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ジョジョの奇妙な黒田バズーカ~イカサマは2018年にバレるんだぜ…=東条雅彦

「2%の物価上昇」を達成するために異次元緩和を続けるという建前は、『ジョジョの奇妙な冒険』の空条承太郎のセリフ「バレなきゃあイカサマじゃあねえんだぜ…」の論理にそっくりです。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

【関連】数字が語る「黒田バズーカは財政ファイナンス」という明白な事実=東条雅彦

承太郎=日銀、ジョセフ=政府。バレる異次元緩和の「イカサマ」

「バレなきゃあイカサマじゃあねえんだぜ…」

『ジョジョの奇妙な冒険』の空条承太郎のセリフ。

バレなきゃあイカサマじゃあねえんだぜ…

このセリフ、すごく好きです。

承太郎がテレンス(という敵キャラ)と野球ゲームで対決することになりました。

ゲームコントローラーをお互い持ち、画面上のバッターとピッチャーで投げ打ち合いを行う単純なゲームです。

テレンスは読心術が使えるので、承太郎の心を読みます。承太郎がカーブを投げるのか?ストレートを投げるのか?が手に取るようにわかります。

ところが、読心術で読み取ったのと異なる動作をされるため、テレンスは焦ります。

そして、読心術で「イカサマをしているのか?」と尋ねると、承太郎の心は「YES」と答えます。

テレンスは怒って承太郎を非難します。「イカサマをするとは何事だ!」と。

しかし、承太郎は平然と「バレなきゃイカサマじゃない」と言い張ります。

これはある意味、真実を突いています。

イカサマはバレて(=顕在化して)、初めてイカサマになるのです。

日銀の異次元緩和も「バレない間はイカサマではない」

日銀の「2年で2%の物価上昇」を達成するために異次元緩和を続けるというのは、私の中では「バレない間はイカサマではない」という論理に見えます。

「2年で2%の物価上昇」というインフレターゲットが本当の目的だと思われている間は問題ありません。

これが「財政ファイナンス」であるという真実がバレないまでは、承太郎の論理(=バレない間はイカサマではない)が通用します。

毎年、日銀が80兆円の国債を買い続けると、どうなるのか?

2014年に、日銀は「異次元緩和」と称して、年間80兆円もの国債を買い切るという政策に転じました。

<日銀 国債保有量の推移>

年月 兆円 増減(前年との比較)
201004 58 8
201104 67 9
201204 90 23
201304 143 53
201404 207 64
201504 288 81

2016年以降も、毎年80兆円ずつ積み上がっていく予定です。2016年から20年後の2036年まで次のように推移すると予想されます。

<日銀 国債保有量の推移【予想】>

年月 兆円
201604 368
201704 448
201804 528
201904 608
202004 688
202104 768
202204 848
202304 928
202404 1008
202504 1088
202604 1168
202704 1248
202804 1328
202904 1408
203004 1488
203104 1568 ★
203204 1648
203304 1728
203404 1808
203504 1888
203604 1968

いやいや、まさか今後20年も日銀の国債買い切りが続くわけないでしょ。と思っている人もいるかと思います。

もちろん、未来は常に不確実です。

しかし、アベノミクスが開始されてからの実績を数字を使って定量的に積み上げていけば、大雑把な予想はできます。

未来は過去の連続で形成されています。

今日の気温が20度だったのに、明日になったら突然、0度になって、明後日にはまた反転してプラス30度になる…というようなことは通常、考えられません。

Next: 2031年4月、日銀の国債保有量が市場全体の国債量を超えるんだぜ…



市場全体に出回る国債量はどのように増えていくのか?

政府はバブル崩壊以降、ずっと市場に国債を供給し続けています。過去、5年の実績では次の通りです。

<市場全体 国債量の推移>

年月 兆円 増減(前年との比較)
201004 727 49
201104 755 28
201204 783 28
201304 828 +45 ★アベノミクス開始
201404 882 54
201504 911 29

過去6年間の平均値では約40兆円です。

今後、政府の方も国債残高を毎年40兆円のペースで積み上げていく可能性が高いという前提で、未来を予想します。

<市場全体 国債量の推移【予想】>

年月 兆円
201504 911
201604 951
201704 991
201804 1031
201904 1071
202004 1111
202104 1151
202204 1191
202304 1231
202404 1271
202504 1311
202604 1351
202704 1391
202804 1431
202904 1471
203004 1511
203104 1551 ★
203204 1591
203304 1631
203404 1671
203504 1711
203604 1751

20年後の2036年に市場全体の国債量は1751兆円になってしまいます。

先程も確認したように、日銀の方は異次元緩和が今のペースで継続すれば、2031年4月(★印の箇所)には1568兆円に達してしまいます。

なんと、日銀の国債保有量が市場全体の国債量を超えてしまいます。

<日銀の国債保有量/市場全体の国債量>

2031年4月:1568/1551 = 101%

ということは、2030年4月から2031年4月の間で、日銀が市場に出回る国債を全て買い取ることになります。

今から15年後の話です。

この状態まで行き着けば、「国債の貨幣化」が完全に実現します。

財政ファイナンスはやり過ぎると、国債が「貨幣」(お金)と同じ意味を持つようになるということです。

とは言うものの、実際には日銀が国債の100%を握ることはないでしょう。

  1. 政府……売り手
  2. 金融機関……買い手
  3. 日銀……買い手

買い手は金融機関と日銀の2者です。

民間の金融機関(銀行・生保等)が国債をまったく持たなくなるのは想像しにくい事態です。財政ファイナンスはどこかで「イカサマ」がバレる可能性が高いのです。

Next: 市場関係者も懸念。注目が高まる「日銀の国債保有比率」



俄然、注目が高まる「日銀の国債保有比率」

この日銀の国債保有比率は、今後、世間から注目が高まってくるはずです。

最近、高まる日銀の国債保有比率を懸念する報道が行われています(まだ大々的には扱われていませんが…)。
日銀の保有国債300兆円突破 比率3割に、強まる依存 – 日本経済新聞
日銀の国債保有331兆円 全体の32.0%に 15年12月末時点 – J-CASTニュース

今のペースで政府が借金を増やし続けて、日銀が異次元緩和を継続すると、日銀の保有比率が限りなく100%に近づいてしまいます。

<日銀の国債保有比率【予想値】>

年月 日銀 政府(単位:兆円) 保有比率
201504 288 911 32%
201604 368 951 39%
201704 448 991 45%
201804 528 1031 51% ★
201904 608 1071 57%
202004 688 1111 62%
202104 768 1151 67%
202204 848 1191 71%
202304 928 1231 75%
202404 1008 1271 79%
202504 1088 1311 83%
202604 1168 1351 86%
202704 1248 1391 90%
202804 1328 1431 93%
202904 1408 1471 96%
203004 1488 1511 98%
203104 1568 1551 101%

日本経済新聞に載っていた識者のコメントを下記に引用します。

モルガン・スタンレーMUFG証券の杉崎弘一氏
「日銀が今のペースで国債を買い続ければ、17~18年には流動性低下の弊害が出てくる」

SMBC日興証券の末沢豪謙氏
「18年末には日銀の保有比率が5割を超え、保有額もGDPを上回る可能性がある。経済成長と両立した財政再建の重要性が増している」

杉崎氏、末沢氏ともに、日銀の国債保有比率が2018年に50%を超えると主張しています。

私の作成した予想値と完全に一致しています。

保有比率が50%を超えると、流動性が低くなり、日本国債が暴落してしまう可能性が高いです。今の「異次元緩和」は確実に限界に近づきつつあります。

承太郎はどのようなイカサマをしていたのか?

ここで、『ジョジョの奇妙な冒険』で承太郎がやっていたイカサマの種明かしをしましょう。

敵のテレンスは読心術を使って、承太郎の心を読んでいました。

ところが、野球ゲームのコントローラーを操作していたのは承太郎ではなかったのです。

承太郎の隣で野球ゲームを観察していた祖父のジョセフがスタンドを使って、コントローラーを操作していたのです(承太郎はコントローラーを操作しているふりだけで、実際にはジョセフのスタンドが操作していました)。

テレンスはジョセフをゲームの傍観者だと思っていました。

だから、承太郎の心をいくら読んでも、予想が当たらなかったのです。

ものすごく単純なイカサマです。

金融政策に関してはどうしても日銀が目立っているので、市場参加者は「日銀」に注目しがちです。

次の金融政策決定会合は来月の6月15・16日に開催されますが、「サプライズはあるのか?」と市場は期待することになるでしょう。

しかし、注目する相手が間違っています。真実は下記の通り。

ゲームのコントローラーを握っているのは、日銀ではなく政府です。

政府が国債を増やし続けるから、日銀が買い支えに走っているという事実から目を背けるべきではありません。

Next: 「毎年80兆円の国債を市場から買い切る」というイカサマ



「毎年80兆円の国債を市場から買い切る」というイカサマ

2年後の2018年には、日銀が市場全体の半数の国債を握ってしまいます。

アベノミクスの一本目の矢である「異次元緩和」は毎年80兆円の国債を市場から買い切るという政策です。

国債を市場に供給しているのは、政府です。(売り手)

買い手は金融機関(銀行・生保等)と日銀です。

  1. 政府……売り手
  2. 金融機関……買い手
  3. 日銀……買い手

日銀は市場全体の半数を握ったまま、さらに80兆円分の国債を買っていなければいけません。

政府は毎年40兆円の新規国債を市場で売っています。次のような状況です。

  1. 政府……毎年40兆円の新規国債を日銀に売る
  2. 金融機関……???
  3. 日銀……毎年80兆円の国債を市場から買う

日銀は政府から市場を通じて、40兆円の国債をまるまる買い取って、さらに40兆円を調達していく必要があります。

日銀は残りの40兆円をどこから調達すればよいのでしょうか?

そうです!買い手は金融機関と日銀の二者しかいないので、残りの40兆円は金融機関から買い取っていくことになるのです。

  1. 政府……毎年40兆円の新規国債を市場で売る
  2. 金融機関……毎年40兆円の国債を日銀に売る
  3. 日銀……毎年80兆円の国債を政府から買う

金融機関の国債保有量は毎年40兆円ずつ減っていく

2018年で日銀が市場全体の半数を掌握している状態で、さらに金融機関(銀行・生保等)は日銀に国債を売り渡せるのでしょうか?今までの経緯を数字で追っていきましょう。
※参考:物価、資金循環統計、短観データの一括ダウンロード – 日本銀行

<日銀の国債保有比率【2016年以降は予想値】(単位:兆円)>

年月 日銀 金融機関 市場全体 保有比率
199704 32 259 291 11%
199804 37 282 319 12%
199904 43 315 358 12%
200004 46 345 391 12%
200104 67 384 451 15%
200204 81 439 520 16%
200304 81 474 555 15%
200404 90 528 618 15%
200504 93 578 671 14%
200604 75 599 674 11%
200704 65 617 682 10%
200804 58 638 696 8%
200904 50 628 678 7%
201004 58 669 727 8%
201104 67 688 755 9%
201204 90 693 783 11%
201304 143 685 828 17% ★1
201404 207 675 882 23%
201504 288 623 911 32%
201604 368 583 951 39%
201704 448 543 991 45%
201804 528 503 1031 51% ★2
201904 608 463 1071 57%
202004 688 423 1111 62%
202104 768 383 1151 67%
202204 848 343 1191 71%
202304 928 303 1231 75%
202404 1008 263 1271 79%
202504 1088 223 1311 83%
202604 1168 183 1351 86%
202704 1248 143 1391 90%
202804 1328 103 1431 93%
202904 1408 63 1471 96%
203004 1488 23 1511 98%
203104 1568 -17 1551 101% ★3

(注)金融機関の値は「市場全体-日銀」で求めています。
★1…アベノミクス開始
★2…日銀の国債保有比率50%超え
★3…日銀の国債保有比率100%超え

2015年までは実績値を用いています。

2016年からは市場全体で毎年40兆円ずつ増えていき、黒田バズーカ2(毎年80兆円買い切り)が継続するという前提での予想値となります。

注目すべきは金融機関の国債保有量です。

日銀が国債を大量に買い切っているため、必然的に金融機関は国債の保有量を減らしています。

  1. 政府……毎年40兆円の新規国債を日銀に売る
  2. 金融機関……毎年40兆円の国債を日銀に売る
  3. 日銀……毎年80兆円の国債を政府・金融機関から買う

(2)の金融機関は毎年40兆円の国債を売る、つまり、減らしていかなければいけないのです。金融機関だけに限定すると、次のように保有量を減らしていかなければいけません。

<金融機関の国債保有量【2016年以降は予想値】(単位:兆円)>

年月 金融機関
200904 678
201004 727
201104 755
201204 783
201304 685 ★アベノミクス開始
201404 675
201504 623 ★ここから40兆円ずつ保有量を減らしていく
201604 583
201704 543
201804 503

Next: 本当に金融機関は毎年40兆円分の国債を売り越せるのか?



本当に金融機関は毎年40兆円分の国債を売り越せるのか?

政府は毎年40兆円分の国債を市場に供給するので、まず日銀はその分を全て買い取ります。

黒田バズーカ2(毎年80兆円買い切り)を継続するためには、さらに残り40兆円を金融機関に売ってもらう必要があります。

金融機関の保有量は2012年4月には783兆円もあったのに、4年後の2016年4月には583兆円まで減らしています。

この4年間で保有量を約25%も減らしたのです。

市場の流動性が毎年悪くなっていくのは明白です。金融機関は国債を永久に売り越し続けることはできないでしょう。

コップの中に入っている水の量は有限なのです。ずっと水を流し続けることはできません。いずれ空っぽになります(2031年4月には空になる)。

今は、日銀が勢い良く国債を買いまくっているので、国債が人気になって、価格が上がっています。

しかし、騙されてはいけません。永久に国債の価格が上がり続けることはありません。また、金利が下がり続けることもありません

金融機関が国債を市場であまり売らなくなったら、どうなるのでしょうか?おそらく次のようなステップを踏むはずです。

<予想される国債の売買をめぐる価格遷移>

(Step1)日銀は市場で高い値段を提示して、国債を買い取ろうとする。

(Step2)金融機関は儲かるため、日銀に国債を売る。

(Step3)金融機関は手持ちの国債が減っているので、売りにくくなる。

(Step4)日銀はさらに市場で高い値段を提示して、国債を買い取ろうとする。

(Step5)金融機関は儲かるため、日銀に国債を売る。

(Step6)金融機関は手持ちの国債が少なくなっているため、売る量を減らす。★

(Step7)日銀は国債の買い取り量を減らす。

(Step8)だんだん国債が市場で売れなくなり、価格が下がる。

今まで国債の価格はずっと上がりっぱなしです。

長期国債先物(SBI証券提供)

現時点ではStep5の段階です。Step6に突入するのは2018年頃だと推測します。今の黒田バズーカを継続すれば、2018年頃には日銀の国債保有率が市場全体の50%に達します。

日銀以外のプレーヤー(金融機関)の手持ちの国債が減ってきて、売りにくくなることは明白です。

Next: 今回のまとめ:2018~2031年に日本国債の暴落と金利の暴騰が発生する



今回のまとめ1

今のペースで政府が国債を増やし続けていると、2年後の2018年には、日銀が全体の半数の国債を握ってしまいます。さらに15年後の2031年には、完全に国債が貨幣になってしまいます。

異次元緩和を継続させればさせるほど、「イカサマ」であることがバレてしまいます。

ただし承太郎(=日銀)に注目が集まっている間は、「バレなきゃあイカサマじゃあねえんだぜ…」の論理が通用します。

今回のまとめ2

  1. 政府……毎年40兆円の新規国債を日銀に売る
  2. 金融機関……毎年40兆円の国債を日銀に売る
  3. 日銀……毎年80兆円の国債を政府・金融機関から買う

この状態を長期的に維持することは不可能!日銀の国債保有率が50%を超える2018年から2031年の間で、流動性低下に伴う国債の暴落及び金利の暴騰が発生することは明らかです。

【関連】安倍政権の消費増税再延期と財政出動がもたらす「2018年の絶望」=吉田繁治

ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2016年5月22,5月30日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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