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NYダウと日経平均、利上げのアノマリー/ブラックスワンは何になる?=山崎和邦

日本国債が「投資不適格」になる日は来るか?

2019年10月の消費税率再引き上げを再延期するという可能性がある。そういう中で日本国債の格下げの方向をとるリスクは大きい。

下記の見方はJPモルガン銀行の為替調査部、JPモルガン証券の債券調査部、同社株式調査部の展開をまとめたものである。

日本の国債は格付けを何度も落とされたが、それにもかかわらず安定的に消化されているのは次の4つの背景がある。

  1. 日本国は対外純資産を豊富に保有している
  2. 経常黒字に反映される潤沢な国内貯蓄がある
  3. それに対して外貨建ての債務はほとんどない
  4. 国債の多くを自国の中央銀行が保有している

だが何年か後、いずれかの時点で経常収支が赤字に転落し、国内だけでは財政ファイナンスができなくなる場合が起こり得るとする。そうすると投資不適格に格落ちした日本の国債は大きな逆風となるだろう。

その影響は把握し難い。為替はどうなるか。過去の格付けが格下げされた際の円相場の動向については一定のパターンがない。それは格付けの背景にある要因が既にマーケットに織り込まれているからであろう。次に国債が格下げになると、銀行格付けも下がる可能性が高い。

日本の公的債務対GDPの比率は、今年度のGDP推計で言えば約240%前後だ。これは主要先進国のうち群を抜いて高い。短期国債を除いても発行残高は936兆円に達している。

2019年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げが再々延期される可能性も大いにある。そこで国債は再々格下げになる可能性が大いにある。格下げが何回もあったにもかかわらず、日本の長期金利は過去10年あまり低下基調をたどっていない(債券価格は下がっていない)。

これには上記に述べた4つの背景があることはもちろんである。日本の国債が投資不適格の格付けになった時にどういう見通しが起きるだろうか。

格付け会社ムーディーズは、日本の債務の規模は第二次大戦後に先進国が経験したことがどこにもないレベルに達した「アンチャーテッド・テリトリー(未知の領域)」と述べている。同社は初めてデフォルトの可能性にも言及した。「最もデフォルトの可能性は極めて低い」としてはいるが。

格付け会社は、経常黒字を稼ぎ出す能力や当該国のGDPの動向などはあまり重視せず、当該国家の政策が財政規律を重んじるか歳出削減を重視するかという点に大きく重点をかけているように見える。

2007年に福田政権の下で歳出削減を主軸とした財政再建方式がされると見通された時に、それはポジティブな要因としてS&Pが4月に格上げを行い、ムーディーズも10月に格上げを行ったことがある。このように、彼らの見方は財政規律と財政再建に重点が置かれているようだ。企業で例えれば、「物やサービスを作る力」「売る力」「稼ぐ力」などよりも、「経費節減、財務健全化」の方に重点が置かれて評価されるのが国債の格付け基準であるようだ。

前述した(1)から(4)までの背景をもう少し詳しく見てみると、

(1)日本国は対外純資産を豊富に保有している

経常収支、潤沢な国内貯蓄を背景に日本の経常収支は一貫して黒字を記録し続けており、日本が経常黒字を維持し続けることは、国債の安定消化の視点からも極めて重要である。

(2)経常黒字に反映される潤沢な国内貯蓄がある

対外資産を豊富に持っていること。これが潤沢にあれば、国内金利が急上昇するようなタイミングや自国通貨が暴落するタイミングでも、民間対外資産の巻き戻しや外貨準備による自国通貨防衛介入を実施することができる。

(3)それに対して外貨建ての債務はほとんどない

自国の中央銀行が国債を多く持っていること。これは国債の危機局面で、事実上無制限の国債買い入れオペを実施することができるということだ。ギリシャの場合は、ギリシャ国債がデフォルトする間際でも欧州中央銀行ECBはギリシャ国債の買い支えをしなかった。しかし日本の場合は、日本の国債がデフォルトする間際だということになれば、多額の買い入れオペによって暴落を食い止めるだろう。

(4)国債の多くを自国の中央銀行が保有している

外貨建て債務が豊富であること。90年から2000年代初頭に新興国で頻発した経済通貨危機では、固定相場制崩壊等に起因した通貨暴落を受けて、いくつかの国はデフォルトの危機に瀕した。外貨建ての対外債務が大きい国は、相対的にこういうリスクに対して脆弱である。日本の場合、政府債務の大部分は自国通貨建ての体内債務であるため、こうしたリスクからもほとんど隔離されていると見て良い。
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山崎和邦の投機の流儀 vol.258(5/14)目次

1)当面の市況1――満月の日に今年最高値を付けた先週
2)「先物主導で足踏みした」先週の相場
3)先週最終日の「幻のSQ値」
4)当面の市況2:
★上場企業の利益が拡大される
5)フランスが停めた欧州ポピュリズム
当面の市況3:
6)NYダウと日経平均
(上下の「方向」は連動するが、高低の「レベル」そのものは比較しても意味がない、ということ)
7)滞留する膨大な個人金融資産
8)米景気改善
9)米欧日の利上げのタイムラグ、過去半世紀のアノマリー
10)北朝鮮包囲網に問題
11)トランプ大統領の経済政策は動くか ── 次週に詳述したい
12)米朝が火力を使った戦争はあるか、についての補足
13)今後、「ブラックスワン」があるとすればそれは何か
14)日本の国債が投資不適格銘柄と格付けされる日が来るか
15)日米金利差と円安
16)「日米貿易摩擦」
17)以前に絶妙のタイミングで「ドイツ銀行株を買った」読者との交信

山崎和邦の投機の流儀 vol.257(5/7)目次

1)先週(2日間だけ)の市況
2)FRBは3日~4日の公開市場委員会FOMCで追加利上げを見送った
3)ドル建てで見た日経平均はITバブル最高値の2000年4月以来の高値
4)個人投資家の手元資金は豊富
5)先々週は今年最大の週間上げ幅
6)金正恩の挑発に軽々しく乗ってしまったトランプ
7)米朝が火力を使った戦争をやるか、それはやらない
8)トランプの経済政策と議会の折り合い
9)昨年6月のBrexit騒動に次いでまたまた欧州の政治イベントのリスク
10)手堅い投資家なら「休むも相場」
11)中東にも迫る政治リスク(5月19日投票のイラン大統領選の話し)
12)海外の重要イベントを控え様子見ムード
13)トランプラリー主導水準は一つの目途


※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2017年5月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2017年5月14日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。

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