。
 患者を多く診るにはどうすればいいか?
 診察時間を短くすることである。
 診察時間を短くするにはどうするか?
 薬で解決させるのが手っ取り早いからである。
 
 眠れないと患者が言えば、まず何が原因で不眠かを考える。朝起きるのが遅い、生活リズムの乱れからかも知れない。運動不足や寝る前のカフェイン、スマートフォンやゲームなど、良くない生活習慣が不眠の原因になっていることも少なくない。
 このようなきめ細かいチェックを行っていては、いちばん儲かる「3分診療」が、成り立たなくなってしまう。
 「じゃあ、お薬出しておきますね」
 と対処すれば、医者も治療をしたように気になる。

 このような雑な対応に不満を持つ患者は、医者を変えるという行動に出るだろう。しかし薬が効いてしまった患者は、
 「薬さえもらっておけば、ひとまず安心」
と思うようになり、むしろ医者からの小言めいた指導よりも、薬だけもらうほうがマシになってくる。
「ついでに、湿布薬や風邪薬もください」
などという患者に、まじめな医者は説教をするだろう。しかしその説教に費やす時間的浪費は、儲けのためにはいちばんやってはいけないことである。笑顔で、
「じゃあ、湿布薬や風邪薬もだしておきますからね」
とすぐに処方してくれる医者は、この手合いの患者からすれば名医となる。当然、薬だらけになってはしまうが。

 とにかく薬でオチをつけて短時間で診察を終わらせる。こうすれば、薬がほしい患者からは感謝され、待ち時間が長いというクレームも減る。ほしい薬はすぐ出してくれるという評判が立ち、そういう医者を求めている人はますます集まる。自分も儲けることができ、うまいメシも食えて高い車も買うことができる。

●「薬を使わない」の深層

 当然、このような薬漬け=薄利多売診療が真摯な医療という業界で、評価されるはずがない。薄利多売診療に対するアンチテーゼとして、
「薬を使わない治療」
をウリにする精神科医、医療機関が増えてきた。
うつ病やメンタルヘルスに関する一般書でも、
「薬に頼らない」
「薬を使わない」
というフレーズの入った本をみかけ、アマゾンなどの評価を見ても人気も高いようである。

 たしかに、生活指導など本来やるべきことをせずに薬漬けにしている薄利多売治療の罪は重い。しかし一見誠実そうに見える、「薬を使わない治療」についても、わたしは疑問を持っている。
 要は、
「薬を使うまでもない、超軽症の患者しか診ていない」
可能性があるからである。

 初めは「なるべく薬は使わないようにしましょう」など言いながら、いざ状態が悪化してどうしても薬剤が必要になったときには、他の医療機関へ紹介してしまうパターンだ。
たしかに、軽症のうつ病では、抗うつ薬はプラセボ(偽薬)と比較しても有効ではないことが示されている。生活指導を中心にした、短い精神療法程度が重要なのだ。
 ところが、食欲が減って体重が急速に落ちてしまった、集中力が低下し昼までもボーッツとしていて仕事も危ない、自殺の手段まで真剣に考えている、となると、向精神薬という文明の利器の出番である。
 ここに及んで「薬に頼らない」と主張するのは、なるべくなら患者の「薬は使いたくない」という心理につけ込んでいるか、もしくは「薬に頼らない」という自分の正義感、義務感に固執・陶酔して、「患者をよくする」という本来の意味での治療が後回しになっているとしか思えない。

 わたしが見てもまともな精神科医は、「薬漬け」あるいは「薬に頼らない」といった、極端に走らない、バランスの取れた医者のことである。初診時にいきなり3種類以上の処方をされる、あるいは「薬に頼らない」を主張しすぎる医者は、要注意である。
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