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いかにも日柄調整が足りない日経平均は本当に大底をつけたのか?=山崎和邦

米利上げ~市場が抱えるリスクと不確実性

米利上げに伴う株価変動は「リスク」であり、先週号で述べたM9程度の首都圏直下型地震や富士山の大噴火は「不確実性」の領域である。

フランク・ナイトは有名なシカゴ学派の中でリスクと不確実性を分けて考えた。彼の考えによれば、リスクは何が起こりうるかが判っているときに直面するものであり、様々な物事が起こりうる多様な可能性のことである。

カジノのルーレットで考えるのはリスクだ。これに対して「不確実性」は「知らない」ということを難しく言ったものであり、個人が制約のないリスクに直面している状況を指す。

つまり、真の驚き、驚愕、想像も出来ない範囲、想定外のこと、未知なる未知のものに溢れた世界に生きることの危険性を言っているのだ。

日本語としては主に経済学分野で使われ、1978年にジョン・ケネス・ガルブレイスの著書のタイトルが『不確実性の時代』と訳されたことから広まった。

一般には、意思決定者のコントロールし得ない事象の生起の仕方にさまざまな可能性があり、しかもいずれの事象が確実に起こるか判明しないとき、これをリスクと分けて不確実性と言っている。

リスクと不確実性の違いを言えば、リスクは確率である程度計算できる。そういういう限られた危険性である。不確実性は想定外のこと、驚愕的なこと、未知なる未知である。

ラムズフェルド元米国務長官の回顧録によれば、リスクとは「Known Unknown」であり、不確実性は「Unknown Unknown」である(『真珠湾からバグダッドへ――ラムズフェルド回想録』 ドナルド・ラムズフェルド著・江口泰子他訳/幻冬舎)。

フランク・ナイトの経済学観は、重大な不確実性への正しい理解に基づくものだった。経済学の中心的な役割は専門的な面の理論化ではなくて、神秘性の発見と「宗教的とまではいかないが倫理的な問題」と見做していた。

筆者に言わせれば心理学的な問題である。社会科学や経済学では、物理学と違って人々の「期待」が大きな意味を持つ。未来の市場は、こうなりそうだという人々の考えや期待から強い影響を受けて動く。

そのため市場モデルや経済モデルを構築しようとする場合には、必ず人々の期待を如何
にモデル化するかという難しい問題に向き合わざるを得ない。市場は常に人間の心理に
ある限りない複雑さに直面する。全員が合理的期待をすると仮定すれば市場プレーヤーはこの問題を回避出来る。 ところが市場のプレーヤーは皆が例外なく合理的な期待をしているというわけではない。だから筆者は書斎派の投資家はみな外れると言うのだ。

ところで、マーケットで経験のある熟練プレーヤーが初心者プレーヤーよりも普通は強
いのは何故か。これは体験知として、以上述べたようなことをよく承知しているからだ。

Next: 世界株式市場のチャート上の位置を要約すると

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