東北まぐ31号 2014年2月
2人となった雄勝すずり職人の挑戦、仙台の新しい宿、欅(けやき)GH、開催・311映画祭、大川小の天使像、喜多方ラーメンお取り寄せ、東北のいまをお届けします。
東北まぐ
宮城県石巻市「大川小学校」の校庭
児童74名と教職員10名の犠牲者を弔うために建てられた天使の像
はじめに
 日本中が吹雪の予報となったこの日も、大川小学校の校庭に設けられた慰霊碑には、たくさんの人が訪れていました。厚い雲の下で雪まじりの横風が吹き荒れてる中、一人の青年が花を手向けにやって来ていました。「もうすぐ、三年経ちますねと」話しかけると、「僕らは、まだ三年しか・・・って感じですかね」と静かに答えてくれた青年。

 彼が鎮魂の鐘を鳴らす頃、偶然西の空が明るみ始めはじめました。雲の切れ間から明るい陽光が一筋に差し込み、慰霊碑に並んで建つ天使の像を照らします。大空に向け翼を広げた天使の足下には、「HOPE(希望)」の文字が刻まれています。

 皆さんが、東北へ足をはこぶきっかけとなる事を願って、東北まぐ31号をお届け致します。
(岸田浩和)
 
行ってきました東北
すずり職人 遠藤弘行(60)
行ってきました東北
現在、2人まで減ってしまった雄勝のすずり職人の一人、遠藤弘行さん(60)
 
 600年の歴史を誇る雄勝のすずり産業。戦前には300人以上の職人がこの地ですずり生産に従事していたが、年々減り続けて2010年頃には7~8人となっていた。震災後は、工房や機材を失ったり、高齢を理由に再起を断念する職人もおおく、漸減を続けていた。2014年2月現在、雄勝ですずりを彫る職人は2名となった。そのうちの1人、遠藤弘行さん(60)は、雄勝湾の最深部に近い船戸地区に残って、現在もすずりを彫り続けている。
 
 津波で自宅と仕事場をかねた店舗を失ってしまい、呆然と立ちすくんでいた遠藤さん。ガレキの中から、父の彫ったすずりがきれいな形で出て来たことが、再開のきっかけとなった。「自分がすずりをやめてしまったら、職人であった父が人生を掛けて残して来たものを絶やすことになる。とにかくここに残って、すずりを彫り続けよう」と決意する。

 残骸の中からのみを拾い集め、年配の職人から道具を譲ってもらい、物置小屋に裸電球をともしただけの仮設の工房を作って作業を再開した。

 筆記具や生活文化の変遷により、特にここ数十年ですずりの需要は大きく変わった。特に販売数が伸びる市場は学校用など教育市場向けに限られる。小さくて軽くて安いものが好まれるため、柔らかい石を機械で彫った商品や人造石を使ったものが市場にあふれた。近年は、中国からの輸入品や異素材の成型品も流通しており、産地の職人が手を動かす場面自体がますます減っている。

「しかたがない事かもしれないが、職人の数に比例して、本来のすずりの伝統や技術そのものが失われて来ている」という。そうしたなか、遠藤さんは職人としての自分の存在意義を見つめ直し、書道家や墨絵作家などプロに応えるための最高品質のすずり作りに取り組んでいる。通常は硬度が高すぎて加工に時間がかかるため敬遠されがちな玄昌石を選び、品質と意匠にこだわった制作を続けている。価格を抑えるため、流通を通さずに直接販売もおこなっている。

 遠藤さんの作業机の横に、全国から寄せられた手紙が積み上げられていた。「ありがたいことに、時々お客さんが、感想の手紙を送ってくれるんですよ」と笑顔で、厚く積み重なった紙の束を示してくれた。「本来は、苦痛でしかなかった墨をする時間が楽しくなった。(書道家)」「墨が吸い付くようにすずりの上を滑り、短時間で濃い黒がしっかりと出る(墨絵画家)」といった、感嘆の言葉が並んでいる。

 震災後の三年を振り返り「大変な毎日に変わりはないが、悪い事ばかりでもないですよ。そう考えるようにしているんです」と遠藤さんは明るい表情で答えてくれた。震災をきっかけに雄勝の事を知った人たちが、すずりやスレートに注目してくれた事で、廃れ行く雄勝すずりの流れが変わったと言う。また「いまで付き合いの無かった書道家からの注文があったり、わざわざ応援に、訪ねてきてくれたかたもいらっしゃいました」。遠藤さんの人柄をしたって、有志のボランティアが作業場の増築を手伝いにきてくれたり、震災チャリティーを行っていた広島のミュージシャンたちが、遠藤さんの活動を知り石切機材の支援をしてくれたそうだ。これまでに無かった出会いが広がり、多くの人に支えられている事に気づかされたという。

 父、盛行さんが彫ったという、見事な意匠のすずりを見つめる遠藤さん。「自分のすべき事は、昔も今も変わらないと気づきました。すずり職人として技を磨き、この場所で雄勝の玄晶石を彫り続ける事なんです」 (岸田浩和)
 
行ってきました東北
宮城の伝統文化を取り上げた文化伝承業書(笹氣出版)のシリーズでは、「雄勝硯」と言うタイトルで遠藤さん親子が取り上げられている。
 
行ってきました東北
遠藤さんのすずりを使う全国の書道家・愛好家からは、膨大な数の感想や励ましの手紙が寄せられる。
 
行ってきました東北
震災前の、雄勝や北上地区の写真を見せてくれた遠藤さん。「地元の雄勝石をスレートに使った、美しい町並みがあった」
 
行ってきました東北
極めて硬度の高い玄昌石を使い、緻密な意匠を施す遠藤さんのすずり。石の色目や模様を巧みにデザインに取り入れる、高度な職人の技が取り入れられている。
 
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Information
「エンドーすずり館」
住所:宮城県石巻市雄勝町
雄勝船戸神明29-1
電話番号:080-1823-5433
営業日:不定休、9時~16時頃

東北マップ
 
東北だより
東北のいまを、一緒に考えるために
行ってきました東北
左より、映画祭のプログラムディレクター久木元さん、わわプロジェクトの媒体で編集を担当する高村さん
 
 東日本大震災復興支援プラットフォーム「わわプロジェクト」(運営:一般社団法人非営利芸術活動団体コマンドN)では、2014年3月9日(日)~30日(日)の22日間、東京都千代田区のアーツ千代田 3331を会場に「3.11映画祭」を開催いたします。

 さまざまな道のりで復興へ向かう人々や、原発事故に翻弄される人々の日常を追った作品など、それぞれの監督が多様な視点から捉えた東日本大震災に関するドキュメンタリー映画・約30本を一挙に上映いたします。

 会期中は、監督や出演者、復興活動に携わる方々によるトークイベントも織り交ぜ、1日2~3作品を上映します。また、館内では復興支援プロダクトの販売や関連展示なども行います。国内外で高い評価を受けた注目作も多い一方、一般劇場での上映機会が限られている作品が多い為、いままで見逃していたかたは、必見の機会となるでしょう。
 
 わわプロジェクト高村さんは「スクリーンを通じて生まれた観客の方の新たな気付きや価値観が、新たな行動を呼び東北の未来につながってくれたら嬉しい」と話してくれました。今回の映画祭の企画を行ったプログラムディレクターの久木元さんは、「東日本大震災から4年目を迎え、新たな局面へと向き合いつつある今だからこそ、各作品が映し出す現実や、投げかける問いをみなさんと一緒に共有できれば嬉しい」と話します。 (取材/岸田浩和)
 
Information
「3.11 映画祭」
http://311movie.wawa.or.jp/
開催期間:2014年3月9日(日)~30日(日)
場所:東京都千代田区外神田6-11-14
アーツ千代田 3331内 特設ギャラリー
(プログラムや詳細は、上記サイトで2月中旬に発表予定)

主催:わわプロジェクト
http://wawa.or.jp/

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~間もなくオープン、「仙台 欅(けやき)ゲストハウス」~
欅(けやき)ゲストの女将を務めるのは、北海道石狩市出身の中津希美さん
 
 2011年8月1日、大震災から5ヵ月後の仙台で大きな不安がまだ残る中、強い志を持った小さくも暖かい旅人向けの宿泊施設であるゲストハウスが産声を上げた。旅人の利用はもちろんのこと、日本全国はもとより海外からの東北被災地ボランティア活動の拠点としても大きな役割を果たしてきた仙台市宮城野区平成一丁目の「ゲストハウス梅鉢(うめばち)」。

 あれから2年半、国内外からの旅人に愛され支持を受けてきた。そしてこの春には2号店となる「仙台 欅KEYAKI ゲストハウス」を、東北一の繁華街である国分町と道を一本へだてた地区にオープン準備中だ。

 この立町は繁華街に面していながらもかつての花柳界があった一角であり、当時の繁栄をうかがい知ることができる風情を残す街並み。つい最近まで営業していた料亭をリノベーションしてゲストハウスの開業を目指す。運営を任されるゲストハウスの女将は、北海道石狩市出身の中津希美さん。元々は「ゲストハウス梅鉢」を利用していた宿泊者だった。「本当に不思議なご縁でこの欅ゲストハウスの女将をやらないか、というお話を頂きました。今は3月頭のプレオープンと3月中のグランドオープンに向けて、やることがいっぱいです。ご縁があって宿泊くださる皆さんが自然と輪になれるような和やかな雰囲気にしたいです。」と希望に満ちたビジョンを語る。
 
 建物を入ってすぐのところにフロントとバーを配置。バー続きの奥座敷ニ間は、宿泊者が自然と集まりコミュニケーションが取れる暖かい雰囲気の共有リビングスペースに改装される。国内外からの旅人が東北や仙台の美味しい食材を持ち寄り、旨い酒と共に語らうのが目に見えるようだ。
 旅人目線で考えて、これ以上はないのではないかというぐらいの旅人フレンドリーな立地。ゲストハウスの目の前には一晩800円程度で利用できる公共駐車場も十分にあるので、車での旅行者にとっても利便性は高い。

 オーナーの加賀真輝さんは、一号店である「ゲストハウス梅鉢」を営む中でゲストとのふれあいから、東北を見る目が変わったと言う。「遠くから足を運んでくれた旅人たちが、僕たちの気づかなかった仙台や東北の良いところを、どんどん見つけてくれているんです」。三陸の魚介類、蔵王連峰などの山の幸、そして、東北人の静かで温かい人柄。日本の原風景の残る東北に心を奪われる旅人たちの視点を通じ、あらためて東北の魅力を再認識している。
 加賀さんは、多くの人々が東北の沿岸地域を訪れることで、現地にも外来者の出身地域にも双方にメリットが生まれる旅の形があると信じてやまない。「震災後の東北は、全国に先駆けて、街づくりや、農業、エネルギー、コミュニティのあり方等、先進的な取り組みが始まっています。日本の地方が抱える”過疎”や”高齢”と言った問題に、正面から切り込む果敢な挑戦です。ここに、どのような街を作って行くのかーーそんな前のめりでポジティブな動きのある東北をみなさんに知ってもらいたいと願っています。”新しい東北”を知る為の足場として、梅鉢や欅(けやき)ゲストハウスを通じて、みなさんに貢献していきたいとおもっています」
(向井通浩/ジャパンバックパッカーズリンク)

 

最近まで営業していた料亭をリノベーションし、3月中のオープンを予定している。
 
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Information
仙台 欅 KEYAKI ゲストハウス
(3月オープン予定)
https://www.facebook.com/KEYAKIGUESTHOUSE
住所:宮城県仙台市青葉区立町13-4

ゲストハウス梅鉢(うめばち)」営業中
http://bit.ly/1e2uQLu
住所:宮城県仙台市宮城野区平成1丁目3-14

東北マップ
 
今月のお取り寄せ
 
今月のお取り寄せ
三食分の麺、スープ、タレにメンマが付いたセット。

今月のお取り寄せ
自宅で簡単にお店そのままの味が楽しめるのもポイント!
  ゴチまぐ!編集部
イチオシの理由は?

 暦の上ではもう春のはずなんですが、相変わらず寒い日が続いています。こう寒いと体を温めてくれる食べ物が恋しくなりますよね。

 ということで今回は福島を代表するご当地ラーメン、喜多方ラーメンの名店、ふぶき亭の「ふぶき亭特選らーめん3食ストレート」をお取り寄せしてみました。

 まず、注目なのがスープでしょう。お取り寄せのラーメンにありがちな濃縮タイプかと思いきやこちらはストレートタイプを使用しています。これならば間違いなくお店の味が家でも楽しめますね。

 一口飲んでみると鶏ガラのうま味が十分に出ているクセのない醤油味。どこか昔懐かしい、上品で優しい味です。

 麺は喜多方ラーメン特有の平打ちタイプのちぢれ麺。スープとも相性が良く、麺とスープが絶妙に絡みます。

 具材はメンマがあらかじめ付いていますので、このままでも十分に楽しめますが、好みでネギやナルト、チャーシューなどを乗せても良いでしょう。

 ラーメン好きなら絶対にチェックして欲しい一杯。ぜひお試しください。
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お問い合わせ
・ふぶき亭 喜多方ラーメン本舗
https://www.tohoku-e.net/kitakata-ramen-cgi/secure/cart/cart.cgi
 
 
【東北まぐ】 2014/02/11号 (毎月11日発行)
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編集 岸田浩和
取材 :岸田浩和、向井通浩(ジャパンバックパッカーズリンク)、関裕作
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