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「普通に暮らす」という戦い。日本はあと25年で後進国化する=内閣官房参与 藤井聡

そもそもこれだけGDPが小さければ、「先進諸外国」との「物価の格差」も「賃金の格差」も拡大してしまいます。すなわちその頃の日本は、今では想像できないくらいに、「モノ」が安く、「所得」も低い国になっているわけです。

それはつまり「先進諸国」の人々が買えるようなものを、多くの日本人は買えなくなってしまうことを意味します。

しかし資源や食料の自給率の低い日本では、相変わらず石油やガスなどの「資源」や「食料」だけは、外国から買い続けなければなりません。とはいえ先進諸外国にとっては「さして高くない」石油やガスや食料品は、所得や物価の低いその頃の日本にとっては「とても高い」もの。だから、そんな必需品の輸入によって庶民の暮らしはさらに圧迫されることになります。

そして悲しいことに、「日本企業の価格」それ自体も縮小しているので、「ホンハイによるシャープ買収」のようなことが繰り返され、日本企業が「買いたたかれて」いきます(そして、そんな「企業の爆買い」を通して日本企業固有の技術はあらかた盗まれていくでしょう)。

しかもその頃には日本人は「安い賃金で働く労働力」と先進諸外国から見なされ始めますから、それがまた「日本企業の爆買い」を加速すると同時に(もちろん高額所得者は解雇、あるいは賃下げされます)、そんな「安い労働力」を目指した先進諸外国の企業進出も始められることにもなります。

そういう経緯を通して外資系企業の下で働く日本人がどんどん増えていきます。それはもちろん日本に雇用が生まれることを意味しますが、それは何も良い話しではありません。

なぜなら、上記のような経緯で日本に進出したグローバル企業の賃金は、純然たる日本企業のそれよりも「安い」からです。彼らはグローバル競争を勝ち抜くために「労働分配率」(売り上げに占める賃金総額の割合)を極限にまで下げようとしているからです。

しかも、日本人が提供した労働力で得られた「企業収益」の多くは結局、海外在住の資本家達に流出します。つまり、日本企業が減って外資企業が増えることは、日本が「経済的な植民地」へと近づいていくことを意味しているわけです。

――以上、いかがでしょうか?

中には、そんな暗い状況に日本がなるはずがないじゃないか、とお感じの方も少なくないかもしれません。

しかし、一握りの先進国を除けば、世界中のほとんどの国が「発展途上国」であることを忘れてはなりません。日本はこれまで、素晴らしく優秀な先人達の稀有なる努力の賜物故に「たまたま」先進国であったに過ぎなかったのです。私たちが努力を怠れば、瞬く間に発展途上国に転落するのも当然と言えば当然なのです。

しかも、これまで日本を含む先進諸国が発展途上国に対して一体どうしてきたのかを振り返れば、以上の指摘が今度は「後進国・日本」めがけて繰り広げられるであろうことは、容易に想像できるはずです。

それがグローバル化した世界経済における「GDPの小さな経済小国」の宿命です。

GDPシェア2%台(あるいは複利計算で推計するなら1%台!)の2045年の我が国は、GDPシェアが10%も20%もある経済超大国達に好き勝手にされてしまうわけです。

Next: 「日本の後進国化」という悪夢を避けることはできるのか?

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