サウジが提示した「国交回復の13条件」の危険な中身
以下がその13の要求項目の全体だ。これに対しカタールは即座に反応し、「実施不能」としてこれを非難し受け入れを拒否した。これは「我が国の主権制限が狙いだ」ともしている。
しかし、この13の要求項目は、日本の主要メディアではまったく報道されていない事態があることを匂わせている。
1. イランとの外交関係を変更し、外交使節団を引き上げること。カタールにいるイラン、革命防衛隊を追放し、イランとの軍事協力を中止すること。イランとの関係は、アメリカ及び国際的な制裁の枠組みが許容する範囲の商取引と貿易に限定すること。
2. ムスリム同胞団、アルカイダ、レバノンのヒズボラなど、テロ組織と認定された組織との関係を断ち切ること。
3. アルジャジーラとその系列局を閉鎖すること。
4. アラビ21、ラッサド、アル・アラビ、アルジャジード、ミドル・イースト・アイなどカタールが資金を提供している放送局をすべて閉鎖すること。
5. カタールに駐留しているトルコ軍を即時撤退させ、カタール国内におけるトルコ軍との軍事協力を停止すること。
6. サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、バーレーン、アメリカがテロリストとして認定するすべての組織や個人、グループへの資金提供を停止すること。
7. サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、バーレーン出身のテロリストや指名手配されている個人を、出身国に引き渡すこと。
8. 主権国家の外交政策に対する干渉をやめること。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、バーレーンで指名手配されている個人の受け入れをやめること。これらの国々の国内法に抵触した個人に対し、カタールの市民権を停止すること。
9. サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、バーレーンの反体制派グループとの連絡をやめること。このようなグループへのカタールの支援を示すすべてのファイルを提出すること。
10. 近年のカタールの政策が引き起こした損害を金銭で補償すること。補償額はカタールとの協議で決定されるものとする。
11. 2014年のサウジアラビアとの合意に基づき、経済のみならず、カタールの軍事、政治、そして社会政策を湾岸諸国と連携させること。
12. この要求の提出から10日以内にカタールはこれに同意すること。期間を過ぎると要求は失効する。もしカタールが同意しない場合、関係国がどのような対応を取るのかこの文書は規定していない。
13. 同意すると、2年目からは順守の査察を受け入れること。査察は3カ月に1回実施される。カタールは今後10年間、合意を順守しているかどうか監視される。
日本メディアが報道しない「大きな疑問」
カタールとイランはペルシャ湾のガス田を共有しているので、政治的に協力しなければならない立場にいることは理解できるかもしれない。しかし、要求項目にイランとの軍事協力中止やイランの革命防衛隊の追放が含まれているのはどういうことだろうか?
カタールとトルコとの親密な関係は知られている。現在、3000人規模のトルコ軍がカタールに駐屯している。しかしカタールは、イランとの政治的な協調関係を越えて、軍事協力や革命防衛隊の受け入れなどという軍事的な領域まで協力関係を深化させているのだろうか?
この要求が事実に基づいているとしたなら、それは中国の人民解放軍が日本国内に駐屯しているようなものである。サウジアラビアを盟主とするスンニ派諸国の宿敵と軍事協力し、カタールは反対側の陣営に寝返ったとも見える。いったい何が進行しているのだろうか?
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