政府も企業も「スタンド」である!
「国民1人当たり約◯◯万円の借金を抱えていることになる」という話をすると、必ず、次のように反論するエコノミストがいます。
「それは国の借金ではなく“政府”の借金である。国民は債務者ではなく債権者だから、政府の借金は国民には無関係だ!」
この主張は正しいのでしょうか?結論を先に言うと、残念ながら、これも「俗論」になります。
経済の主体は家計(国民)、企業、政府の3者で成り立っています。この3者でお金をやり取りしています。そのため、政府の負債は確かに、家計にも企業にも無関係のように思えます。
しかし、無関係ではありません。
少し話が逸れるかもしれませんが、『ジョジョの奇妙な冒険』というマンガをご存知でしょうか。このマンガには「スタンド」という概念が存在します。
「スタンド」とは、「パワーを持った像」で、敵を攻撃したり自分の身を守ったりする、守護霊のような存在です。ジョジョを知らない人は「スタンド=守護霊」だと捉えてください。
スタンドは、超能力を持つ人間が放った存在です。戦いにおいて、スタンドがダメージを受けた場合、そのスタンドを出した本人(人間)もダメージを受けます。もし本人が直接、敵から攻撃を受けてしまった場合、スタンドも弱ってしまいます。
ジョジョにおける戦闘で、「スタンドがやられてしまったけど、本人は大丈夫だ」という論理は通用しません。
・人間=こっちが本体
・スタンド=人間が生み出した存在で、人間とリンクしている
経済の3主体である家計(国民)、企業、政府も、これと同じような構造になっています。
・家計(国民)=自然人
・企業=スタンド
・政府=スタンド
企業も政府も、自然人である人間がルールを決めて作ったものです。
政府であれば、「ここからここまでは我が国の領土で、こういう法律で運営します」と、観念の世界で決めているのに過ぎません。
企業は、その法律で定義された活動体(=法人)となります。
「国民は債務者ではなく債権者だ論」は、財政破綻をしなかった場合においては有効です。スタンドがダメージを受けていない場合、本体もノーダメージです。
しかし、政府が借金を返済できずに資金繰りが詰まった場合、国民は債権者から債務者にすり替わります。
歴史的には100年に1回あるかないかの確率ですが、財政破綻の度に、国民はインフレ税と財産税を支払って政府の損失を補填してきました。
企業が倒産した場合、ステークホルダーの人のみがダメージを受けます。しかし、政府が倒産した場合、全国民がダメージを受けます。
反対に国民(本体)が傷だらけになっていた場合も、スタンドである企業や政府が悪影響を受けます。
「国民は債務者ではなく債権者だ論」は、スタンドと本体の関係を完全に無視してしまっているのです。
財政問題は、スタンド(企業、政府)が勝手に動いて解決してくれるようなものではありません。村の主人公は、スタンドではなく私たちだからです。
本質的には、村人一人あたりGDPを増やしていくしか方法はありません。村人一人ひとりが現状を正しく認識して、行動していくことが大切です。