ジャーナリスト志葉玲のたたかう!メルマガ ― ちょい過激に斬る社会問題・国際情勢
最近、「新聞やテレビがだらしない」という声をあちこちで聞く。報道の低俗化、ことなかれ主義の蔓延が進行していると言える。今、必要とされているのは、大局を見据え、タブーに臆せず、既存のジャーナリズムの限界を超えるべく果敢に挑戦していく「たたかうジャーナリズム」だ。本メルマガも、しがらみのないフリーランスの強みを最大限に活かす場としたい。
【著者紹介】 志葉玲
1975年東京生れ。番組制作会社を経て、'02年から、フリーランスとしての活動を開始。「戦場ジャーナリスト」として、イラクやレバノン、パレスチナ等の紛争地で最前線を取材、新聞や雑誌などに記事、テレビ局などに映像を提供してきた。環境関連も得意分野で、原発問題や自然エネルギーに関する記事を多く書いてきた。3.11の原発事故では、福島第一原発20キロ圏内の取材を敢行。イラクでの劣化ウラン取材の経験から、3.11事故後の放射能放出と人体への影響も最近の取材テーマ。
著書に『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同出版)、『ガザ通信』(青土社・写真提供)、『脱同盟時代』(かもがわ出版・鼎談に参加)、『地球が危ない!』(幻冬舎)など。
志葉玲ウェブサイト http://reishiva.jp
【サンプル】
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ジャーナリスト志葉玲のたたかう!メルマガ
ちょいカゲキに斬る社会問題・国際情勢
2011年11月15日号:Vol.142
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【今週の経済】TPPは日本経済を救うのか、滅ぼすのか???
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【今週の経済】TPPは日本経済を救うのか、滅ぼすのか???
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野田佳彦首相が、14日午前、APEC(アジア太平洋経済協力会議)
主要会議で、TPP交渉参加を表明しました。
TPP参加をめぐっては、ヒュンダイやLGなど国際市場で存在感を
増す韓国企業に対抗するために必要という産業界の主張、安価な
農産物が大量に流入し、国内農業が崩壊するという、農業関係者
らの主張が激しく対立しました。
いずれにしても、今回のTPP参加は、日本経済や社会のあり方に
大きな影響を与えうるにも関わらず、あまりにその情報が開示さ
れず、また議論が尽くされ、政府が説明責任を果たしたとは言え
ません。本日のメルマガでは、TPPについての論点や問題等を、
整理します。
○TPPとは何か?
そもそも、TPPとは何か。本メルマガ読者の皆さんならば、もう
ご存知かも知れませんが、念のため、解説いたします。
TPPとは、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific-
Partnership)の略で、経済連携協定(EPA)* の一種。TPPの場合、
加盟国の間で工業品、農業品を含む全品目の関税を撤廃し、政府
調達(国や自治体による公共事業や物品・サービスの購入など)、
知的財産権、労働規制、金融、医療サービスなどにおける全ての
非関税障壁を撤廃し自由化する、としています。
2006年にP4協定として、TPPの原型が発効した当初は、あくまで、
シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国が「域外
への経済的影響力を向上」させることを目的としたものにすぎませ
んでした。しかし、2009年に米国が参加を表明、以降、米国主導の
元に進められ、日本も同年10月、当時の菅政権が、TPP交渉への参加
方針を明らかにしました。
*EPAとは、物流や、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政
策など様々な協力や幅広い分野での連携で、両国または地域間で
の経済関係強化を目的とする条約のこと。
続きを読む
TPPに関しては、中国や韓国ほか、アジアでも参加を見合わせて
いる国々が少なくないですが、日本政府や産業界は、円高による
国際競争力低下などを理由に、TPP参加で競争力を高めたいとして
います。
政府がTPPを推進している背景には、韓国企業の躍進に日本の
産業界が神経を尖らしていることがあります。中国やインドなど
新興国では、価格の安さから、韓国車が日本車を圧倒。牙城であ
る米国市場でも、米調査会社オートデータによれば、韓国のヒュ
ンダイ自動車の今年1~6月の米国販売台数は、約56万800
0台となり、5位のホンダの60万7400台に肉薄。価格だけ
でなく、品質も向上し、日本車の強力なライバルとなっているよ
うです。また、家電韓国大手サムスンは、テレビ市場で、2006年
に当時1位だったソニーを抜いて以来、トップに居座っています。
2009年には、やはり韓国企業のLGが2位に食い込み、サムスンを
追う形に。
お家芸であるはずの自動車、家電で韓国企業に追いつかれ、或
いは追い越されている状況に、日本の産業界は強い危機感を持っ
ているのです。ですから、関税を撤廃するなど、少しでも輸出で
有利になる状況にしたい、というのが、日本の産業界の本音なの
でしょうが、だからと言って、農業等、他の産業を犠牲にしても
良いというような、姿勢はいただけません。
○TPPで日本の基盤が崩壊する???
TPPが大きな反発を招いている理由には、ただでさえ風前の灯の
日本の農業にTPPがトドメをさしかねない、ということがあるで
しょう。農林水産省の試算によれば、TPPによって関税がゼロに
なった場合、食料自給率は13%にまで低下、国土面積の1割に及ぶ
146万ヘクタールが耕作放棄地となり、350万人が職を失う、として
います。他方、TPP推進派は、「日本の農業は過保護」「農業も競争
力が必要。TPPは日本の農業改革のためのショック療法」という様な
主張をしています。しかし、実は欧米の農家こそ、莫大な政府補助
金をバックに輸出や援助物資として、国外に農産物を送り出してい
るのです。このことに関しては、鈴木宣弘・東京大学教授(農業国
際専攻)が以下のように指摘しています。
「農業所得に占める財政負担の割合は、日本の場合は平均で15.6%
しかない。一方の米国の稲作経営は、巨大な経営規模で、輸出もして
いながら、その所得の60%が財政負担である」(鈴木教授)
日本とは比べ物にならない大規模農業、かつ莫大な補助金を武器
に、米国の農産物が本格的に日本に入って来たら、日本の農家は、
太刀打ちできないでしょう。人口増加や新興国で大量の飼料を必要と
する肉食の増加していること、さらには、地球温暖化が原因と観られ
る異常気象が、世界の穀倉地帯を毎年のように襲うことからも、今後、
日本の食糧自給率を上げることは急務であり、わざわざ減らすなど、
愚の骨頂と言えるのではないでしょうか。食料生産は国の根幹を担う
ものであり、それを他国に依存することは、極めて危険だといえます。
前出の鈴木教授は、2008年の世界的な食料危機の際のハイチの例を
あげ、以下のようにその危険性を指摘します。
「ハイチでは、IMF(国際通貨基金)の融資条件として、1995年に、
米国からコメ関税の3%までの引き下げを約束させられ、コメ生産が
大幅に減?し、コメ輸入に頼る構造になっていたところに、2008年
のコメ輸出規制で、死者まで出ることになった。TPPに日本が参加
すれば、これは他人事ではなくなる」(鈴木教授)
○日本の公的保険制度や食品安全基準も崩壊か?国家主権を侵害
問題は農業だけではありません。日本の公的保険制度がTPPにより
瓦解し、米国式の「盲腸で200万円自費」という、超高額医療が持ち
込まれる可能性もあります。政府は今月7日、保険適用の診療と適用
外の自由診療を併用する「混合診療」の全面解禁について、「(今後)
議論される可能性は排除されない」との見解を明らかにしています。
これに対し、日本医師会はこれまで、混合診療が全面解禁されれば
公的医療保険制度が崩れるとして批判を強めています。
こうした懸念の背景には、TPPが国家主権を超える、非常に厄介な
「毒素条項」とも言われる制度が組み込まれる公算だからです。
これは、ISD条項(政府と投資家の紛争を処理する仲裁手続き条項)
というもので、TPP加盟国の政府は、国内企業と海外企業を同等に取り
扱う義務があり、この義務に違反したとみなした場合、海外企業は
加盟国政府を訴え、賠償金を支払わせることが可能だということです。
つまり、今後、場合によっては、米系保険会社が日本の公的保険制度
を「貿易障害」とみなして、提訴する、ということもあり得ないわけ
ではありません。いずれにせよ、米国側が、保険医療の自由化に向け
た攻勢をしかけてくる可能性は高い、と言えます。
ISD条項は、食の安全も脅かす恐れがあります。日本では、健康に
悪影響があるかもしれないとされる、遺伝子組み換え作物について、
表示が義務化されています。しかし、米国の各業界大手でつくる
「TPP推進のための米国企業連合」には、遺伝子組み換え作物の最大
手で、その経営手法や製品について、悪名の高いモンサント社が
加わっています。つまり、食品における遺伝子組み換え作物使用の
表示義務を、「貿易障壁」とみなし、攻撃してくる可能性がありま
す。
このようなISD条項における紛争を処理する機関としては、世界銀
行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)に任されるとみられて
いますが、言うまでもなく、世界銀行はIMF(国際通貨基金)と共に、
米国中心の世界経済のグローバル化を支えた機関。米国側に有利な
判断を示す可能性は否定できません。実際、やはりISD条項を持つ
北米自由貿易協定(NAFTA)下の事例で、メキシコの地元自治体が
米メタルクラッド社の産業廃棄物処理を差し止めたら、メタルク
ラッド社が (ICSID) に提訴。メキシコ政府はメタルクラッド社に
1669万ドルの賠償を支払う羽目となった、というケースがあります。
NAFTA下の事例では、他にも何件もありますが、額として大きいのは、
国会でも問題となった、米サンベルト・ウォーター社にカナダ政府
が訴えられた事例。1998年当時、カナダのブリティッシュコロンビ
ア州から、淡水を超大型タンカーで輸入しようとしたサンベルト・
ウォーター社に対し、その取引を停止したカナダ政府は、同社から
訴えられ、日本円にして105億ドル、つまり約1兆円もの損害賠償
を請求された、という事例があります。当時、カナダでは、州政府
は淡水資源の輸出に積極的だったのに対し、資源管理ができなくな
ることを危惧する連邦政府が淡水の大量輸出を禁止した、という
事情もありました。水というものは、人間が生きるうえで必要不可
欠なものですが、NAFTA下では水は「商品」とされ、資源管理をしよ
うという動きも、「貿易協定違反」として訴えられるかもしれない、
というわけです。
○国益なのか、企業益なのか?
このように、TPPへの交渉参加は非常に大きな危険性を持っている
のですが、こうしたリスクに見合うだけの経済効果はあるのか、と言
うと、甚だ疑問です。政府内閣府の試算では、TPPに参加した場合、
「今後10年でGDPが2.4~3.2兆円増加する」としていますが、昨年の
日本のGDPは、実質で、539.1兆円。上記の増加分を1年あたりに直せば、
多くても3200億円ですから、昨年のGDP比で0.059%。もはや誤差の範囲
とも言える、微々たる数字で、ハイリスク・ロー・リターンだと言わざ
るを得ません。
さらに言えば、仮にTPP参加で、日本の車、家電メーカーが潤った
としても、その利益が国民に還元されるとは限りません。例えば、
トヨタは小泉改革以後、2008年3月まで過去最高益を更新し続けまし
たが、一報で派遣切りに象徴される労働者の権利低下、赤字経営の
下請け会社の犠牲によるもの。マツダやキャノン、日産など他の大
企業でも似たような状況でした。その結果、2007年の統計で相対貧困
率*15%と、先進諸国30カ国の中でワースト6入りするという状況
まで陥りました。
*全国民の所得の中央値の半分(貧困線)より低い人の割合
また、仮にTPPに参加し、関税撤廃で、日本の輸出企業をめぐる状況
が少しばかり改善されたところで、新興国の企業が、それまでのコスト
面での有利さに加え、技術力も高めているという問題は解決しません。
今の日本の経済戦略は、遅かれ早かれ通用しなくなると観るべきでしょ
う。それならば、全く新しい技術を開発するか、輸出への過度な依存を
改め、内需拡大を目指すか、いずれにせよ、戦略の見直しは必至です。
さらに言えば、TPPだけでなく、そもそも過度な経済の自由化は、日本
だけでなく、世界の人々にとっても好ましいものではないと言えましょ
う。サムスンやLG、ヒュンダイが世界市場を席巻している一方で、韓国
では、5割を超える労働者が非正規雇用、大学を卒業したエリートですら、
就職率は非正規雇用を含めても6割程度(2009年)という、超格差社会
となっています。かつての「トヨタ栄えて国滅ぶ」というべき日本の
状況と同じ。労働者の人権や公平分配を無視した、国際競争の激化は、
結局、一部の大企業を肥え太らせるだけで、本当の意味での国益には
つながりません。
先週11日の参議院予算委員会「環太平洋パートナーシップ協定等」
集中審議で、「ISD条項について、あまり知らなかった」と白状
してしまった野田首相。リスクを充分に知らないまま、国民の生活
に重大な影響を及ぼす決断をするべきではありませんでした。今から
でもTPP参加を見直すのも、恥ずべきことではありません。日本国民
の基本的人権すらも脅かす可能性のあるTPPへの参加は、もはや憲法
違反というべきなのでしょうから。
☆「読む社会貢献」を広めていきましょう!
これまで取材、特に紛争地の中で常々感じていたのは、人々
が大変に苦しい状況にある中で、ただ写真を撮り、話を聞くだけ
で良いのか、ということでした。そこで、自分なりの社会貢献の
あり方として、本メルマガの印税から最低でも一割を毎月、環境
問題や貧困、紛争地支援などに取り組むNGO・NPO等に寄付
することにしました。
つまり、多くの読者が本メルマガを購読すればする程、より多
くの寄付を行うことができることになります。友人の方にこの
おすすめする場合に限り、記事を転送しても結構ですので、是非、
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著者:志葉 玲
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