私がヘッジファンドマネジャーとして学んだ「少人数組織」運営の哲学=山本潤

意味のあることを成す

わたしは、いつかアナリストが引退するときのために、アナリストにはこう伝えている。「自身が書いた作品(レポート)が、すべてつながり、ひとつの大きな歴史的な作品となるように、日々の仕事をしよう」と。

引退するときをイメージして、毎日、作品を書く。特許を読んでわからないならば、わかるように毎日、努力する。わかるようになったら、企業の特許を評価する。その評価手法を日々、深堀りしていく。企業の歴史を丹念に調べる。過去の製品についてネットにない資料を集める努力をする。

アナリストは、歴史家のようにレポートを社会のために残す。世の中の弱者に寄り添って、哲学者のように思考する。事業を科学者やエンジニアのような専門性を通して評価する。アーティストのように世の中に共感する。

我がチームは、そんなアナリストの集団であってほしいといつも願ってきた。意味のないことは最小限に止めて、意味のあることだけを成す人生を送ってほしい。

叱ったり注意したりすることは、費用対効果で割に合わない

リーダーは、メンバーを批評してはいけない。比べてもいけない。さらに、リーダーは、メンバーを怒る効果はない。叱る効果もない。諭す効果もなければ、教える効果もない。そのことをリーダーは悟るべきだ。諭したり叱ったりする技術は、一般的に難しいし、費用対効果が低い。叱る方は疲れる。叱られた方もつらい。叱るばかりのリーダーも、精神的にきついだろう。

叱る効果はあるのか。叱られることで、反発してしまう人もいる。反感や怒りをむしろ灯してしまう。丁寧に諭しているつもりでも、言われる当人は、それを好まない。特に、ちょっとした注意であっても、恨みを買うこともある。単なるジョークが言われた当人には我慢し難い侮辱となることもある。

叱らない職場はどうか。叱らないことで、「あれ、この会社、緩すぎない?ここまでサボっても、大丈夫なんだ!ルルルン。遅刻しても大丈夫なんだ。ルルルン」。そう思ってくれればシメタものである。こちらの思うツボだ。ああ、楽だなあ、自分はついているなあ、と「自然に」思ってくれるようになる。

そうなると、人間の内部からやる気が出てくる。誰からも言われないで湧き出てくるような、やる気。実は、そんな自発的意思が、創造的な仕事を可能にするからだ。ノルマでアートは生まれない。特に、運用は、発想の柔軟さ・自由さ・質が大切であり、何かを社会から感じとる作業である。疲れていては、感受性により起動するセンサーが作動しない。疲れていては、「社会を診る医者(=運用者)」にはなれない、ということだ。

ゆるい組織では、大体の人間は悪人ではないから、あまりサボってばかりじゃ申し訳ないな、少しは仕事しようかな、と思ってくれるのだ。最悪、人間が腐っている場合、組織の緩さに感謝せず、当人は、全く、反省せず、サボるばかりかもしれない。そういう人は言ってもわからない。サボってばかりのハズレを引いてしまったら、潔く、諦める

だが、対策もある。サボらないように、ハズレ社員でもできるような雑用をやって貰えば良いのだ。他のメンバーが喜ぶような雑用がいくらでもあるだろう。雑用であっても、組織にはプラスをもたらす。(わたしの経験上、サボる人は、頭がいい人が多く、株価もよく当てる。上手にサボれない人は、頭が固く、株が当てられるようには思えない)

兎に角、叱らないから、リーダーの負担はゼロだ。そして、叱らないことで得られる効果はプラスである。叱らない場合の費用対効果はとても大きい。叱るのは、「投資効率(組織運営効率)」が悪すぎるのだ。

会社としてやるべきことは、給料をしっかり払って、「社員の成長や利益貢献に応じた」昇級を実現すること。それ以外、会社は、何もいわずに、社員を放っておくのが一番だと思う。伸びる人は勝手に伸びるし、伸びない人はどんなに教えても伸びないのだから。

また、一流の仕事は「教えられない」。自分なりに学んでいくしか道はない。各人、ツボが違うので、自学自習以外に人は育たない。だから、教えてどうにかなるなどとリーダーは思い上がってはいけない。コーチングも不要だ。リーダーがメンバーを教えるのは、メンバーが自らの意思で「教えてください」と頼んできた時だけだ。

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