fbpx

復活の「原子力ムラ」 3・11の教訓を一顧だにせぬ原発再稼働の内幕=新恭

原子力ムラの逆鱗に触れた地震学専門家・島崎氏の「出過ぎた真似」とは

退任から2年近くが過ぎ、島崎がなぜ、規制委員会にやってきたのか。会場は最初から重苦しい空気につつまれていた。田中委員長が一通りのあいさつをしたあと、いつものようにボソボソと話しはじめた。

「先日この場で島崎先生からいろいろ御懸念の点をお聞きし、通常はこういう対応はしないが、島崎先生はここで自ら大飯原発の審査をされていたので、誠意をもって…」

これが、そのあとに繰り広げられた慇懃ながら憎悪むき出しの規制委、規制庁側と、物静かに対抗する島崎元委員との壮絶なバトルの幕開けだった。

このシーンに至る経過を説明しておこう。

島崎名誉教授は2015年5月から2016年5月にかけて開かれた日本地球惑星科学連合大会、日本地震学会秋季大会など4回にわたる学会で、ほぼ同じ内容の発表をおこなった。そのポイントは、関西電力が大飯原発で想定する最大級の地震の揺れが小さく見積もられ過ぎているという指摘だ。関電による地震モーメント(地震の強さ)の算定法の妥当性を否定したのだ。

委員会退職後の研究や熊本地震の観測データなどから、関電が用いた「入倉・三宅式」という計算方式によって得られる地震動の推定値では、大飯原発付近の断層の場合、過小評価になってしまうということが島崎の研究で判明した。

新規制基準に基づく大飯原発3、4号機の審査のまとめ役だった島崎は、両機の再稼働決定に責任を負わねばならない立場であるのは確かだ。退職後の研究で、関電の算定法に大きな疑念を抱いた以上、科学者として何らかのアクションを取らねばならないと考えた。それは学者の良識といえる。しかし、島崎とともに審査にたずさわった田中委員長ら、現在の規制委員会メンバーにすれば、出過ぎたことと見えるかもしれない。

島崎は今年6月、大飯原発3、4号機運転差し止め訴訟の控訴審にからみ、原告側弁護団の依頼で以下のような陳述書を名古屋高裁金沢支部に提出した。

関西電力は、私が行った日本地球惑星科学連合大会2015年大会における発表内容につき、同社の断層モデルを用いた手法による地震動の評価とは無関係だという主張しているようですが、その主張には理由がありません…。

関電と真っ向から対立する姿勢を示したのである。

大飯原発の数キロ以内には長さ60キロを超える断層(FO-A~FO-B~熊川断層)が存在する。これは西日本に多いタイプの活断層、すなわち断層傾斜角が垂直の横ずれ断層である。

関電は「入倉・三宅式」の計算によって、基準地震動を最大856ガル(ガルは加速度の単位)と想定している。規制委は、この地震動を前提に大飯3、4号機の地震津波対策が十分かどうかの審査をしたのだが、それが誤りだったことに島崎は気づいた。

Next: 新たな知見を全否定、原子力規制委員会の体質は旧態依然のまま…

1 2 3 4
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー