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安倍首相「リーマン危機前夜」に世界が失笑。伊勢志摩で日本が失ったもの=斎藤満

「日本の安倍首相の言うことなど聞けるか」GW中の訪欧が逆効果に

このように、サミットでは成果を上げることができなかったのですが、作戦失敗の始まりは、GW中の安倍総理の訪欧とロシア訪問でした。

熊本地震もあって予定を短縮したこともありますが、この“根回し出張”は成果を得るどころか、むしろ逆効果となりました。財政拡大に同調したのはフランスとイタリアだけで、ドイツのメルケル首相からは「サミットで議論しましょう」と相手にされませんでした。

また英国では、地元紙が「アベノミクスに失敗した国のトップの言うことをなんで聞かなければならないのか」と批判的に書きました。

これに対し、日本からは石原経済担当大臣が、「ベアが3年連続で実現したことがなにより成功の証で、これを失敗と言ったら、およそ成功などありえない」と反論したのですが、「トリクル・ダウン」に失敗して総理自ら財界に賃上げを要請した事実を知る者からは、これは反論になっていないととられます。

それだけでなく、訪欧の最後にロシアのソチを訪れ、プーチン大統領と会談したことも、G7メンバーからは批判を受けました。

G7として制裁をしている国をサミット前に訪問することは、裏切り行為だ、抜け駆けだ、との声が上がりました。

そのために、かえって日本への協力姿勢をそぐ結果となり、事前の根回しに失敗する要因となった可能性があります。

日本が得たのは観光アピールと反核ムードだけ

結局、世界経済にはリーマン危機前夜並みの下振れリスクがあると言いながら、その対応は各国がそれぞれの事情に応じて対応する、ということで、強制力のある協調の形を引き出すことはできませんでした。

しかも、日本が為替介入はできない、との認識を市場に与えてしまい、円安につながるマイナス金利策の拡大も困難、との印象です。日本自体が手足を縛られたことになります。

この他、南シナ海、東シナ海での中国の動きに警戒の認識は持たれましたが、具体的な措置は取られず、北朝鮮の核実験などには、強く非難したものの、相手の対応を望むだけにとどまり、テロに対しては、すべての国が身代金を払わないことを確認するにとどまりました。

結局、日本が得たものは、このサミットを機に、伊勢志摩の美しい自然を内外にアピールできたことで、観光日本の後押しになったこと。

そして、沖縄の痛ましい事件で水を差されたものの、原爆投下国の大統領が広島を訪問し、被爆者の生の声を聴く機会を得たことで、「核のない世界」に向けて新しい一歩を踏み出せたことです。これらは望外の成果と言えます。

Next: 消費増税延期は選挙の弾みにならず/財政とのセットにも落とし穴

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