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日本市場を襲う「株の冬」とヘッジファンドの誤算~3月FOMCを終えて=E氏

ヘッジファンドの思惑と誤算

このポジション解消は昨年11月のトランプショック以降の、トランプ政権になって米国のインフレが加速するという過度な見方でドル買い他通貨売りを進め過ぎた反動ですが、投機筋は昨年11月下旬から1ヶ月半程度で構築したこのポジションを今年に入ってから一貫して解消していたのです。

それは、12月のFOMCで先行きの金利見通しが示されたことで、トランプ政権のインフレ政策で米国の金利が今後大幅に上がるという見方が、さすがに行き過ぎていたと考え直したからです。

しかし、2月以降、FOMCメンバーが立て続けに早急な利上げを主張し、一部メンバーは年間4回の利上げを主張するようになっていたところに、イエレンFRB議長がダメ押しともいえる3月利上げを支持したことで、投機筋は「3月FOMCでは、年間の利上げ回数見込みも引き上げられるのではないか」と考えたようです。

この結果、年初以降ずっとドルを売り越していたのに、3月7日までの1週間では、今年に入って初めてドルを買い増し、反対に円などの他通貨の買い戻しを止めて、再度ショートポジションを増やしたのです。

その翌週のデータはまだ出ていませんが、FOMCの直前までドルインデックスが上昇し、円安が進んでいたことから、恐らく投機筋はFOMCまでドルのロングを増やし、円などのショートを増やしていたのでしょう。

しかし、3月のFOMCでは、利上げこそ決定されましたが、年間利上げ回数の引き上げにつながるような発言や声明は見られず、従来どおりのペースでの緩やかな利上げの見通しが示されました。

前回利上げから3ヶ月での利上げなので、定規で先まで延ばすと年4回の利上げを示唆しているだろうという見方は、このFOMC声明とイエレンFRB議長会見で崩れ去ったのですが、この結果、ドルは急落し、過度な利上げ見込みで売られていた米国債の買い戻し(金利は低下)が入ったのです。

米国株が連動しなかった理由

一方の米国株は、このような利上げペースに関する思惑は、事前に一切ありませんでした。

元々、米国株は2月上旬のトランプ大統領による「目を見張る減税を発表するから楽しみにしていて」という発言以降、過度な期待感で過熱していたのですが、先月28日の議会演説で、「減税は発表されたものの、なんの具体策もない」薄っぺらい内容だったので、一旦材料出尽くしになりました。

しかし、それでも近々迫る利上げというものをほとんど織り込まないばかりか、利上げ発表直後は「経済見通しが順調」という発表内容を好感して、ショートスクイズ主導で上げたくらいです。

米国株は、この数年、FRBによる引き締め発表直後は「利上げに耐えられる経済を好感」といった屁理屈で上げることが多いですが、ほとんどはショートスクイズで、通常はアヤが終ると引き締めによるリスク資産忌避的な動きをするようになりますので、今回もそのような動きになる可能性が高いでしょう。

このように、米国株はそもそも利上げを気にすることなくトランプ政権による経済成長を期待する相場が続いていましたが、その反面、為替市場や米国債券市場はFOMCの利上げペースが従来より早くなるという先読みをし過ぎたため、一見すると各アセットで違う反応になったのです。

Next: 円高が再開、米国株も頭打ちで日本株はリスクオフへ~今後の見方

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