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【参院選】安倍大本営によるアベノミクスの「よかった探し」が始まった=斎藤満

アベノミクスに未来なし。企業が賃上げを渋る当然の理由

では、企業は利益がこの3年で3割以上も増えていながら、なぜ賃金で還元しないのか、そのカネはどう使ったのでしょうか。

先の「法人企業統計」によると、安倍政権下の3年余りの間に、企業は人件費や設備資金に使わず、「利益剰余金」という内部留保に91兆円も積み上げました。

これは企業の「貯蓄」であり、需要を減らすデフレ効果を持ちます。

なぜ企業は儲けたお金をなぜ賃金や設備投資に回さず、内部留保に貯蓄するのでしょうか。その原因は、企業の利益が「売上」というパイの拡大によるものではなく、円安による面が大きく、この円安がいつまで続くかわからない、という「不確実性」にあります。

そのようななかで「固定費」としての人件費や設備費にお金を回してあとで困れば、株主に怒られます。

また、国内市場は人口減少期に入り、市場は年々縮小してゆくのが分かっているので、儲けたお金を国内で設備拡張に使おうと言う意欲もわきません。

そもそも、企業が年収169万円の非正規労働者を増やし(全体の約4割)、彼らが結婚できず、子供も産めないと、ますます人口が減り、国内市場が縮小し、企業が投資できなくなる悪循環に陥っているのです。

ローマ法王も否定した「トリクル・ダウン」

企業を儲けさせれば、そのおこぼれが労働者にも回り、好循環が期待できると言う「トリクル・ダウン」の考え方は見事に裏切られました。そもそもローマ法王までもが「トリクル・ダウン」は世界のどこにも見られないと言っています。

こうして、企業を儲けさせれば儲けさせるほど景気が悪くなる、という皮肉な結果になっているのです。

以上は、現実に見られる失敗の姿ですが、そもそも、アベノミクスは、当初の「金融緩和」「財政の機動的利用」「成長戦略」という「3本の矢」に無理がありました

「3本の矢」のうち、金融緩和と財政の機動的利用は、「マッチ売りの少女」よろしく短期的な効果しかありません。マッチが燃えている間に薪に火が付くよう「成長戦略」にバトンタッチする必要がありましたが、それが放棄されたのです。

Next: アベノミクス「3本の矢」の本質的な間違い/始まった株安円高

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