東北まぐ21号 2013年4月
地元ラジオの使命、信頼を得る多国籍ボランティアの覚悟、まちの新潮流、地酒を飲むなら…東北のいまをお届けします
東北まぐ
これから桜の季節を迎える日和山公園(宮城県石巻市)
はじめに
 みなさんが毎月11日に思い出す「震災」という過去の出来事は、私たちにとっては今も続く「日常」です--宮城県沿岸のまちの校庭で出会った青年の言葉です。2年と1ヶ月のあいだ、1日も終わることなく続く震災の日々。それでも、薄紙が重なるように訪れる微かな変化がたぐり寄せる未来を確信し、この地に生きる人々はあきらめることなく進んでいます。

 日和山公園の桜が彼らを鼓舞するかのように、今年も咲ほこる季節。

 みなさまが東北に足を運ぶきっかけとなることを願って。東北まぐ、第21号をお届けします。
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いま必要なもの
「継続」が産んだ、多国籍ボランティアの信頼
いま必要なもの
住人に言葉をかけ、コミュニケーションを図るWade Reedさん
いま必要なもの
南相馬市の全ての仮設住宅を対象に、月二回のペースで巡回している。

いま必要なもの
現在は、現地の状況も考慮しながら、新鮮な野菜と安全な水を配布している。

いま必要なもの
現場リーダーを務めるフィリップ・ダンカンさん

いま必要なもの
彼らが届けるのは、物資と「我々は、南相馬の人たちを忘れていない」というメッセージ。

Information
セーブ南相馬プロジェクト
HP:http://www.saveminamisoma.org/
Facebook:https://www.facebook.com/
SaveMinamisomaProject
   駐車場に滑り込んだ4トントラックが停車すると、間もなく数人のスタッフが小走りでやってきました。荷台に上がったマイケル・マーティンさんが「これ、重いから気をつけて下さいね!」と流暢な日本語でサツマイモの入った段ボール箱をスタッフの山本新さんへ手渡します。
 物珍しそうに集まってきた仮設住宅の子どもたち。カナダ出身で東京でデザイナーをしているシェマ・エイミーさんが、子どもたちの前に歩み寄り、中腰になって「こんにちは」と声を掛けハイタッチの仕草をします。少し驚いた表情の子どもたちは、瞬く間に笑顔に変わり二本の腕を精一杯頭上にあげてタッチを返してきました。

 この日、セーブ南相馬プロジェクトのメンバーがやって来たのは、 福島第一原発から二十数kmに位置する、福島県南相馬市の仮設住宅です。震災から約二年間、2週間に一度のペースで南相馬を訪れ、すべての仮設住宅を巡回しながら飲料水と新鮮な野菜の支援をつづけています。活動のスタートは、震災2ヶ月後でした。東京在住のアメリカ人オーガスト・ハーゲスハイマーさんが、Facebookを使って福島県南相馬市への支援を呼びかけた事がはじまりでした。オーガストさんは、原発事故の影響で物流が途絶えていた南相馬市の状況を知り、物資の支援を計画。「市役所や避難所には全国から支援物資が寄せられていましたが、避難所の外に住む人達には必要なものが届いていなかった」と当時を振り返ります。オーガストさんの活動に賛同した日本在住の外国人、日本人、東北や地元南相馬のメンバーが全国から集り活動が続いています。
 また、東京では活動紹介と支援を呼びかけるためのチャリティー・パーティーを定期的に開催。集まった支援金は全額、現地に届けられる物資の購入に当てられています。多くのボランティア団体の活動が終息を迎える中、セーブ南相馬プロジェクトの活動は44回を数え、今後も継続する予定です。
 今日、配布を行っている仮設住宅では、プロジェクトのメンバーが、住民一人一人に物資を手渡ししていました。もう一人のメンバーが、持ちきれない物資を持って必ずお宅の玄関先まで一緒に運んで行きます。原発近くの浪江町から避難してきたという70歳になるおばあちゃんが、サツマイモの入った箱を抱えるマイケルさんにしきりに話しかけています。「温かくなったら、ここに花を植えようと思ってねぇ」とおばあちゃん。彼女が指差した先には、駐車場脇の小さな花壇でした。帰り際、おばあちゃんが涙目になり「ありがとう。遠くから来てくれてうれしいよ」と感謝の言葉を投げかけると、マイケルさんは「また来ますから。体を大切に」と笑顔で返します。

 現場リーダーのフィリップダンカンさんは、「ほかの被災地は、時間とともに復旧が進んでいますが、原発周辺ではいつ帰宅出来るかわからない状況。多くの住民が、先の見えない不安を感じている」といいます。「物資だけでなく、"忘れない"という思いも届けたい」とダンカンさん。一貫して南相馬の支援をつづける彼らの姿勢は、言葉を越えた意志となって、住民を勇気づけています。(岸田浩和)

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行って来ました東北!
宮城県内をレポートする「ラジオカー」とは?
行って来ました東北
山元いちご農園でのレポート
 宮城県のAMラジオ局「TBCラジオ」にで、毎週土曜10:30~14:30に放送されている人気番組「それいけミミゾー」。前回、車で県内を巡りレポートする「ラジオカー」のコーナーを取材しました。レポーターは関西出身の芸人・ムーディ勝山さんです。前回ご紹介した、荒浜漁港のレポートの後に訪れたのは、山元町「山元いちご農園」。震災により、イチゴのビニールハウスは津波で流されてしまいましたが、今年の2月から復活。5月いっぱいまで、いちご狩りを体験できます。生放送でムーディさんはいちごを試食。「う~ん、みずみずしい!」。今年は甘みが凝縮された素晴らしいいちごが完成したそうです。
 このコーナーが宮城県の皆さんに愛される秘密はなんなのか?演出するTBC・橘田久ディレクターにお話を伺いました。
 宮城県のラジオ局の役目は、「日常を楽しく元気に伝えること」。東北以外に住んでいる人は様々な感情が芽生えようと、東北の皆さんにとってはどの生活も「日常」です。
 ほぼ隔週のペースでラジオカーは沿岸部に行くそうです。ムーディさんがレポートするのは、復興への動きはもちろんですが、何よりも「日常の面白さ」。普通の光景、普通の生活をありのままに伝えてます。
 取材した日の放送では、ムーディさんが山元町の中学校でリポート。しかし、ラジオから聞こえるのは、ムーディさんと中学生の何気ない雑談。通常アナウンサーやレポーターだと、話をまとめるのが掟。しかしムーディさんのレポートは、楽しい雑談で終わるのです。「その場のありのままの様子を伝えるのが、ラジオの良さなんです。そんな日常を伝える事が大事なんです」と橘田さんは話します。スタート前は、震災を経験していない人がレポートするのはいいのだろうか?というのが大きな懸案でした。沿岸地域に行き、仮設住宅や復興商店街に行く。しかし、ムーディさんはどんな場所であろうが、全力でレポートし、全力で会話するし、全力でボケる。その様子を宮城県民の人は皆愛して聞いてくださっているのではないかと仰います。
 ラジオはむき出しのメディアなので、人間性がすべて出てしまうといいます。全力のレポートをするムーディさんのレポートで、みな、心が温まります。生放送中、農園の沿道を走る乗用車やトラックが、皆クラクションを鳴らします。窓を開けて「ムーディ!!」と叫ぶ人も。ラジオを聴いて反応しているのです。(寺坂直毅)
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  行って来ました東北
「それいけミミゾー」ラジオカー

行って来ました東北
これから熟す新鮮な山元町のいちご

行って来ました東北
TBC東北放送・橘田 久さん

Information
TBCラジオ
http://www.tbc-sendai.co.jp/
周波数 仙台1260kHz
 
東北だより
石巻から生まれる、3年目の潮流
東北だより
石巻マルシェに設置された水盆の前で手を合わせる市民
 
東北だより
「3・9レター」特設ポストと巻.com 事務局長清水真理子さん
 
東北だより
三陸コラボブランド「hiyuca(ヒユカ)」のトートバッグと代表の鈴木力さん
   石巻を、いえ、日本中を大きく変えた「あの日」から2年が経ちました。2013年の3月11日、私たちのまち石巻では世間の注目とは反対に、多くの失われた命とまちの記憶に祈りが捧げられ、穏やかに過ごそうとする地元の人々の姿が多く見られました。
 石巻復興まちなかマルシェで行われた「祈りの灯り、希望の灯り」というささやかな鎮魂の催しは、地元の人々が主体となって準備したもので、それを支えていたのは2年前からずっとこのまちの人に寄り添って、今や住民票も移して彼ら自身も「このまちの人」になったボランティア出身者たちでした。

 直前の3月9日には、石巻に関わった延べ28万人とも言われるボランティアに感謝の気持ちを手紙に託して届けよう、という「3・9レターキャンペーン」という企画もありました。震災後、このまちにいろいろな形でボランティアとして入った人の中には、とても地元の人たちにとって献身的な手助けをしたのに、その後名前も連絡先もわからないという人が少なくありませんでした。そういったボランティアに今だから「ありがとう」という言葉を届けたいという気持ちがこのキャンペーンにつながりました。企画をしたのは石巻に関わった人すべてをまちづくりに巻き込んでいく「巻.com」の事務局。これもまた石巻発の新しい潮流です。

 支援する・されるという関係性でなく、三陸の本当に良い技術や思いをモノに託して世界へ発信していこうというプロジェクトも新しく生まれました。石巻のセレクトショップが手がけた「hiyuca(ヒユカ)」は石巻、女川、気仙沼の作り手をつなぎ、ひとつのバッグを仕立てあげました。自分の心を直接表さずものに例えて詠む、万葉集の恋歌「譬喩歌(ひゆか)」のように、奥ゆかしいけれども強い気持ちを持った東北人らしいモノづくりです。

 あの日から3年目を迎える石巻。まちは平穏を取り戻したように見えますが、誇りを取り戻しゆくこのまちから、静かに新しい潮流が日々生まれ続けています。(石巻経済新聞小泉瑛一)

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Information
「石巻経済新聞」
http://ishinomaki.keizai.biz/
 
東北で見つけた名物親父
~石巻市の「居酒屋 五エ門」石川晃さん~
東北で見つけた名物親父
店長の石川晃さん(左)。スタッフの明るい対応や活気ある雰囲気が心地よく、つい長居してしまう。「まちを明るくしたい」と願うスタッフの志が、「五エ門」の雰囲気を形作っているに違いない。
 カウンターの吊り棚や厨房の壁にずらりと並んだ、酒瓶の数々。石巻市中央2丁目にある居酒屋「五エ門」の自慢は、50種以上の豊富な品揃えの日本酒や焼酎です。「珍しい地酒や限定酒もあるので、好みがあればスタッフに尋ねて下さい」と話してくれたのは店長の石川晃さん。この店では、いわい地鶏の焼き鳥や三陸の旬の魚とともに、おいしいお酒が楽しめるとあって、地元の方たちを中心にいつも店内はにぎわっています。

 宮城県の登米市を中心に、現在5店舗を営業している居酒屋「五エ門」。震災以前に石巻での出店はありませんでしたが、昨年9月に石巻店が新規オープンしました。 店長の石川さんは「まちにあかりを灯すことが、復興の役に立つのではないかと考え、オーナーの決断で出店を決めた」といい「はたして、お客さんが来てくれるのか、最初は全くわからなかった。見切り発車でした」と当時を振り返ります。
 
東北で見つけた名物親父
おすすめの日本酒は、地元石巻の平孝酒造「日高見」


Information
「居酒屋 五エ門」
http://www.e-goemon.com/index.html
電 話:0225-96-0001
住 所:宮城県石巻市中央2丁目1-23
営 業:PM5:00~AM0:00 月曜定休日
   「五エ門」石巻店がある旧北上川沿いの一角は、古くから港町として栄えた石巻のかつての中心地でした。近年は、郊外に出来た大型流通店の影響で、商店街にはシャッターの下りた店舗が目立つようになっていました。一昨年の震災では、川を遡上した津波がこの一帯を襲い、周囲の建物は大きな損害を被りました。水道や電気の復旧も遅れたため、一時は人通りも途絶えてしまいましたが、復興ののろしを上げようと集まった地元の人々の心意気によって、まちに変化が訪れました。復興バーや時代屋など、震災後の石巻を知る上でかかせない名物店が続々とオープン。徒歩圏内に、再開した石ノ森萬画館や日和アートセンター、復興民泊など観光の拠点もあることから、県外からやってくる人たちにも馴染みの深い場所となりつつあります。

 まちの復興はこれからが本番。「いっしょに楽しく飲んで、まちを盛り上げて行きませんか!」と、若き“名物親父”が奮闘しています。(岸田浩和)

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今月のお取り寄せ
今月のお取り寄せ
花弁をイメージさせる特性のフラワーキャップが付属する。

今月のお取り寄せ
今回は2℃に冷やして試飲。飲む温度により味も変化する。

花織 1470円
  東北まぐ編集部
イチオシの理由は?
 今回は福島県、喜多方市で作られている非常に希少なお酒、蜂蜜酒をご紹介いたします。
 この蜂蜜酒、日本ではあまり耳馴染みがないかもしれませんが、海外では「ミード」や「ハニーワイン」といった名称で知られています。人類最古のお酒とも呼ばれており、エリザベス1世もハーブを加えた蜂蜜酒を愛飲していたとのこと。
 今回飲んだこの花織は冷やし方により香味が変化するお酒です。メーカーによると、2℃で飲むと香り、甘みのバランスが一番良く、7℃で飲むと香り、甘みが一層引き立ちます。-3℃で飲むと香り、甘みが抑えられる代わりに、苦みや酸味が立ってくるようです。
 今回はバランスよく味わえる2℃に冷やして試飲してみました。
 一口目でまず感じたのは、フルーティーな香りとキリッとした甘みです。日本酒やワイン、焼酎などのお酒とはまったく違う口当たり。
 蜂蜜を使ったお酒と言うことで甘さを強く感じるのかとも思ったのですが、そんなことはまったくありません。しっかりとした酸味も感じます。イメージとしては食前酒に最適な感じがしました。
 スマートで美しいボトルデザインはプレゼントにも最適。
 ヨーロッパでは、結婚直後の新婦は1ヶ月間、滋養強壮効果のあるこの蜂蜜酒を作り、子作りに励んだと言われています。ここから「蜂蜜の一ヶ月」=「蜜月」(ハニームーン・ハネムーン)という言葉が生まれました。こうした意味を考えると新婚家庭へのプレゼントとしても良いでしょう。
 この非常に珍しい蜂蜜酒、是非一度お試しください。
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峰の雪酒造場
http://minenoyuki.com/index.php
 
 
【東北まぐ】 2013/04/11号 (毎月11日発行)
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表題写真 :岸田浩和
 
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