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新・大塚家具、久美子社長はなぜ「過去最悪赤字」に追い込まれたのか?=栫井駿介

大塚家具<8186>は、約2年前に創業者の大塚勝久氏と娘の久美子氏が経営方針を巡って対立し、壮絶な委任状合戦を繰り広げた結果、久美子氏が「勝利」しました。しかし、話はこれで終わりではありません。これからが傾きかけた大塚家具が復活できるかどうかの正念場です。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

お家騒動から2年、初の本決算は大赤字。大塚家具復活の条件は?

新体制最初の決算は過去最悪

2016年12月期は「久美子体制」での最初の本決算となりました。その結果は45億円の最終損失と、過去最悪の業績となってしまいました。売上高も580億円から460億円にまで減少し、ますます厳しい状況に陥っています。それに伴い、株価も右肩下がりを続けています。

大塚家具<8186> 週足(SBI証券提供)

大塚家具<8186> 週足(SBI証券提供)

久美子社長もこの状況を黙って見ているわけではありません。3月10日には新たな体制における「経営ビジョン」を発表しました。そこでは、「専門店・小型店による多店舗展開」などが掲げられ、これまで見えにくかった新戦略が少しずつ明らかになっています。

この方針に賛同してか、「ひふみ投信」のレオス・キャピタルワークスや、米国のバリュー系ファンドであるブランデスが発行済株式の5%以上を取得し、大量保有報告書を提出しています。

お家騒動時の委任状争奪戦で、久美子氏が配当をそれまでの2倍に上げることを約束したため、配当利回りは8%を超える並外れた水準になっています。投資家にとってはありがたいですが、赤字の会社がこれだけの配当を払うのは財務的には相当大変でしょう。

騒動前から大塚家具は斜陽だった

そもそもお家騒動の発端になったのは、大塚家具の経営が斜陽になっていたからです。勝久氏は、立て直しのために一度は退社して独立していた久美子氏を呼び戻した結果、両者のあつれきが生まれてしまったのです。

久美子氏の初年度は散々な業績でしたが、それまでの経緯を見ると勝久氏が残っていたとしてもジリ貧の状況には変わらなかったでしょう。

大塚家具が苦しい状況に陥っているのは、消費者の属性や競合他社の状況が大きく変化したからです。一昔前は家具の値段が高いのは当たり前だったため、大塚家具は豊富な品揃えと当時は珍しかったメーカー直接仕入れによる相対的な低価格で消費者の歓心を得ました。

しかし、ニトリやイケアなど、自社で製造し安い価格で販売する競合が現れると、中間層の消費者はそちらへ流れました。安くてそこそこのものが手に入るため、彼らは無理に高い家具を買わなくても良くなったのです。

中間層の顧客を一気に失った大塚家具は、そのままでは立ち行かないことは目に見えています。同じように自社製造を行ってガチンコで戦う気がないのなら、少なくとも違う土俵で勝負しなければなりません。

久美子氏の打ち出した「専門店・小型店」という構想は、ニトリやイケアとは軸をずらして戦うことの意思表明と考えられます。正解かどうかは結果が出ないと分かりませんが、生き残るための一つの選択肢であることは間違いありません。

この方向性は決して売上を大きく伸ばせるものではないでしょう。ボリュームゾーンを諦めた戦い方です。それでも、売上を犠牲にして利益が伸びるのであれば、企業の戦い方として間違っているものではありません。

Next: 久美子社長は店舗面積縮小と「余剰人員のリストラ」を実行できるか?

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