私がヘッジファンドマネジャーとして学んだ「少人数組織」運営の哲学=山本潤

最も難しいのが「チームの和」を保つこと

人間はとても愚かである。チームには、成績が個人に付きまとうので、成績が悪いメンバーは居心地が悪くなる。

そんなとき、自己アピールすることが、成績の悪い他のメンバーへの批判に至ることもある。人間は愚かだから、自分の価値観で他人を評価して、他人より自分を守ろうとする。組織は、リストラするとき、一番、成績が悪いものを切ろうとする。もしくは、一番、チームの和を乱すものを切ろうとする。あるいは、年齢や給料が高いものを切ろうとする場合もあるだろう。年配は、和を乱す若輩が嫌いであり、若輩はフットワークの鈍った年配が我慢できない。

他人のことは語らない。自分のことを語ろう」。他人を評価しない。自分を評価する。それを何回言い続けても、チームには必ず不協和音が生じる。そのときは、同じことを言い続けるしかない。チーム運営は我慢の連続である。

チームを運営するなら、「他人のことをとやかくいうのは愚かで卑しいことである」という認識をチームに定着させたい。だが、会社組織というものは、毎日のように、他人をとやかくいう人が出てくる(ため息)。人は言われたら言い返すから、争いとなる。結果として、チームは大きなダメージを負うことになる。

原則は、チームメンバー同士を比べることは愚かであるということだ。リーダーは、チームメンバーを批評してはいけない。比べてもいけない。

基本原則~今だけを見ずに、その人の過去や将来を評価する

人事の評価で、世間一般では通ることも、わたしには、おかしいと思うことがある。組織を管理しようとする人は、ほぼ全員「今」だけしか見てない。今日、遅刻すれば、今日遅刻したことを問題視する。

例がある。わたしは、経歴や学歴にこだわらないから、比較的、低い賃金でアナリストを新人で採用した。新卒で、年収は◯◯◯万円程度で採用した。証券アナリストとしては、安い部類だ。その安い給料が3年続き、その後は、毎年のように、給料を上げていったが、会社が厳しいときに、安く働いてくれたことを感謝している。安い給料で3年働いた人が、有給を3ヶ月とったとしても、十分におつりがくる。だが、いまその人が3ヶ月間休んだら、必ず文句をいう人が出てくる。文句をいう人は、過去の事情が見えていないのだ。

あるアナリストが体調不良になり、週に3日の勤務となったが、年収は下げなかった。「いままで十分に安い給料で働いてくれたから、この1年、働かなくても、会社にはおつりがくるよ」と会社は社員に伝えるのがよい。

会社が「今」しか見なければ、いつも全力で働くことを強いることになる。うちのチームはよく勉強するから、土日や夜間の大学へ行ったり、語学を勉強したりしているが、意味のある仕事をなすためには、どれも必要なことだ。

「今」しか見なければ、毎日、夕方から大学へ行くメンバーは、深夜まで働くメンバーと比べて、「サボっている」と見なされてしまう。しかし、その人の将来まで含めて考えれば、大学で身につけた専門性は、将来の会社の利益に還元されるはずである。

運用業務でいえば、いつも理解できるような文書ばかり読んでいるなら、意味のある仕事ができるはずがない。素人が全く理解できない論文を「なるほど、面白い」と感動する専門性を身につけてほしい。そして、そのアナリストが書いたレポートが素人に全く理解できないものであっても、わたしは構わない。理解できないのは、個人の学力や知識量の差であり、猿でもわかるようには物事は説明できるものではない。だから、一般人が読んでもさっぱり意味がわからないようなレポートでいいとわたしは思っている。

「今」しか見ない管理者は、いつからいつまで働いたとか、何時に会社に来たとか、他人を一律に「その日を基準に」評価しようとする。その人の過去と将来を評価し、今、その人が苦境にあるなら、寛容さを持って、接しよう。

いま、たとえ、サボっている人がいても、それは将来への栄養であると、ドンと構えよう。

Next: 叱ったり、注意したりは「費用対効果」で割に合わないという事実

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