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なぜ「歴史上最も働いている」日本人の生活は楽にならないのか?=田中徹郎

昔の日本人は、いったいどんな暮らしをしていたのでしょうか。今の私たちは、僅か数代前の祖先が考えもしないようなストレスに日々さらされていると言ってよいでしょう。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

「資本主義の限界」とは、私たちのストレスの限界かもしれない

2000年前の日本人の生活

今から2000年ほど前の日本人は、いったいどのような暮らしをしていたのでしょうか。

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朝は日の出とともに起き、お天気が良ければ田んぼや畑で農作業をし、日が沈むと竪穴式の住居に帰って家族と晩御飯を食べる。海の近くに住む人たちは、小さな丸木舟で海に出て、陸からさほど遠くない沿岸で魚や貝などを捕ってくる。そして時には山に入って木の実を集め、村に住む元気な若者たちは、弓を携えて狩りをすることもある。

彼らが口に入れるものは、その大半を自分たち自身が捕ったり採ったりしたもので、たまにほかの村の住人と交換することがあっても、お金でモノを買うことはない。きっとそんな生活だったのではないでしょうか。

どれほどがんばって働いたところで、お日様が沈んでしまえばそれでお終い、今風の基準でいう彼らの労働時間は、冬場では一日6時間がせいぜい、夏場でも10時間を超えることはなかったはずです。しかも仕事の内容はといえば、コメや野菜を育てたり、海に入って魚を捕まえたり、森で木のみを採ったりすることで、よほど私たちが毎日やっている仕事より、楽しそうな気がします。時間的にも余裕があったでしょうから、家族との団らんの時間も長かったのではないでしょうか。

現代の日本人は幸せか?

日本人の体格はこの2000年の間に大きくなり、平均寿命もずいぶん延びました、飢餓もありません。その理由の大半は、私たちが経済的に成長し、豊かな社会を築けたからであることは間違いないでしょう。

では、私たちはこの2000年で、より幸せになったといえるのでしょうか。

おいしいものを食べ、栄養状態がよくなり体格が大きくなったことは、きっとよいことなのでしょう。多くの病気を克服し平均寿命が伸びたことも、きっと幸せの一形態であることに違いはないと思います。

それでも人間の幸福は、それだけではないはずです。

この2000年…厳密にいえばその2000年のあいだでも、特に明治維新後の150年ほどのあいだに私たちの労働時間は伸び、さらに通勤という不思議な作業が発生し、多くの人間が農村や、海や森から切り離され、サラリーマンとして好きでもない仕事を強いられ、そして家族と過ごす時間を削られる…。

私たちは僅か数代前の祖先が考えもしないようなストレスに、日々さらされているといってよいでしょう。

それらを足したり引いたりすると、果たしてご先祖さまと私たちの、いったいどっちが幸せなのでしょうか。少なくとも、今の方が圧倒的に幸せだということだけはなさそうです。

ここのところ経済の拡大装置としての資本主義が、限界にきているという話をよく聞きますが、それは私たちが生身の人間として、急速に進む経済成長に対して、拒否反応を示しているのかもしれません。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2016年10月26日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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