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五輪“無観客”に海外失望。豪選手が不参加表明、米放送局は歓声合成の準備も。早くも「コロナに負けた東京五輪」との評

開会式まであと2週間に迫った東京五輪だが、都内で開催される協議に関しては無観客で行われることが決定し、様々な反応が飛び交う事態となっている。

8日に行われた日本政府・東京都・大会組織委員会・国際オリンピック委員会(IOC)・国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者による会議で決まったもの。オリンピック期間中に4度目の緊急事態宣言が出される東京都にくわえ、まん延防止等重点措置が適用されている神奈川県・千葉県・埼玉県の会場で行われる競技に関しても、無観客で実施されることとなった。

五輪の全42会場のうち、34会場が今回無観客と決まった1都3県にあるとのこと。いっぽうで、宣言や重点措置の対象ではない宮城県・福島県・静岡県・茨城県の会場は有観客となり、宮城県・福島県・静岡県の会場は「収容人数の50%か1万人の少ない方」、茨城県の会場は学校連携の児童・生徒らのみ入れるとのこと。サッカー男女の予選リーグが札幌ドームで行われる北海道に関しては、その扱いを引き続き調整するという。

選手の不参加表明も…「無観客」決定の影響が早くも

開催直前のタイミングでの無観客決定により、様々な影響が出ることが予測されるなか、最も危惧されているのが「水の泡となったチケット収入」の埋め合わせだ。

大会組織委員会は今回の東京五輪におけるチケット収入は900億円と見込んでいたが、ほとんどの競技の無観客開催が決まったことで、見込みが大きく狂う格好に。報道によると組織委が赤字となった場合は、東京都が穴埋めすることになっており、ネット上の都民からは、今後の都税の値上がりを心配する声もあがる。しかし国際オリンピック委員会(IOC)に関しては、たとえ無観客でも開催さえすれば巨額の放送権料を確保でき、その腹はほとんど傷まないとのもあり、そのことも多くの人々を複雑な心境にさせているようだ。

また五輪の主人公である選手にとっても、今回の無観客開催の決定が相当辛いものとなることは想像に難くないが、そんななかオーストラリア代表として出場予定だった男子テニスのニック・キリオス選手が、今回の無観客開催の決定を受けて不参加を表明。自身のツイッターで「自分自身を分かっている。誰もいない会場で対戦することを考えたが、しっくりこない」と、無観客下でのプレーに「違和感」を感じたことも不参加を決めたひとつの理由のようで、今後彼と同様な動きを取る選手が出てくることも考えられなくもない。

いっぽう無観客での開催となったことで、その模様を伝えるテレビ局も新たな対応に迫られているようだ。五輪の米国向け放送権を持つNBCユニバーサルでは、放送の際に人工的な音などを入れて、あたかも観客がいるかのように補完する技術を導入する可能性を示しているとのこと。しかし、これがまるでひと昔前のコント番組の演出のようだとして、ネット上からは「ドリフ方式」などと揶揄する声が多くあがっている。

さらに空っぽになるであろう観客席だが、これに関してはどうにもごまかしようがないと思いきや、新国立競技場に関してはあらかじめシートが様々な配色によるまだら模様になっており、目の錯覚で客席が人で埋まっているように見えるという。今回のコロナ禍をまるで予測していたかのようなこの工夫に、「先見の明」「東京五輪唯一の成功事例」などの声も出ているが、実際のところはバッハ会長以下IOC関係者の五輪ファミリーや、スポンサー関係者は無観客開催でも入場を認める方向のよう。これまで散々取沙汰されてきた、五輪における特権階級の人々のみがリアルで観戦できるという、歪すぎる光景が展開される公算が高いとあり、ネット上では「貴族のためだけに開催」「絵としてさすがに邪悪過ぎる」など、嫌悪感を示す声が渦巻いている状況だ。

「コロナに負けた東京五輪」との声も

さらに、今回の無観客開催の決定を受けて、ネット上で早くもあがっている「コロナに負けた東京五輪」といった声だ。

昨年、東京五輪が延期になった際に、当時の安倍首相は一年後に「完全な形での開催」を目指すことを表明。その後、総理大臣の座を継いだ菅首相も、しきりに今回の東京五輪を「コロナに打ち勝った証しの五輪」にすると発言。政府関係者の間でも、有観客での開催が「コロナに打ち勝った証しのひとつ」だとして、その可能性をギリギリまで模索していた経緯がある。

しかし頼みの綱だったワクチン接種も、初動の遅れが大きく響いて、現段階で2回の接種ができているのは一部の高齢者ぐらいといった状況。また度重なる緊急事態宣言の発出でも感染の拡大は抑えきれず、あえなく無観客での開催となることに。この状況に対し「負けた証とは言いたくはないですが、勝っていないですよね」「負けた証し以外の何物でもない」などと、政府に向けられる声は至って辛らつだ。

東京五輪を成功裡に終わらせ、その余勢をかって来る衆院選に突入する……そんな青写真を菅首相が描いていると、これまで様々なメディアが伝えて来たが、果たして「コロナに負けた東京五輪」を完遂させたところで、菅首相が目論むような「余勢」は期待できるものなのか。今回の「無観客決定」が、今後の政局にも微妙に影響を及ぼすことも大いに考えられそうだ。

Next: 「北京五輪が人類がコロナに打ち勝った象徴と…」

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