東北まぐ34号 2014年5月
世界品質のかき養殖に挑む、女子大生に聞く東北へ行く意味、震災ジャーナリズムの最前線から「震災以降」、仙台の厚切り芯タンほか
東北まぐ
陸前高田市「りくカフェ」
はじめに
 取材先でこんな声を聞いた。「ぼくらの土地で新しいことをはじめるのは、並大抵の事じゃないんだよ。都会と違って、人づき合いが濃いから、一人だけ周りと違う行動をすると目立つんだ。調和が乱れれば、叩かれる事もある。相当な勇気と根気がないと、続けられないよ」
 震災を経て、多くの人がこの困難な挑戦に立ち向かっている。彼らは「3年続けたら、周囲の目が変わる。5年続けたら、仲間が出来る。10年続けたら主流に変わる」と心に言い聞かせ、自分を信じるのだと言う。「20年続けたら歴史が出来る」という彼は「だから挑戦するんだよ」と話してくれた。

 一人でも多くの方たちに、東北からの声が届く事を願って、そして皆さんが東北へ足をはこぶきっかけとなる事を願って、東北まぐ34号をお届け致します。
(岸田浩和)
 
行ってきました東北
フランス・豪の養殖技術を取り入れ、
世界品質の牡蛎生産に挑む!「和がき」
行ってきました東北
牡蛎育成に使用するバスケットを手にした、阿部年巳さん。県内6つの異なる浜の生産者と連携し、
フランスや豪州式の養殖手法を取り入れた、日本でははじめての牡蛎生産スタイルに挑む
 
■新工場設立
 ゴールデンウィークを迎えた4月30日、宮城県東松島市の東名浜にあたらしい牡蛎加工工場が竣工しました。
 1月号の「のぼりプロジェクト」(2014年1月号リンク)で取り上げた齋藤浩昭さんが代表を務める「和がき」が取り組む、「世界品質の牡蛎を三陸で生産する計画」の基幹となる工場です。日本初となるフランスや豪州の養殖手法を用いた画期的な試みで、県内の6つの浜、19名の生産者・販売者が協力し運営を行います。

 竣工式の日、工場の責任者としてつめかけた関係者の前に立った、阿部年巳さん(37)。精悍な面持ちでマイクを持ち「震災後、全国のみなさんから支援を頂き、どん底の状態からここまで立ち直ることが出来ました。みなさんの思いに応えるためも、もう一度自分たちの牡蛎を食べてもらいたいと思い、新しい挑戦をはじめます」と、決意を話しました。

 地元、宮城県東松島市で牡蛎養殖を営んでいた阿部年巳さん。牡蛎のこと全てを教えてくれた父と処理場ではたらく従業員を津波で亡くしました。漁具や処理場、自宅も失い、牡蛎養殖の再開は無理だと断念。「子どものこともあるし、生活するためには、ほかの仕事を見つけるしかなかった」と言う阿部さんは、震災後すぐに転職先を探していたそうです。
 
■フランスの牡蛎養殖で見た衝撃
 転機は、阿部さんの奥さんがたまたま見かけたツイッターでした。三陸沿岸の牡蛎養殖再開に奮闘する齋藤浩昭さんのツイッターの書き込みに返信したところ、話しがトントン拍子に進んでいきます。気がつけば、フランスに牡蛎養殖の視察に向かう齋藤さんに「私も一緒に同行させてもらえないか」と頼み込んでいた阿部さん。齋藤さんや他の生産者とともに、本場フランスの牡蠣養殖の現場を見学するため、視察に向かいました。

 日本とは違い、殻付き牡蛎が主流の流通事情を目の当りにし、取引単価の違いに驚きます。「養殖も流通も、日本と全く発想が違うんですよ」と阿部さん。牡蛎養殖の従事者は「牡蛎職人」と呼ばれ、他の漁業従事者とは一線を画す地位を得ていることにも衝撃を受けました。帰国後、齋藤さんと阿部さんらは、フランスで普及する樹脂製の採苗器「クペール」を輸入し、海外式の牡蛎養殖に挑戦します。クペールで種牡蠣が小指ほどの大きさに成長すると一度陸に揚げ、牡蛎をバスケットに移し単独で育成させます。こうすることで、丸くてカップの深い牡蠣を、形を揃えて養殖することが可能になります。

 大きな期待を寄せる海外方式ですが、最初の投入では種牡蛎がクペールにつかず、失敗に終わっています。それでも落胆せず「まだまだ、これからですよ」と明るい表情で応える阿部さんは、「日本とフランスでは水温や環境の違いがあるので、当然の結果です。投入する海に合わせた条件を見極めて、時間を掛けてノウハウを蓄積することが我々の仕事です」と力を込めます。

■三陸の食と観光の柱となる「牡蛎文化」
 世界一と言われる種牡蛎を生産しながら、養殖技術や流通に関してははまだまだ世界から遅れをとっている日本の牡蛎業界。震災による壊滅的な被害と、その後の記録的な価格低迷など、苦境が続いています。「だからこそ、改善する必要があるし、チャンスにしていきたいと」と齋藤さん。「10年、20年後には、三陸の食と観光の柱となる「牡蛎文化」を育てて、世界中から人の集まる場所に変えていきたい」と挑戦を掲げています。

 「そんなの無理だと嗤う人がいるかもしれませんが、僕は成功させたいし出来ると本気で思ってますよ」と阿部さん。工場に掲げられた大漁旗が、外から吹き込んだ風を受け鮮やかにゆれています。「津波で全部失くしてしまったけど、牡蛎の全てを教えてくれたおやじが残してくれたこの土地で、もう一回新しいことに挑戦出来るって、すごく意味のある事だと思うんですよ。心強いし、負けらんねぇなって」 (岸田浩和)
 
行ってきました東北
しっかりと身の詰まった大振りの牡蛎を養殖し、殻付き牡蛎として流通させるる事が狙い
 
行ってきました東北
牡蛎の処理や選別に使用する機器類
 
行ってきました東北
震災を経て苦境に立たされるの三陸の牡蛎業界だが、生産と流通「両輪」の改革で巻き返したいと話す、株式会社和がき代表の齋藤浩昭さん
 
行ってきました東北
東松島湾東名浜に竣工した、新工場
 
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Information
株式会社 和がき
http://wagaki.jp/

東北マップ
 
行ってきました東北
シェアスペース&オフィス”co-ba” kesennuma (後編)
行ってきました東北
福岡からやって来た田中奈菜さん
 
 福岡県在住の大学生、田中奈菜さん(20)。被災地ボランティアに参加した友人の話を聞いた事がきっかけで、気仙沼にやって来ました。TVのインタビューで「震災の事や、私たちの事を忘れないでほしい」と話す被災地の方の声を聞いた時、遠く離れた福岡から、何が出来るのだろうかと考えた田中さん。「まずは、わたしが被災地の事を忘れないように、”経験”する事が大切ではないかと考えた」と話します。「友だちに”東北行って来たよ”と言えば、話題にも上がるし興味を持ってくれる人もいるかもしれませんから」
 
 最初は春休みを利用して、単なる旅行として気仙沼にやって来た田中さんは、現地に到着してから「シェアスペース&オフィスco-ba」の開設プロジェクトを知ったそうです。短期のボランティアでも作業に参加出来ると聞き、思いきって飛び込んでみました。

 「DIYとか、普段はやった事も無かったし、何が手伝えるのか不安だった」と言う田中さんでしたが「周囲のボランティアの方に教えてもらいながら、朝から目一杯作業できました」と、充実した表情でこえてくれました。2日間の作業を終え、「この土地に、これからも残るものを作る所に参加出来て嬉しい」という彼女は、今回の成果を「地元の方がどんな事を考え、今どのように暮らしているのか知ることが出来たこと」だと言います。

 気仙沼初となるシェアオフィスを作ろうと言うこのプロジェクト。発起人の杉浦恵一さんは、その狙いを次のように話します。気仙沼に拠点を置き起業する人を応援、輩出する事が最終目的とだいい、まずはそのために必要な、ヒト、モノ、コトをシェアできる場にしていきたいと話します。気仙沼内外の方が分け隔てなく繋がりを持てる場となることを目指し、人や情報の交流を促すため、講師を招いたり、メンバーで様々なワークショップを開催していきたいそうです。杉浦さんは「地元、気仙沼の高校生や若者に視野を広げてもらう機会も積極的につくりたい」と考えており、気仙沼内外の人が交流する拠点として、幅広い人に利用してもらえるスペース作りを目指しています。間もなくオープンの予定です。 (岸田浩和)
 
行ってきました東北
慣れない作業も、先輩ボランティアが教えてくれたおかげで、難なくこなせた
 
行ってきました東北
内装工事も終わり、間もなくオープン予定

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Information
co-ba kesennuma(気仙沼)
http://tsukuruba.com/co-ba/kesennuma/
 
メディアの現場から
~喪われた者たちの声に耳を澄ませ~
東日本大震災レポート「震災以降」発刊
メディアの現場から
 
 東日本大震災から丸三年が経過した。あの時、何が起き、あれから何が起こっているのか。被災地に密着し続けた記者たちが綴る、震災と生活を主題とした東日本大震災レポート「震災以降」が発刊された。ジャ?ーナリスト、渋井哲也、村上和巳、渡部真の3人をレギュラー 執筆陣として、約20名の記者やライターが、それぞれの視点から見た3年間のレポートを綴る。

 被災した地域で暮らしている人々が、どのような問題を抱え、どんな思いで暮らしているのかを丁寧な取材から浮き彫りにしていく本書では、「東北まぐ」の取り組みについても、本書の6章で紹介頂いた。
 
 また、5月22日21時からは、本書の発売を記念しインターネット番組が配信される。著者の渡部真さん、亀松太郎さんと共に東北まぐ記者の岸田も出演し、3年間の東北被災地取材を通じた記者として視点やこれからのメディアのあり方など、「被災地を伝えること」をテーマにお話しする予定。(配信5/22 21:00)
(岸田浩和)
 
Information
震災以降 東日本大震災レポート
著者:渋井哲也 村上和巳 渡部真 ほか
販売元:三一書房
定価:1400円+税
http://t.co/zsBbnD2ZYs
 
今月のお取り寄せ
 
今月のお取り寄せ
冷凍で届くので自然解凍しフライパンで調理します。パッケージの牛も可愛らしい。

今月のお取り寄せ
浅漬けやテールスープとともに味わえばお家が名店に早変わり。
  ゴチまぐ!編集部
イチオシの理由は?

 宮城県、仙台の名物と言えば何と言っても牛タンは外せないでしょう。ということで今回は、仙台にある人気の老舗牛タン店「伊達の牛たん」の「厚切り牛たん」の塩味をご紹介。編集部でも早速お取り寄せしてみました。

 塩味というと牛タンの味付けの中では定番中の定番。しかも厚切りなので牛タン本来の味を存分に堪能できるのが魅力です。

 今回は冷凍で届いた物を自然解凍し、フライパンで焼いて試食したのですが、一口噛むごとに牛タンの旨味がじわっと口の中に広がっていきます。

 ご飯ともお酒とも相性抜群。お好みで七味唐辛子や一味唐辛子を添えても、また風味が変わり美味しく食べられます。ぜひ一度お取り寄せしてみてください。
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お問い合わせ
・伊達の牛タン
http://www.dategyu.jp/shop/item_detail?category_id=306002&item_id=1024163
 
 
【東北まぐ】 2014/05/11号 (毎月11日発行)
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編集 岸田浩和
取材 :岸田浩和、寺坂直毅、関裕作
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表題写真 :岸田浩和
 
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