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無効ではないけれど…だからこそ「家族を困らせる」遺言書とは?=山田和美

長男が不慮の事故で帰らぬ人に

しかし数年後。思いもよらぬ出来事が起こります。なんと、長男の一郎さんが、不慮の事故で帰らぬ人となってしまったのです。

まさか息子に先立たれるとは思っていなかった太郎さんは、すっかり意気消沈し、徐々に認知症の症状が出始めました。そして、それから数年後に、太郎さんは息を引き取ったのです。

実は、さらに大変なのはここからでした。

一郎さんの子である一夫さん(太郎の孫)が家の中を片付けていると、太郎さんの遺言書が出てきました。そこには、太郎さんがいかに一郎さんのことを誇りに思っていたか、いかにこの家を継いでもらうことが重要か…といった太郎さんの想いがしっかりと綴られていて、涙なしには読めません。

一夫さんは、遺言書には自分の名前は出てこないが、父の一郎がもらうはずだった財産は当然に自分が引き継ぐはずだと考えました。そして、太郎さんの四十九日も過ぎたころ、一夫さんが手続きに出向いたときのことです。

そこで、衝撃の事実を告げられました。

「この遺言書では、残念ながら、一夫さんに名義変更をすることはできません」。一瞬、事態が呑み込めませんでしたが、質問をしてわかったのは次のようなことでした。

  • 遺言書で「一郎に相続させる」と書いてある財産は、遺言を書いた太郎よりも先に一郎が亡くなったからといって、自動的に一郎の子である一夫のものになるわけではない
  • 「一郎に相続させる」と書いてある財産は、遺言書には書いていなかったことになり、他の相続人と話し合って行き先を決める必要がある

つまり、せっかく太郎さんが「一郎さんのために」と残してくれた自宅土地建物も預貯金も、もう1人の相続人である次郎さんと話し合ってどちらがもらうかを決める必要があるのです。

次郎さんが、自宅や預金を一夫さんの名義にすることに、すんなり同意してくれるとは思えません。一夫さんは、困り果ててしまいました…。

Next: どうすれば良かったのか? 心配症だと笑われるぐらいの備えを

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