新米サバデル会長のリアルサカツク日記

新米サバデル会長のリアルサカツク日記

  • スペインのプロサッカーチームをサポートできる
  • スペインサッカーリーグの最新情報を知ることができる
  • 直接メールでメッセージや質問を送れる
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

坂本さんは日本人初のスペインサッカーリーグチームの会長となられたわけですが、どのような経緯で就任されたのですか?

はじめはFCバルセロナ(以下バルサ)やレアル・マドリード(以下レアル)が日本で行うスクールやキャンプのお手伝いというところから始めました。

自分自身、学生時代はバスケットボール、社会人になってからはサーフィンやゴルフ、格闘技といったスポーツをやっていたということもあって、なんとなくそういった分野で人のために何かしたい、サポートしていきたいという気持ちはずっと持ち続けていました。ただ、その“興味の対象”に出会えてなかったんですね。

ところが自分が取り組んでいた通信の仕事が一段落ついて何か新しいことにチャレンジしたいと思っていた時に、ちょうど友人の友人という方からスペインのサッカーチームの日本での活動に関する相談を受けたんです。サッカーに関しては専門外で、知らないスポーツで何ができるかわからないけれど、バルサだレアルだって聞いた時の子どもたちの目の輝きを見て、「この分野で何かお手伝いできるところがあればやってもいいんじゃないか」と思ったんですね。

もうひとつ、僕はそれまでアメリカやアジアを相手に仕事をしてきたんですが、ヨーロッパとはやったことがなかったんです。当然スポーツにビジネスとして関与したこともありませんでしたので、そういう意味ではこれまでとはまったく違ったチャレンジになる、挑戦できるなと思って、ヨーロッパサッカーに関わるようになりました。

そういった経緯で関わるようになったんですが、子どもたちや親御さんからすごく感謝されるんですよね。これ、言っていいかどうかわからないんですけど(笑)、それまでの通信の仕事で「ありがとう」なんて言われたことなかったんですよ。できて当たり前の世界ですから。実名は伏せますが(笑)、聞けば誰でも知っている超大手の通信会社をお客さんにして、大きなシステムを受注させていただいてお金をたくさんいただいて、それはお互いハッピーハッピーなんですけど、「これやってくれてありがとう!」なんて言われるのはなかったわけです。

それが、サッカーのスクールやキャンプをすると、参加してくれた子どもたちも親御さんも、「よくうちの町に来てくれた、ありがとう」ってものすごくニコニコして帰っていってくれる。「え、こんなにありがとうなんて言われる仕事があるんだ」って感動しました。その時に、みんなから感謝されていいものをいただける仕事を継続できたら素晴らしいなと思いました。

ところが、です。バルサやレアルに限らず、そういうプログラムって全部小学生までで終わりなんですよ。でも、子どもたちや親御さんの希望っていうのは「ヨーロッパでプロになりたい」というもので、その夢のために高いお金を払って一生懸命「目に留まらないかな」と思ってやってくるんです。にもかかわらず、中学生になった時にはプログラムがないんですよね。そこでどんな連中が出てくるかというと、ブローカー屋さんとか留学屋さんです。彼らは「俺、誰々知ってるから留学させてあげるよ、じゃあ手数料はいくらね」って近づいてくるんですが、その留学先は単なる町クラブなんですね。それこそ品川とか江戸川とかのなんとかホークスやシャークスっていうようなところで、はっきり言えばそんなとこに留学してどうするの、というレベル。バルサやレアルのキャンプに入ったのに、その次が町クラブに留学させられるなんてプログラムは詐欺じゃないですか。そういうことに気がつきました。

じゃあ、自分たちが留学屋と一体何が違うのか。そこを徹底的にきちんと考えないと、僕らがやっていることもウソになってしまいます。「小学生は入り口ですよ、あなたたちの夢はその先もちゃんとサポートします」って言えることがコアバリューになるんじゃないのか、それをどうやって出すかと考えている中で、たまたま「CEサバデル(以下サバデル)っていうスペインの2部リーグのチームが財政難なので買ってくれないか」っていう話が来たわけですよ。最初に聞いた時は「そんなことできるわけないじゃん」と思いはしたのですが、「このチャレンジは今でこそ自分たちだけのものだけど、これがもっと日本でサッカーをやっている人みんなのチャレンジになればいい」と思うようになり、それなら一番先頭を走ってもいいかな、と。これがサバデルっていうチームを買収して会長に就任した経緯です。

なるほど、では留学した子はサバデルに行くわけですね。

そうです。プロになるには15歳~18歳の間が勝負だって言われてますけど、その前の段階、11歳~12歳のスペインに行ってもらって、環境育成という段階を踏んでもらいます。15歳~18歳の間に本気でサッカーに取り組む「スポーツ育成」の前段階を僕らは「環境育成」と呼んでいるんですが、これはむこうの環境に慣れるための時間ですね。言葉、生活習慣、文化に慣れるっていう。「なんでスペイン人はこんなことでキレるのか」とか「ここまでやっても怒らないんだな」とか「親とかまわりの人はここまで野次るんだな」とか(笑)。そういうことを3年かけて覚えれば、次は本気でサッカーで戦うことができるようになるんじゃないかと思うんですね。

坂本圭介さん

細かい話なんですが、学校などはどうなっているんですか?

僕らは子どもをホームステイさせるんですよ。というのは、公立学校か許認可を受けた私立学校に通わせるためには、スペインでの身元引受人をきちんと定めて戸籍を作らなければいけないからです。

なぜ公立学校か許認可を受けた私立学校に入れなければいけないかというと、たとえば語学学校だと専門学校扱いになり、サッカー協会からするとそれは「学校に行っていない不良の子ども」ということになってしまうんです。なので、協会にちゃんと登録してサッカーをするためには公立学校か許認可を受けた私立学校に通わせるしかないというわけなんですね。

ホームステイの受け入れ先の家庭は、サバデルでプレーしている選手だったりクラブの役員だったり、子どもをサバデルに通わせている親御さんであったり。そこに登録させてもらって学校に通います。きちんとスペインの家庭の中に入るので、まあ一流の教育とは言えないかもしれませんがちゃんとした義務教育を受ける事ができます。その上でまだ足りなかったとしても、補修プログラムもあるので心配ありません。

今はサバデルに日本人選手は何人いるのですか?

トップチームを入れて7人います。ナイキチャレンジで注目された木下稜介くんもBチームにいるんですけど、彼もホームステイです。18歳の大人なんですけど、うちのスタッフの家に住まわせてもらっているんで何も心配することはない状況です。

坂本圭介さん

そうなんですね。では坂本さんがスペインで会長になって一番大変だったことはなんですか?

常に大変ですけど(笑)、文化の違いですよね、やっぱり。「~~をしてください」っていう言葉はひとつですけど、解釈が違うんです。解釈が違うことによって、「なんでやってないの?」みたいなことはたくさんありますね。

日本人同士だったら同じ文化の中で同じように教育を受けてきているので、たとえば「1週間後に試験がありますよ」と伝えれば「だから勉強しろ」とはふつう言いませんよね。「そんなことは言わなくてもわかってるよね?」ということになるはずです。ところがスペインの人は違う。当日なんとかなると思っているんです(笑)。

さらに、こっちはちゃんと100点取ってくださいって言ってるのに、「いや、1回目は20点でいいんじゃないですか? 5回目10回目で100点に持っていくように僕らやるんで」みたいなことを言う(笑)。「いやいや、あらかじめいついつに試験があるって伝えているのは、最初から100点取るために準備してください、計画を立ててくださいということじゃないですか。その上で20点しか取れなかったら修正をかけなければいけませんよね?」と言っても、「最終的に100点は取れますよ、だって俺たちそうやってきたから」って返ってくる(笑)。もう、すごいですよ。

あとは、そうですね、昨年末サバデルは19位と降格圏にいたんですけど、スペイン人スタッフに「降格しないためにはどうしたらいいんだ」って聞くと「監督もヘッドコーチもクビにすれば選手もピリッとしてまた勝つようになる」って言うんですよ。でもね、それぞれと2年契約してるんです。ということは途中でクビにしても2年分は支払わなければいけないんですよ。さらに新しい監督のお金はどうするのとか、次に考えなければいけないことはまったく抜けている。それでも「やらなきゃ降格する」と言い張るので、僕は「わかった、でもまずは監督だけでいいんじゃないか、ヘッドコーチを監督に昇格させれば」と言ったら、返ってきた言葉が「それじゃインパクトが足りない」って(笑)。「お前サッカー知らないんだろ? 残留させたいんだったら黙って二人ともクビだ、それで新しい監督を俺に選ばせろ」って言うわけですよ。でもそれ、えーって話じゃないですか。これは一例ですけど、多々あるんですよこういうことが。

メルマガの原稿などを読ませていただきましたが、血みどろになりそうなやり取りなどもあって面白いですよね。

そりゃそうですよ、だってこっちは何億もぶっこんでますからね。あいつらの口車には絶対に乗せられない、負けないって(笑)。

坂本さんご自身は現地ではどのように受け止められているのでしょうか?

「こいつバカじゃないの、変わった外人が!」って思われてます。名物ですよ、本当に(笑)。テレビの取材なんかもたくさん受けるんですけど、「まずは2~3年で1部に行く、その次の目標は、バルサ、レアルの次にサバデルって言ってもらえるようなクラブになる」ってバンバン吹いてますからね。「こいつ頭おかしいんじゃないか」って思われてます(笑)。

では、最後に読者の方にメッセージをお願いします。

僕らとしては残留を決めるために、もしくはプレーオフに行くために、そして来年につなげるために、という三つの視点からチームを運営していかなければならないし、それをやるためにはたとえばソシオの加入人数があとどれくらい必要ですとかアイディアをくださいだとか、読者の方といろんなやり取りができるのかなと思っています。だから“リアルサカつく“です(笑)。一緒にサカつくやりませんか?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

坂本圭介さんプロフィール

1968年大阪府生まれ。大阪市立大学工学部卒業後、日立系商社、ノーザンテレコムなどを経て独立。34歳の時にスタレントネットワークス日本法人の社長に就任する。同社がシスコシステムズに買収されたのを機に退任。その後、サッカービジネスに進出し、育成事業などを手掛ける。2012年、スペインサッカーリーグ2部のCEサバデルを買収しオーナーに就任。

  • 対談
  • ジャーナリズム
  • ビジネス・経済
  • エンタテインメント
  • ライフ
  • スポーツ