4月CPIは堅調。とはいえFRBの積極的な利上げはない
一方、4月のCPIは前月比0.2%上昇、コア指数は0.1%上昇でした。市場予想は両方とも0.2%上昇でした。
また、前年同月比では全体が2.2%上昇、コアは1.9%上昇でした。これも決して低い数値ではありません。
このような結果となりましたが、6月のFOMCでの利上げ確率は8割超と高く、6月のFOMCでの0.25%ポイントの利上下はほぼ確実といえます。
年内さらに2度の利上げ確率は46%と、指標発表前の54%からは低下しました。これは徐々に上昇していくことになりそうです。
小売売上高とCPIを見る限り、第2四半期の経済成長が再加速するとの見方が後退することはないでしょう。
とはいえ、FRBが積極的に利上げを推し進めることはないでしょう。
NY連銀のダドリー総裁は、量的緩和で膨らんだ保有資産の圧縮について「非常に慎重」に進める考えを示しています。
FRBが拙速な利上げや資産圧縮を行い、株価をわざわざ下げるような政策を取ることはないでしょう。
そのように考えておけば、金融政策への懸念を持つ必要はなくなります。
CPIが抑制されており、長期金利もいまだに3%にも達していません。まだまだ安心できます。
気を付けたいのは、将来的にFRBが急激な利上げを迫られるような局面になりそうな時だけです。
そのきっかけは賃金の上昇になる可能性がありそうです。U6(フルタイムでの仕事がなく、パートタイムで勤務している人たち)の失業率が改善してきていますので、この点には将来的には注意が必要かもしれません。
ダドリー発言をどう見るか?
一方、NY連銀のダドリー総裁の発言にはやや驚きました。
ダドリー総裁は、保護主義的な貿易政策で経済が「袋小路」に陥ると警告し、「政治的に点数を稼ぐことはできても、最後には米経済を傷つける」と発言しています。
トランプ政権が保護主義的な立場を取る中で、中央銀行幹部として最も力強い表現で自由貿易を擁護したといえます。
ご存知のように、FRBは政治的に独立した組織であり、議会に対しては説明責任を負っています。
その一方でFRB理事は大統領によって指名され、上院が承認する形となっています。
なんとも微妙な関係ですが、このような状況から、FRB関係者は、通常は財政政策について言及することを避ける傾向にあります。
しかし、「米国第一主義」の立場から貿易協定の再交渉や撤廃を掲げるトランプ氏が大統領に就任して以来、複数のFRB当局者が自由貿易の利点を強調しています。
ダドリー総裁も、「貿易の問題は米国経済の長期的な健全性や生産性、そして米国民の経済的な機会を危険にさらす可能性があり、今は非常に重要な岐路に立っている」としています。
トランプ政権は政策面できわめて厳しい状況に追い込まれています。これまで打ち出してきたオバマケア見直し法案や移民政策、為替操作国の認定など、すべてが失敗しています。
そのため、来年の中間選挙区に向けた実績作りのために、減税は必ず実行するでしょう。中身はどうでもよく、実行したという事実が欲しいわけです。
まずは減税を行い、税制改革は数年後に行うようなタイムスケジュールになるでしょう。