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この夏、チャイナショック再来? 暗雲立ちこめる「米中密約」の行方=斎藤満

北朝鮮との不正取引に関与したとされる中国・丹東銀行への制裁指定は、トランプ政権初の「中国企業に対する独自制裁」です。これには伏線がありました。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年7月7日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

新たな米中冷戦の始まり。中国経済は共産党大会までもたない?

破裂寸前?トランプの堪忍袋

習近平国家主席が訪米した際、米中間で交わされたとされる「密約」に暗雲が立ち込めてきました。その密約とは、中国が米国に代わって北朝鮮の核ミサイル開発を阻止するかわりに、米国は米中不均衡問題を棚上げし、習主席が秋の共産党大会を乗り切れるよう、中国経済、株価や為替など市場の安定に協力するというものです。

もともと「黄禍論」が取りざたされるように、トランプ大統領は口先の表現とは違って、黄色人種のことを好きでもないし尊敬もしていません。安倍総理や習近平主席も例外ではなく、特別に親しいわけではないようです。それでも、トランプ大統領は習近平主席の下で米中冷戦を進めたいと考えていて、そのためには習近平体制が続いてもらわねばなりません。

このため、大統領選挙キャンペーンではあれほど中国に対して強硬論を示していたのが、コロッと変わりました。突然中国への評価が変わったのではなく、取引をしている間は問題を表ざたにはしない、というだけの話だと思います。それでも、この密約、取引が履行される限りは、人民元も中国経済も、従って株式市場も平穏なまま共産党大会を迎えるという前提でした。

ついに中国企業に「独自制裁」

ところが、この米中間の「握り」を脅かす動きがいくつか現れ、米中間に新たな緊張が走っています。1つのきっかけは、米国の大学生が北朝鮮に拘留され、昏睡状態で帰国し、亡くなってしまったことです。中国は直接関わりはないのですが、米国内の世論が北朝鮮の蛮行に対する反発を強め、トランプ大統領もその声を無視できなくなりました。

この一件のあと、トランプ大統領は中国に対して「努力はしているようだが、成果が見えない」と不満を表明しました。そして続いて、6月29日には中国遼寧省の丹東銀行を制裁対象に指定し、米国のドル決済システムから外してしまいました。トランプ政権が、中国の企業に対して初めて独自制裁に出たことになります。

丹東銀行は、国連などの制裁措置にも拘らず、マネーロンダリングなど、北朝鮮による不正な金融取引に関与したとされます。米国財務省によると、丹東銀行は北朝鮮の大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発計画に関与する企業の資金調達や、国際金融取引に関与していたとされます。今回の制裁で、同銀行は米国金融機関や外国銀行との直接、間接取引も禁じられ、ドルがとれなくなります。

これには伏線があり、トランプ氏が大統領に就任した当初、丹東銀行だけでなく、中国の4大国有銀行も米国の決済システムから外すとの話があったと言われています。これが実現すれば、中国の金融、経済は立ちいかなくなるので、習主席が慌てて訪米したと言われます。こうした力関係の下で「密約」が交わされれば、条件として中国側に厳しいものとなることは想像に難くありません。

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