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日経平均16,938円を抜けず/2016年は円高趨勢、為替相場の注目点=山崎和邦

【3】イベントの全てが休戦状態に入る

これで内外投資家が注視して来たマクロの政策期待は出そろった。 アベノミクス「第1の矢」「第2の矢」が同時に放たれた。日銀は政府の経対対策との「相乗効果」を狙う行動に出た。

次回の金融政策決定会合(9月20日、21日)までは静かであろう。

財政出動も当初の「10兆円規模以上」から「20兆円」となり「28兆円」となった水曜の翌日は材料出尽くしで大手ゼネコンも一服した。

今後、FRBの米利上げ、ECBの金融緩和、日銀の再々緩和、財政出動、イベントの全てが休戦状態に入る。

いわゆる「方向感の乏しい地合い」となろう。

だが、株価は連載小説であって過去の記憶の集積体として動く。この「イベント白紙期間」に地合いがどうなっているかが、今後の動きを決めるであろう。

図3 日経平均は「イベント白紙期間」に

図3 日経平均は「イベント白紙期間」に

【7】今年はドル安・円高趨勢になる年だ――プラザ合意以降31年間の波動の周期から言えば円安傾向は昨年6月で終わっている

本稿では3年ほど前から長期的円安傾向が始まったと言い、2か月前に長期的円安趨勢を撤回した。勿論、BREXITの1カ月以上前であった。

確信があったわけではないが、単純にプラザ合意以降31年間の中勢的な波動を想起すれば日柄から見てそう言える。

125円の時に(米に言わせられたのか)「これ以上の急激な円安は望ましくない」と安倍内閣の首脳部が発言したことを契機として円安趨勢は終わったと見る。

長期に続く円高が如何に日本経済を蝕むかということを当時は誰も危険視する洞察力を持たなかったが、実は85年3月にプラザで各国首脳が(アメリカの国益のために)ドル安に持ってゆくことを決めた、その時の250円から正しく10年後には79円台にまで円高になるという劇変を誰も夢想だにしなかった。

こんな激変はおそらく先進大国では史上初のことだったろう。 日本の財界人は良く耐えて乗り切ってきた。

筆者は実は、その時代に米財務省のトレジャリー・ビルに投資していた。これはドル円レートが固定されていれば10年後に確実に2倍になって償還されることを米財務省が保証しているディスカウント債である。

ところが、債券単価は償還期間を目指して順調に値上がりしていたが中途で利食いして円にすると殆ど利益が出なかった。筆者にとっては「円高の実害」であった。

ヒトは失敗から学ぶ。あのとき順調に行っていたら筆者は円ドル相場の中長期的趨勢の周期などは学ばなかったであろう。

71年に固定為替制度をニクソンが一方的に変動制に変えて以降、円ドル相場の24カ月線との乖離率は見てきたが、趨勢変化の周期を見ては来なかった。要約するとこうなる。

86年プラザ合意の後の31年間に円高趨勢、円安趨勢のトレンド変化は11回あった。

円高趨勢、円安趨勢と交互にトレンドが変化する周期は、円高方向の最短で16カ月(98年夏~9年年末頃、味危機と日本国内の金融危機)、円高方向の最長は60カ月(90年春~95年春。バブル崩壊の真っ最中)、今回は円安方向の42,3カ月(2012年・民主党の不毛時代~15年6月の円最安125.8円=日経平均の大天井)であった。

11回のトレンド変化を単純平均すると、一旦始まったトレンドは35カ月、つまり3年続く。 今回の円安トレンドは既に「3年」は経た。

125円の時の「これ以上の急激な円安は日本のタメにならない」と安倍さんたちが言った時に円安トレンドは終わったと見るのが自然であろう。「円安トレンドは終わった」という事は「円高トレンドに入った」ということだ。

Next: 円高が進行しても80円台突入の可能性は低い。その理由とは?

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