CREATIVE DARKNESS of TAKAGISM

CREATIVE DARKNESS of TAKAGISM

  • もの作りの現場を見ることができる
  • 最新の3D制作の手法が学べる
  • 直接メールでメッセージや質問を送れる
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高木さんといえば全世界から5億以上のアクセスがあった脱出ゲーム『CRIMSON ROOM』の作者として知られていますが、あのゲームを作ろうと思ったきっかけは?

2003年だったか、当時「プラズマ」っていう3Dソフトがありまして、それが日本の販売代理店から送られてきたんですよ。プラズマはちょっと変わったインタフェースだったので、近いうちにインストールしようと思ってそのままにしてたんですけど、2004年のお正月、ヒマだったんでインストールしてみたんです。そうすると、たちまちお部屋を作ることができた。

『CRIMSON ROOM』の中に引き出しが4つ出てくるんですけど、ああいうのって実はソフトによってはすごく作りづらいんですよね。引き出しを出して、その中はまたちゃんと箱になっていて、っていうのを作ろうとすると大変なんです。プラズマはそのあたりの使い勝手がすごく良くて、ドアのヒンジとかも精密に作れるんで「おもしろい~」って思ったんですけど、それじゃただ3Dの中で遊んでるだけで。「何とかならないかなー」と思っていたら、当時僕が主に使っていたflashというソフトへの書き出しがとんでもなく美しくすぐれているということに気づいたんです。

「flashに持ち込めるようになればこっちのもんだぞ」ってことで、ドアに鍵をかけて密室を作って、それを解かないと僕のホームページに入れないっていうふうにしたんです。当時勤めていた会社は、社員が各自個人のディレクトリを持ってたんですけど、僕もそこに「TAKAGISM」っていうHPを置いてたんですね。その一番上に密室『CRIMSON ROOM』を貼ったわけです。脱出できたら僕にメールが送れる、つまりメーラーが立ち上がる仕組みも込みで。

そしたら1週間後くらいに、「.bl」っていうドメインから、「脱出したよ!」っていうメールが何通も届くようになって、調べてみたらベルギーからだったんですね。そのあと「.nd」のオランダっていうように、なぜかあのあたりから火がついて、その後英国、フランス、スペイン、ポルトガルから、どんどん「脱出した!」とかそいういうメールが来るようになったんです。もう興奮して眠れなくて。一晩で世界一周して、それが何日も何日も、ですから(笑)。

ところがそのせいで、会社のメールサーバーがパンクしてしまったんです。正月明けに、「僕は大変なものを発明したぞ」って意気揚々と出社したんですけど、こっぴどく叱られた。普段から折り合いが悪かった役員たちから呼び出されて、「もう二度と会社のサーバでもの作りはするな」って言われました。

その後、レンタルサーバに置いたりもしたんですが、アクセスが膨大すぎて、「他のサーバ契約者に迷惑がかかるからやめてください」なんて複数の会社から言われてしまったりして。もう仕方ないのかなって思ってたんですが、貿易商をしている知り合いが、仲間を募ってファンドを作ってお金を集めて、サーバーを作ってくれたんですよ。まわりの協力を得て復活できたんです。

高木敏光さん

「TAKAGISM」というネーミングの由来を教えてくださいますか?

ありがたい質問ですね。そんな「ISM」はないだろうと、すごく恥ずかしいんだけど(笑)、『CRIMSON ROOM』を作った会社員時代、僕はすごく恵まれていて、キャラクターやアニメを作ると、営業の人は「よしわかった!」って言ってそれを売ってきてくれたんです。その時に、なんか暖簾があったほうがいいだろうってことで、営業マンが勝手に申請したのがTAKAGISMだったんです。独立した時は新しい社名なんかも考えたんですけど、TAKAGISMでやることに決めました。

では、メルマガのタイトル『CREATIVE DARKNESS of TAKAGISM』はどこから来てるのですか?

フランシス・フォード・コッポラ監督が『地獄の黙示録』っていう映画を撮った時のフィリピンロケを、当時関係が冷め切っていたと言われている奥さんのエレノア・コッポラが撮ったという記録映画があるんですよ。それが『ハート・オブ・ダークネス』、“心の闇”とでもいうんでしょうかね。

『地獄の黙示録』は傑作だといわれているけど、僕は『ハート・オブ・ダークネス』のほうがずっとずっとおもしろかったんですよ。完結した『地獄の黙示録』を観ると、「コッポラは巨匠だ!」というふうに言われるけど、それができる過程はめちゃくちゃなんですよ。何日もかけて作ったセットが大嵐が来て一瞬で飛ばされてもう一回作ったり、大幅に予算がオーバーしたからここでやめないと訴えると言われたり。それをエレノアが淡々と撮っている。それを観た時から、「ダークネス」っていう言葉が僕の中に残っていたんです。

出来上がった作品は明るく楽しいのに越したことはないんだけど、自分自身、過去を振り返ると、けっこう明るい気分の時にちょっとブラックなムービーを作ったり、すごく落ち込んだ気分の時に、人から見たらおちゃらけた明るいものを作ってたことが多いなと思ったのも、「ダークネス」とした理由ですね。

ものを作るのは人を喜ばせるためなんだから、まず自分が楽しまなくちゃという理論もあると思うんですけど、それよりはね、誰でも自分の中の闇とか恥とか傷とかがあるでしょ、と。それをそのまま出すと“痛い”ものになっちゃうかもしれないけど、それを燃料にすれば誰でもものは作れるんだよというメッセージも込めてみたつもりです。

深いですね……。ストレスもたまるのではと思うのですが、解消法はありますか?

うまくまとめるようで悪いんだけど(笑)、ものを作ることですね。今僕は、幸い自分の作りたいものを作れて、しかもそれをメルマガを通して人に伝えることができるじゃないですか。なので、非常に気持ちがいいんです。

僕もやっぱり、先のこととかを考えるといたたまれないくらい不安になって発狂しそうになるようなこともしばしばあるんです。そういう期間も長くあったんですけど、その時は何も作ってない、何も書いてないってことに気がついて、それでもの作りを始めたんです。

今はカエルちゃんシリーズっていうのを作ってるんですけど、たとえばカエルの色を紫にしてみたらどうだろうとか、赤くしてみようとか、作るたびに色を変えたりしてるんです。そんな「今、まさに人に伝える寸前」っていう時がめちゃくちゃ気持ちいいですね。

メルマガの場合は、「こうやって作ったよ」っていうのを画と文字で見せられるわけじゃないですか。ささやかながら反応とか質問とか既にいただいているんですが、そうすると使命感じゃないですけど、「やらなきゃ」って気持ちが湧いてくるんですね。発表の場所もなくやってたりすると、続かないっていうか、「何やってるんだろう」って思う瞬間もあると思います。でも今はそういう意味では逃げようのない、いい場所を与えてもらったなとも思っています。

では、高木さんがメルマガを出そうと思ったきっかけを教えてください。

僕は本を書いたりするのが好きなんですけど、初めは、書評みたいな、読んだ本の感想文みたいなメルマガを考えていたんです。だけどそんなものをやったってプロの書評家になれるわけでもないし、それよりももっと自分が人の役に立てることはないかって考えた時に、やはり基本のインタラクティブメディアだなって思ったんです。

自分のメディアっていうのは普通はないんですよね。9.11の時にはブログがジャーナリストたちの発信の場だったことはありましたよね。それから食べ歩きや芸能人のブログが出てきて、いい意味でも悪い意味でも平たくなってしまった。

一方ソーシャルネットワークでは、twitterは文字数が限られているし、うかつなことを言うと炎上することもありますし、facebookっていうのは実名性は保たれているけど、一部のトップクラスの人を除いてはそんなに多くの人と繋がれないと思うんです。それに加えて反応がすぐに来ますから気をつかいながら書く事になるし、無駄球も打たなきゃいけないし。

メルマガは、今のところですけどよほどの無責任な嘘記事や誹謗中傷でない限り、facebookよりも自由度は高いと思うんですよ。しかも有料メールマガジンって、しかるべき値段でそれを購読してもらうことって、責任もあるけれども読む人も好きで読んでくれてるわけですから、自分で出版社一個持ってるのと近いですよね。

高木敏光さん

最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

僕も、手を抜かず、すごく一生懸命にやりますから、ぜひとも購読して熟読してください。そうすれば絶対にクリエイターになることができます!

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高木敏光さんプロフィール

早稲田大学文学部美術専修卒業後、翻訳会社勤務を経て、《マルチメディア・クリエイター》への道へ。2004年に発表した密室脱出ゲーム『CRIMSON ROOM(クリムゾン・ルーム)』は世界から5億余りのアクセスを得た。

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