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なぜ日本人は「中古住宅」購入を敬遠するのか?政府が対策に本腰=川瀬太志

日本の中古住宅市場が抱える2つの問題とは?

日本国民は新築志向が強いと言われています。住宅市場に占める中古の割合は、欧米では7割以上なのに対して日本では15%程度です。古い住宅を維持・修繕をしながら継承していくというよりも、壊して新しいものを建てた方が良いという価値観が確かにあります。

政府としては、この成熟した環境共生時代に従来のようなスクラップ&ビルドを続けるのではなく、欧米のように中古住宅の市場を拡大していこうという方針があります。2025年までにリフォーム市場を今の約7兆円から12兆円まで伸ばす目標を掲げています。

背景には大きく2つの問題があります。

問題点(1):空き家問題

ひとつは空き家問題です。今、空き家は全国で約850万戸程度あります。今後20年くらいで少子化と人口減少で空き家はさらに増えて「2000万戸を超える」と予測する研究機関もあります。

家は手入れをしないとどんどん劣化していきます。老朽化した空き家が放置されたままだと地域の防災や治安、衛生面で悪影響を及ぼします。マンションでも空き室が増えると、維持管理のための修繕や改修の合意形成が難しくなります。空き家は放っておいてよい問題ではないのです。

空き家は過疎化が進む地域だけでなく、都市部にも多く存在します。そういう利便性の高い地域にある空き家からでも今回の施策で流通が進むといいなと思います。

問題点(2):住宅ストックの質・性能の問題

もうひとつは日本の住宅ストックの問題です。消費者から見て中古住宅流通の活性化を考えたときに懸念されるのが、新築と中古の性能の差です。今、日本の住宅は耐震性、耐久性、断熱性、省エネ性などにおいてすごく進化しています。住む人の命を守るためには家が耐震性を備えているのは必須ですし、健康やエネルギー消費のことを考えると断熱性省エネ性は高くあるべきです。

しかし、今の日本の既存住宅ストックの性能の現状はといえば…、厳しいものがあります。平成28年3月に閣議決定された「住生活基本計画」(国土交通書)の資料の中に、日本の住宅ストックの現状の表があります。それによると、

  • 日本の住宅ストック総数:約6,063万戸(その内、空き家は約850万戸)
  • 耐震基準ができた昭和56年以前に建築された住宅:1,500万戸(その内、耐震性不備が900万戸)

昭和56年以降に建築された住宅では、

  • バリアフリーと省エネのいずれも満たさないもの:2,200万戸
  • バリアフリーと省エネのいずれかを満たすもの:1,300万戸
  • バリアフリーと省エネのどちらも満たすもの:200万戸

となっています。

つまり、将来世代に継承できる良質な性能を兼ね備えた住宅はわずかに200万戸のみです。日本の住宅の性能が最近良くなっていると言っても、平成21年から始まった長期優良住宅として認定されているストックはまだ70万戸程度です。

これでは中古住宅を安心して買うことは難しいと言わざるを得ません。日本の住宅ストックは性能的に刷新する必要があるのです。だから今回の中古住宅リフォームへの補助についても、耐震性や断熱性などの性能を向上させるリフォームを促進するものになるのではないかと思います。質の悪い住宅を流通させるのは国のエネルギー政策にとっても国民の健康や財産価値にとっても良いことではないですからね。

Next: 中古住宅流通に向けて、いよいよ政府が本気になってきた

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