筆者は講演会で、目の不自由なご婦人からApple Payについての質問を受けました。言われてみれば、今のApple Payは、障がいのある人にとって十分な決済手段とは言えないかもしれません。そのことをブログに書いたところ、なんとアップルから連絡がありました。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)
※本記事は、『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2017年3月1日、15日号の抜粋・再構成です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
目の不自由な人から切実な質問を受けた筆者にアップルから連絡が
Apple Payの人気ぶりを実感した宮崎県消費生活センター講演
2017年1月11日に宮崎県消費生活センターで、「クレジットカードや電子マネーの注意点」という講演をしました。キャッシュレス化が進み、多様なカードがでてきていますが、今後はその特徴を知って上手に使いましょう、という内容でした。会場は中高年の男女約100名が集まり盛況でした。
私は、クレジットカード、電子マネー、デビットカード等を紹介し、そのメリット、デメリットについて話しましたが、話題になっている「Apple Pay」については60歳以上の人には難しいだろうと思い、あえて5分ぐらいの解説に留めました。
そして、いよいよ終わりという時になり、質問を受け付けたところ、5~6人が手をあげて、皆がApple Payの話を聞きたいと言うのでびっくりしました(アクティブシニアは好奇心旺盛です)。
Apple Payの人気の高さと関心の強さを改めて実感した次第ですが、ちょうどドコモやトヨタファイナンスがApple Payのコマーシャルを全国放送していたので、その影響だったのかもしれません。
目の不自由なご婦人からのご質問
そして、最後に1人の上品なご婦人が立って質問をしました。目の不自由な婦人でした。「スマホで買い物ができるのは嬉しいですが、サインはどうするのですか、サインを書くときは、さらに大変になるのではないでしょうか」と心配していました。
これに対して私は、「Apple Payはサインがいらないのが特徴です。Touch IDをダブルクリックするだけで本人確認ができるので楽ですよ」と答えました。アップルはこうしたサービスには指紋認証などを使って十分に気をつけているのです。
それを聞くと、婦人は「安心しました」と言って微笑みました。
しかし、目の不自由な人にとっては、サインがいらないといっても、Touch IDボタンを探すのも楽ではないと思いました。それだけではありません。決済が終わったことをどうやって知るのかとか、決済を中断するとどうなるのかなど、問題はたくさんあるように思えました。
こうした課題を解決しなければ、障がいのある人にとっては十分な決済手段にはならないでしょう。アップルには、まだまだやることがいっぱいあると感じた次第です。
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