立て直すにはリストラを実行できるかが鍵
しかし、この会社の財務状況を見ると、なかなかそうも行きそうにありません。
実は、大塚家具の原価率は5割弱と、ニトリと遜色ないのですが、問題は販売管理費です。店舗の賃借料や人件費で構成される販売管理費は、ニトリが4割弱なのに対し、大塚家具は6割にも上ります。これがそのまま利益の差となって表れます。
大塚家具は500億円の売上に対し、300億円が販売管理費です。つまり、商品をいくら頑張って売っても、販売管理費で利益が帳消しになってしまうのです。
この分析からわかるように、大塚家具にまず必要なのは店舗面積の縮小と人員のリストラです。これは縮小均衡ということではなく、マーケットの実態に即した「最適化」です。今のままではどちらも無駄を持て余してしまっています。
小型店化はその一つの方向性でしょう。提案サービスはこれまで以上に充実させるということですが、そのためにむやみに広い売り場は必要ありません。販売員も小さな売り場なら数人いれば十分です。
しかし、人員のリストラは久美子氏にとって最大の難関でしょう。お家騒動があり、一部の社員の士気は低下していることが考えられます。そこでリストラをしようものなら、大反発が起こり、経営が立ち行かなくなってしまうでしょう。この舵取りは非常に難しいと言えます。
大塚家具が再び安定した利益を出せるようになるためには、客観的に見てリストラは不可欠です。これができない以上、同社の業績を立ち直すのは難しいでしょう。もちろん、同社の株式の購入を推奨することもできません。
逆に、久美子氏の努力によりリストラが断行できる状況になれば今後に期待が持てます。今は期待で投資することなく、それが実行に移されるのをじっと待ちたいと思います。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2017年3月27日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。