東北まぐ26号 2013年9月
気仙沼の座礁船の行方、キッズカメラマンのまなざし、震災から学ぶ三陸の学習列車、石巻ローカルピープルの活躍と木の屋の「いさだスナック」ほか、東北のいまをお届けする
東北まぐ
解体が発表された、気仙沼市鹿折地区の住宅地に座礁した漁船「共徳丸」(宮城県気仙沼)
はじめに
 津波によって遥か内陸に乗り上げた、大きな漁船の光景をご存知でしょうか。気仙沼市内の鹿折地区に座礁した「共徳丸」です。津波被害を象徴する光景として、世界中に取り上げられて来たこの船も、ついに取り壊しがきまったようです。存続か解体かを巡り様々な議論が行われる最中の、取り壊しの決定でした。
 取材中にお話した地元水産会社の社員は「賛否はあったが解体は残念」と言い「船は解体されるけど記録には残る。あとは自分たちの記憶に残して行くしかない」と語ってくれました。
 
東北マップ  日々移り変わる東北の光景。震災の記憶と関心は薄れてきましたが、2年半を経た沿岸部には、この災害を乗り越えて来たまちの“いま”があります。

 水産会社の社員は共徳丸を背に「一度来て見て、ありのままを感じてほしい。そこから始まる何かがあるかもしれませんから」と語り、蒼い空を見上げます。(岸田浩和)
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行ってきました東北
次世代へ繋ぐ、キッズ記者達の視線
行ってきました東北
現在、福島市に避難している霊山支局の高松海人君が震災前の自宅を撮影
 
 あの未曾有の被害を出した震災から2年半。被災地に3度目の短い夏が訪れた8月、3/11キッズフォトジャーナル(以下、KPJ)赤前支局の大久保直翔君は、津波で流された自宅跡地に立ち、静かにシャッターを切っていた。
 直翔君は現在中学2年生、自宅跡地にほど近い赤前の仮設住宅で避難生活を送っている。バスケ部に所属する彼は快活で仲間達と楽しそうに撮影を行っていたが、自宅に近づくにつれて口を噤み、流されてしまった故郷を一心に撮影していた。
 
 KPJは、2011年6月の設立以来、被災した東北3県(岩手・宮城・福島)の子供達が故郷の復興や、日々の移り変わりを写真と文章で記録し、被災の記憶を次世代へと繋ぐプロジェクトとして活動している。参加メンバーの子供達は、被災地をより深く知ってほしいという想いを胸に、独自の視点で被災地の現実を捉え、写真と文章で表現している。特に、KPJの記事はニュースとしての情報だけでなく、彼ら自身が感じた気持ちを大切にしており、そこにはありのままの真摯な言葉が綴られている。
 1枚目の写真を見てもらいたい。これは吉里吉里支局の小川留以さん(小5)が撮影したものだ。撮影の後に、この写真を補足するためのキャプションを書いてくれたのだが、そこには彼女の心の有り様が込められているようで、私の心に強く残った。編集前で修正の手が入っていない文章なのだが、ここで紹介をさせてもらいたい。
 『「プールはなくなった」私は8月12日に、吉里吉里にある津波で流されたスイミングのプールに行ってきました。どおして、写真を撮ろうと思ったかというと、前に、スイミングのプールにかよっていたので、撮ろうと思いました。去年にあったスイミングのプールがほとんど、あとかたもなくなってしまいました。去年にあったスイミングのプールがとびこみ台とかあったプールが今は、ほとんどあとかたもなくなってしまいました。』

 KPJはこれまでの活動として、 2012年に震災1年目の写真集を出版し、今年3月には『3/11 Kids Photo Journal写真新聞』として、岩手・宮城・福島の各3県版を発行。そして3年目となる今年度は「人を取材する」という事を年度目標に設定し、5ヶ月後の写真新聞発行に向けて、日々取材に取り組んでいる。
 主催者の後藤由美さんは、この活動の意義を「次の世代に繋げていくのは私たちではなく、彼らの世代です。今回の災害を体験した子たちにしか語れないこと、撮れないものがきっとあるはずです。今は思うようにうまく伝えられない子もいるかもしれません。ですが、その思いを伝える準備が出来たときに、自分たちの写真と文章が残っていて良かったと思える日が来ると信じています。」と語る。
 8月10日の第2回東北みらい創りサマースクールに参加した気仙沼支局の佐藤翔太君(2番目の写真)は、来場者からの質問にこのように答えていた。「瓦礫工場の中は地元の人も見た事がない。伝えていくためには僕がやるしかないと思った。」代表の後藤さんの思いは子供達に伝わり、そして未来への日本へと繋がっていく。(塩田亮吾

 
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1年前と同じ構図で撮影に挑戦した、吉里吉里支局の小川留以さん
 
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「地元の人も見た事がないから撮らなくてはいけない」(気仙沼支局/佐藤翔太)
 
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「祖父達を救った船にありがとうを言いたい」(赤前支局/大久保風香)
 
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津波で流された自宅跡地でかつての隣人を撮影した釜石支局の岡道一平君
 
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Information
・3/11 Kids Photo Journal
購入フォーラム(写真新聞の全売上は活動継続のために使用されます)
・Facebookページ
https://www.facebook.com/
KidsPhotoJournal?fref=ts

・Twitter (@311KPJ)
https://twitter.com/311KPJ
・Reminders Photography Stronghold http://reminders-project.org/rps/ja/
東京都墨田区東向島2-38-5


 
行ってきました東北
命の大切さを学ぶ 震災学習列車
行ってきました東北
三陸を走る車両と、三陸鉄道久慈駅 橋上和司駅長
 
 岩手県の三陸海岸沿いを走る「三陸鉄道」。震災の影響で不通区間が発生し、2013年9月現在、北リアス線は宮古~小本間、田野畑~久慈間で。南リアス線は盛駅~吉浜駅間で運行中です。三陸の皆さんの大事な足として、そして、NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台になった事もあり、連日観光客が乗車し、「お座敷列車北三陸号」も大盛況です。
 そして三陸鉄道では、列車で移動しながら震災・防災について学ぶことができる「震災学習列車」を運行しています。
 スタートしたのは2012年6月のこと。そのきっかけを、三陸鉄道久慈駅・駅長、橋上和司さんにお伺いしました。
 線路が寸断されている今、どうにかして、三陸にお客さんをお招きしたい、そして、「今のこの三陸を見てほしい」という願いで、「震災学習列車」の運行を始めました。修学旅行生や、老人クラブの皆さん、企業の社員研修、そして海外からも参加しています。
 遠いところではモンゴル、アメリカ、フィジー、トンガからのお客さんも乗車したそうです。今年だけで、およそ30団体、2000人が乗車。橋上駅長自ら、車窓から見える壊れた防潮堤、家並みについて説明します。自然についてや、命の大切さ、人と人のつながりなど様々なことを学んでいただきたいと思い、ガイドをするそうです。
 「伝えなければならない事は、オブラートに包まず、きちんと伝えたいと思っています。三陸の方言で、訛りながら話します。しかし、言葉よりも、現地の景色を見ていただく事が何よりも大事な事なんです。」と、橋上駅長は言います。
 久慈市出身の橋上駅長。高校を卒業してすぐ、1984年4月に開通の三陸鉄道に入社。開通一番列車の車掌を担当。ドラマ「あまちゃん」に登場する、北三陸鉄道・駅長の杉本哲太さんのモデルだという説もあります。震災以降、全線開通に向け多くの支援があったそうです。「こんなにも全国の皆さんにご支援をいただいた鉄道ってないんじゃないかと思います。ここまで応援していただいたら、私たちはそれにお応えしていくしかないのです。皆さんの熱い想いが詰まった十字架を、私たちは背負わせていただいたのです。絶対に線路を途切れさせてはいけないのです。」
 多くの事を学ぶ事が出来る震災学習列車。現在、申込みできるのは団体のみ。いつかは個人の乗車もできるように検討していくそうです。(寺坂直毅)
 
行ってきました東北
休日は観光客で賑わう三陸鉄道久慈駅
 
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Information
三陸鉄道
http://www.sanrikutetsudou.com/

震災学習列車の問い合わせ先
・田野畑~久慈間は、北リアス線運行部
  TEL : 0194-52-3411
・盛~吉浜間は、南リアス線運行部
  TEL : 0192-27-9669


東北マップ
 
東北だより
パワー・トゥ・ザ・ローカル・ピープル
東北だより
アート展の原点?!ローカル色あふれる「延命地蔵尊野菜祭り」の1コマ
 
 8月1日の石巻・川開き祭りが開催され、3年ぶりに大漁まつりや孫兵衛船競漕などの行事が復活し、盛況のうちに幕を閉じました。祭が終わるとともに長かった梅雨がようやく明けて真夏の太陽が照りつけていた石巻も、すっかり秋模様です。石巻の夏は短いのです。

 8月に石巻経済新聞でご紹介した記事では、地元の人たちのクリエイティブな力が発揮された活動について取材したものが光りました。
 8月26日に行われた「トリコローレ音楽祭2013」は石巻市民が出演者となって、街なかの至る所で音楽を奏でるイベントです。今年で10年目を迎えるこの音楽祭では、ジャズやロックから合唱や弾き語りまで、ありとあらゆる音楽が、老若男女の市民バンドによって鳴り響きます。マップとチケット片手にまちなかの参加店で食べ歩き、飲み歩くはしご酒イベント、「ボンバール」も同時開催されました。両イベントが合わさってまるで街中が文化祭のような(といっても演奏はどこも本格的です)、こんなにも石巻には音楽が好きな人が多いんだと感じるような高揚感にあふれた一日でした。
 
 そして旭町という古くからの住宅街で行われた「延命地蔵尊野菜祭り」という、ローカルアートフェスとでも言うべき、かなりディープ、かつ手作り感に和むという面白いお祭りも行われました。こちらはなんと約100年も続く伝統があり、昔は一面畑だったこの一帯でとれた野菜を地蔵尊に奉納する意味も含めて、手作りの野菜彫刻を民家の軒先や車庫をステージにして展示しています。「3班は去年よりもいい」「この発想はなかった」という、毎年楽しみにしている地元の人たちの声が聞けました。

 アイトピア通りの日和アートセンターでは、石巻出身の現役美大生たちによる5人展も行われました。高校生の時に震災を経験した、20歳の女子5人が、「時間」や「意識の流れ」をテーマに絵画や彫刻などの作品を展示しました。

 まちづくりでは「クリエイターが集まる街は活気がある」ということがよく言われます。石巻の場合、たしかにアーティストやデザイナーも震災後集まってきていますが、市民全員がクリエイターと呼べるような土壌がある街だということに改めて気付かされる1カ月でした。(小泉瑛一)

東北マップ
 
東北だより
石巻市民が多数出演し、町中が演奏会場と化した「トリコローレ音楽祭2013」
 
東北だより
石巻出身の女子美大生5人によるアート展が開催された
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Information
石巻経済新聞
http://ishinomaki.keizai.biz/

一般社団法人ISHINOMAKI 2.0
http://ishinomaki2.com/v2/aboutv2/

 
今月のお取り寄せ
 
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春の波打ち際をイメージした爽やかなパッケージが目を引く。

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1つ1つが小さく、口に入れやすいサイズ感。食べやすさも魅力的。
カルビー『いさだスナック』 オープン価格(実勢価格約150~200円)
  ゴチまぐ!編集部
イチオシの理由は?

 今回はカルビーと木の屋石巻水産(関連記事)が共同で開発した「いさだスナック」をご紹介します。
 この“いさだ”とは小エビに似た姿のオキアミの一種で、旨みが強く、かき揚げや卵焼きなどに広く利用されている三陸ではなじみ深い食べ物の一つ。そのいさだを『かっぱえびせん』で長くエビを原料としているカルビーが、スナック菓子として初めて原料に使用したという逸品です。
 ということで、早速試食してみました。
 まず最初に感じられるのが小エビ特有の旨みですね。甘みと塩味とのバランスも非常にいいです。小エビの香ばしさも十分に感じられます。食感も軽いので食べ飽きず、「最近スナック菓子が重いな」と感じる方でも食べやすいと思います。
 いさだという三陸以外の方はあまり馴染みのない食材を使った商品ですが、どこか懐かしさも感じられます。
 購入可能なのが東北エリアの一部スーパー約100店舗と東北コープネットだけですが、スナック好きはハマると思います。ぜひ食べてみてください。
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お問い合わせ
・カルビーお客様相談室 0120-55-8570
http://www.calbee.co.jp/
 
 
【東北まぐ】 2013/09/11号 (毎月11日発行)
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編集 :岸田浩和
取材 :岸田浩和、寺坂直毅、塩田亮吾
デザイン :九門 淳(有限会社セカンドリビングプロジェクツ)
スタッフ :本村彰英
表題写真 :岸田浩和
 
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