Wiiの夢よ再び? Switchバブルに沸く任天堂株「PER100倍」の危うさ=栫井駿介

Wiiの世界的大ヒットからの急降下

任天堂と言えば、もともと花札やトランプを販売する会社でしたが、1983年に発売したファミリーコンピュータが大ヒットし、テレビゲームは子供たちの間になくてはならないものとなりました。

その後次々に新しいゲーム機を発売し、世界的なゲーム会社として順調に成長していましたが、大きな転機となったのが2006年に発売したWiiの世界的な大ヒットです。

Wiiのすごいところは、それまで子供やゲームマニア向けのおもちゃだったゲーム機を一般家庭に広げたことです。「Wii Fit」や「Wii Sports」は自ら体を動かし、なおかつ大勢で集まって楽しめるものとして、それまでゲームをやらなかった層にも浸透しました。

Wiiの販売台数は最終的に1億台を記録し、任天堂の売上高は3年で5,000億円から1.8兆円にまで伸びました。この時の勢いはすさまじく、「任天堂が世界を変える」とまで言われ、時価総額は国内3位にまで躍り出ました。

しかし、程なくして苦境に陥ります。Wiiへの需要が一巡し、一方でスマートフォンが普及して販売台数は一気に減少しました。リーマン・ショックによる不況も追い討ちをかけ、最高益からわずか3年後の2011年度には赤字を計上するまで落ち込んでしまいました。

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ブームに慢心して任天堂は落ちぶれてしまったのでしょうか。実は、決してそんなことはありません。

Wiiの需要が一巡した後の売上高は、発売前と同じ5,000億円程度です。ゲーム機は同じものを何台も買うことはありませんから、新商品の発売がなければ売上高が落ちていくのは必然です。

だからこそ、ゲーム会社は次々に新しいハードを発売し続けなければならないのです。

また、赤字になってしまったのは、Wiiが売れ過ぎてしまった反動です。急激に増えた需要に対応するため、人員を含む固定費が増加しました。ブームが終わると増加したコストが重くのしかかり、売上が元に戻っただけで赤字に転落してしまったのです。

もちろん、赤字を傍観していた訳ではなく、WiiUや3DSなどの新機種を続々と発売し、そこそこの売れ行きを維持していました。しかし、それでもWiiのヒットには到底追いつかず、コスト分を稼ぐのがやっとという状況だったのです。

そんな中、ついに救世主となるかも知れないのがSwitchです。社長の言う通りWiiと同じようなヒットになるなら、コストを大幅に上回る売上を達成し、「Wiiの夢よ再び」と考えることもできます。これが、任天堂を買う投資家の期待となって現れているのです。

ゲーマー以外の需要を取り込めればいいが、現実は厳しい

しかし、私はSwitchがWiiほどのヒットになる可能性は極めて低いと考えます。

Switchの最大の特徴は、家でテレビの大画面でも屋外でもゲームを楽しめることです。これにより、いわばWiiとDSの需要をまとめて取り込むのに成功したと言えるでしょう。

問題は、それがいわゆるゲーマー以外の需要を取り込めるかどうかです。

Wiiのヒット要因は「普段ゲームをやらない人」の需要を取り込んだことでした。現段階でSwitchにその要素を見出すことはできず、結局「ゲーム好きのためのおもちゃ」の域を抜けるのは難しいと考えます。

また、Wiiの時はまだスマートフォンやタブレットが普及しておらず、ゲームをするにはゲーム機を買うしかありませんでした。それが今や1人1台スマートフォン、1家に1台タブレットの時代です。簡単なゲームを楽しむだけならスマホで十分であり、Wiiのようなファミリー需要を取り込める可能性は高くありません。

仮にSwitchがWiiのような空前の大ヒットになるにしても、結局長続きしないと考えます。いくらSwitchが売れても、Wiiがそうであったように、やがて需要が一巡して再び減収に転じてしまうでしょう。

その点、数年おきに買い替え需要を生むアップルのビジネスモデルがいかに優秀かがよくわかります。

Next: 任天堂の株価は、相場全体の「浮かれ度」を測る良い指標かもしれない

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