東北まぐ13号 2012年8月
星空を彩る花火が、東北の海山にこだまします。盛夏を迎えた東北沿岸のいまを伝える
東北まぐ
「復興屋台村」の浮き球 / 宮城県気仙沼市
はじめに

 遠くから、夕刻を伝える赤とんぼのメロディーが聞こえてきました。集団下校の子供たちが、建物の土台しか残っていないかつての市街地をトコトコと歩いています。揺れるリュックサックの向こうに、プレハブの仮設住宅が見えてきました。ゆうげのおいしそうな匂いに、子供たちの足が早まります。「ただいまぁ!」と響くこえに、犬の鳴き声と「おかえり」のこだまが。
 茶の間に流れるニュースから、東北の映像を見る機会は減りましたが、現実離れした環境をたくましく暮らす人々の営みは変わらず続いています。日々、移り変わる東北のいまを伝えるためにスタートした「東北まぐ」は、いよいよ2シーズン目を迎えます。みなさまが東北に足を運ぶきっかけとなることを願って。「東北まぐ」第13号をお届け致します。

行ってきました!東北

~北上川、黄金のヨシ原からの復活!「熊谷産業」~

行ってきました!東北
オランダの茅葺き職人の指導で、3週間で完成した新社屋
行ってきました!東北
白浜地区の復興住宅から追波湾を臨む
行ってきました!東北
仮事務所前で事務スタッフの皆さん
行ってきました!東北
震災後、3分の1に減った北上川のヨシ原

 整然と重ねられ、刈り揃えられた茅の断面が、美しい壁の模様を作り出している。去年10月に完成した、石巻市北上町にある熊谷産業の社屋兼倉庫だ。社長の熊谷秋雄さん(47)は、「ここは津波で柱だけ残ったの。建て直す時に壁を茅葺きにし始めたら、近所の人から『何だか熊谷の社長、頭おかしくなったぞ』って言われたよ」と笑いながら、中を案内してくれた。壁の茅葺きは日本では珍しいが、オランダでは一般的なのだそうだ。
 近くを流れる北上川沿いには、日本最大級のヨシ原が広がっている。ヨシの高さは2~3メートル。熊谷産業ではこのヨシを使い、平泉・中尊寺や金沢・兼六園を始め、全国から茅葺き屋根工事を請け負ってきた。しかしこの地震で、川の堤防近くにあった事務所、重機、車、そして生まれ育った家が、川を遡った津波に飲みこまれてしまった。
 そこからの熊谷さんの行動は、速かった。被災した古民家の修復工事と並行して、震災3ヶ月後には「『復興住宅』プロジェクト」を立ち上げた。「『仮設』の家作るのに金かけて、壊すのにも金かかるなんてもったいない。残るのはまた瓦礫だよ」工学院大学の支援を受け、町の高台に建てた木造住宅は11棟。使われているのは宮城県産の木材、施工したのは地元の大工職人だ。安く抑えた家賃で、ふもとの浜から避難した住民に貸している。集落からは、北上川が注ぎ込む穏やかな海を臨むことが出来る。
 さらに熊谷さんのアイデアは止まらない。なんと先月、北海道から馬3頭と馬車を取り寄せた。子供達が馬と触れ合って、自然を学ぶ「学校」を作るためだ。NPO「りあすの森」も設立した。「だってあんなにたくさん子供死んじゃったんだもの。学校作んなきゃだめだ。この町から海見てさ、『世界に出てこう』て思うような子供育てないと」
 津波と地盤沈下で一時は生息が危ぶまれた北上のヨシだが、無事昨冬も収穫が出来た。土を盛り直せば、数年で元に戻るという。ヨシの生命力と熊谷さんの行動力。北上川の黄金のヨシ原で、復活への東北魂が輝いている。

(平沼敦子)

Information
熊谷産業
http://www.kayabukiyane.com/
村づくりNPO りあすの森
http://www.riasnomori.jp/

行ってきました!東北

“福興”バスツアー乗車体験記~前編~

 岩手県を中心に運行するバス会社「岩手県北バス」。その観光バスツアーを企画運営する「岩手県北観光」が、この春から、とある日帰りバスプランをスタートしました。タイトルは「被災地“福興”支援ツアー」。どんなツアーなのか、企画した営業企画部長の相馬高広さんにお話をお伺いしました。岩手県北バスはこれまで、ボランティアツアーなど運行してきましたが、震災から1年を経て、今度はボランティアでは無く、復興に向けて「応援」するツアーを行おうと考え企画。そして震災を忘れないで、学ぶ為に実際に被災地を見てほしいという思いだそうです。バスは盛岡発で日帰り。いくつかコースが選べ、マイカーを持たない人にも好評なのだそうです。早速、福興ツアー「みやこ浄土ヶ浜遊覧船と大槌・語り部の津波体験講話」(8000円)に乗車しました。
 朝8時30分出発。乗車していたのは15名ほど。盛岡からの方がほとんどで、他には東京、遠くは徳島からというお客さんもいます。ガイドを務める戸草内絵梨奈さんが盛岡市内の歴史、石割桜などの名所を案内します。国道109号線を2時間かけて、沿岸部、宮古に到着。まずは今年4月に定期運行が復活したばかりの浄土ヶ浜遊覧船に乗り込みます。国の天然記念物にも指定された「ローソク岩」や「潮吹岩」の美しい海岸線を海から眺める遊覧船。震災前3隻あった船ですが、なんとか残った1隻で運行。マリンスタイルのガイドさんが、絶景を案内してくれます。震災から復活までの物語、そして今も変わらず美しい海岸線、そして船を追うウミネコの姿に、みんなが笑顔になります。
 船を出て、続いては東北まぐ2月号でもご紹介した山田町の「復興かき小屋」へ。この季節カキ漁は無いので、海鮮バーベキューの昼食となります。バスは宮古市から山田町までの三陸沿岸を走行。仮設住宅の現状や交通事情などの様子も、地元のガイドさんらしく細やかな情報を伝えてくれるのも特徴です。
 この後は大槌町の案内です。続きは来月号でお伝えします。

行ってきました!東北
バスツアーを企画した相馬高広さん
行ってきました!東北
一路、バスは内陸部から沿岸部へと進みます
行ってきました!東北
ガイドさんのトークが楽しい 浄土ヶ浜遊覧船

Information
株式会社岩手県北観光
http://www.kenpokukanko.co.jp/

行ってきました!東北

今できることをやるだけ!「マルトヨ食品」

行ってきました!東北

再開当初は乾燥機も動かず、天日干しでさんまを干した

 「屋上にあがってみませんか?」マルトヨ食品の清水浩司さんに促されて登った鉄筋社屋の屋上からは、気仙沼の鹿折地区が一望できました。眼下に広がる土色の原っぱと座礁した漁船の姿は、震災後に生まれた光景です。「生まれてから何十年も、ここに街があるのが当たり前だったのに、いまはこの光景に慣れてしまいましたね」焼け焦げた柱の骨組みだけ残っている薬局跡地の向こうを、宅配便のトラックが走っています。
 昭和27年の創業のマルトヨ食品は、ここ気仙沼で揚がるさんまや地産の魚を使い、みりん干しや一夜干し製造を手がけてきました。頭から尾尻まで丸ごと食べられると評判のさんまの薫製「さんまくん」は、農林水産大臣賞や天皇杯を受賞。地元のみならず全国に知られる人気商品として、多くのファンに愛されてきました。

行ってきました!東北
「再建なんてまだ先の話。とにかく、今できることやるだけ!」と取締役の清水浩司さん
行ってきました!東北
人気商品の「さんま南蛮漬け」は、4尾も入って350円

Information
マルトヨ食品
〒988-0007 宮城県気仙沼市中みなと町131
TEL 0226-22-2058
https://www.facebook.com/
marutoyo.kesennuma

http://www.musicsecurities.com/blog/
community_news.php?st=cal&bl=120&cg=36


「セキュリテ」被災地応援ファンド
http://oen.securite.jp/

 震災後、同社の工場は建屋が残ったもの、中の設備は津波になぎ倒され厚いへ泥をかぶっていました。「目も当てられなかったし、復旧は厳しいなと直感した」という清水さん。しかしながら、泥を掻き出しがれきを片付けている間に、いつしか復旧が当面の目標となり、この年の秋には冷蔵設備の試運転を再開しました。清水さんに復旧のターニングポイントをたずねると「明確な計画なんてなかったですよ。完全な見切り発車でした」と手のひらを左右に振りながら破顔します。実際に、壊れた生産設備を入れ替える為の資金の目処は立っておらず、前途多難な状況。
 しかし「気仙沼を離れるつもりはなかった」という清水さんの思いが糧となり、この年の暮れには原料のさんまを隣の大船渡の市場で調達し、乾燥設備を使わず屋上の天日干しで「みりん干し」の生産に着手しました。
 現在マルトヨ食品は、民間のファンド(セキュリテ被災地応援ファンド)の支援を受け、本格的な設備の改修をすすめています。「いざ走り始めると、たくさんの問題が見えてきた」という清水さん。「かつての得意先が廃業していたり、大手流通店舗にあった自社の販売スペースがなくなっており、売り先が激減していた」そうです。状況は想像以上で、根本的な販路の再構築に一から取り組まざるを得ませんでした。試行錯誤の中でFacebookや県外の直売会に足を運び、これまでになかった「顔の見えるお客さん」との繋がりを広げ、あたらしい商品の開発と販売ルートを開拓しています。
 清水さんは、屋上から草原のようになった鹿折地区を見渡しつつ「状況は厳しいけど、再建の判断は間違ってなかったとおもう」と、笑顔を見せます。「日々迷いながら、試行錯誤で進んでいく。かっこいい再建ストーリーなんてうちにはないけど、もう一度うまい魚をお客さんに届けたい。ただそれだけですよ」遥か彼方に見える海からの潮風が、清水さんを後押しするように背中に吹きつけています。(岸田浩和)

行ってきました!東北

癒しが詰まった空間・「いわ井」

 陸前高田の国道340号線沿いに立つ、仮設商店街「栃ヶ沢ベース」。ここに、生活の必需品である器、鮮やかな色彩の和雑貨の数々、そして岩手の美味しい水や米で出来た地酒を販売する「いわ井」というお店があります。
 十二代続く老舗。もともとは陸前高田の中心部にて営業。日本全国で昔ながらの商店街は苦戦していますが、ご主人の磐井正篤さんは、奥さんデザインによる「チラシ」でお店の商品をアピール。商品の薀蓄や説明を手作りの絵で紹介したチラシは人気となり、全国の業界紙でも紹介されたほどでした。
 しかし、被災。商いをする気力がなくなった磐井さんは、一時は商売を諦めようと思いました。しかし、お客さんが少しでも商品を観て楽しみ、安らぎ気持ちになってほしいという思いから、今年の春に復活。仮設でありながらも、照明や什器にこだわり、癒しを感じる素敵なお店が誕生しました。
 店内には、地元の陶芸家の作品が並んでいます。地元陸前高田に生まれた陶芸家・佐藤リキ子さんによる季仙窯の器。盛られた食材がすべて華やかになりそうな色彩であり、生きる力強さすら感じます。
 他にも、一関の岩田ゆりさんの器も、女性に愛されそうな、かわいらしいデザイン。また、全国的にも名の知れた大工集団が集う気仙大工職人の命のともいえる「墨壺」(木材に線を引くための道具)を使った手作りアクセサリーや、「のみ」をあしらったキーホルダーも人気です。
 陶器だけではなく、絵葉書も売られています。アトリエが津波で流失し、一時は作品の在処が不明となりましたが、奇跡的に残っていた絵葉書を販売している鷺悦太郎さんの素晴らしい絵は必見です。
 奇跡の一本松の松ぼっくりをデザインしたネックレスも美しく輝いています。
 そして、もともと陸前高田で作られていましたが、8月に大船渡で新たな工場を完成させ、見事復活を遂げる地酒の「酔仙」も豊富に並んでいます。
 今でも憩いの場所になっている「いわ井」さん。目と心の癒しが詰まっているお店です。

行ってきました!東北
十二代目の御主人 磐井正篤さん
行ってきました!東北
落ち着いた雰囲気の店内
行ってきました!東北
色とりどりの和雑貨の数々

Information
器・和雑貨・地酒 いわ井
http://www.i-wa-i.jp/
セキュリテ被災地応援ファンド
http://oen.securite.jp/

今月のお取り寄せ
今月のお取り寄せ
作り方もパッケージに書いてあるので
お料理が苦手な人でも安心です。
盛岡冷麺スペシャル2食セット1300円

今月のお取り寄せ
具材もセットになっているので手間いらず。

ゴチまぐ!編集部
      イチオシの理由は?

 今回ご紹介するのはわんこそば、じゃじゃ麺などと並び、岩手の3大麺と称される盛岡の名産、「盛岡冷麺」です。中でもこの「ぴょんぴょん舎」は焼肉・冷麺のお店としてかなりの有名店。関東にも出店しているので知っている人も多いのではないでしょうか。
 この盛岡冷麺スペシャルセットは、麺やスープはもちろん、キムチやキュウリの甘酢漬、牛味付肉、ゆで卵、お酢、ゴマまでもがセットになった商品。お店の味を家庭でも再現できるのが魅力です。
 牛肉や牛骨をベースに、鶏ガラでひいた出汁が利いたスープは、サッパリとしているのにコクはあるのが特徴。ツルツルとした滑らかな舌触りの麺はしっかりとしたコシもあります。キムチの辛味にキュウリの甘酢漬けの酸味、時折感じるゴマのプチプチとした感触と香ばしい香りも良いアクセントになっています。
 まさに暑い夏にぴったり。食欲が無くなるこの時期だからこそオススメしたい逸品です。

Information ご注文はこちら↓
ぴょんぴょん舎オンラインショップ
https://store.pyonpyonsya.co.jp/
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【東北まぐ】 2012/08/11号 (毎月11日発行) ツイートする
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編集 寺坂直毅 岸田浩和 梅澤恵利子
ゴチまぐ 関 裕作
スタッフ 野瀬紗也佳

発行元 :株式会社まぐまぐ
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配送技術:株式会社アットウェア http://www.atware.co.jp/

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