盟友チャーリー・マンガーの言葉
当時のコカ・コーラが財務的にとても良い企業であることは、誰が見ても明らかです。しかし、財務だけでは投資すべき理由にはなりません。
バフェットの盟友チャーリー・マンガーは次のように述べています。
ベン・グレアムには、本質的な盲点がありました。高いプレミアムを支払ってでも買う価値のある企業が存在しているという事実を、あまりにも軽視していたのです。<中略>
少々高く支払ってでも、将来的に見れば関係を築いておいて損はない相手も、めったにいないけれど、いることはいる。
投資ゲームでは、常に質と価格の両方を考えなければならない。そのための秘訣は、支払った価格以上の価値を手に入れること。単純明快なことです。
「質と価格の両方」を重視しなければいけません。
当時のコカ・コーラのPERの推移
バフェットは当時、コカ・コーラ株をどのぐらいの割安度で購入していたのかを探っていきます。
当時のコカ・コーラ株のPERは、次のように推移していました。
バークシャーは1988年、1989年、1994年の3回にわけてコカ・コーラ株を買い増ししました。現在では、コカ・コーラの発行済普通株の9.3%に相当する4億株を所有しています。
1988年の買い付け時のPERが12~16倍の水準でした。コカ・コーラの株価は4~5ドルから一直線に上昇し続けて、1994年には19~26ドルまで上がって、6年前の5倍になっています。
バフェットは1994年にPERが20~27倍の水準でも、成長率が18%程度あるのなら割安だと考えて、最後の買い出動に向かったのでしょう。
圧倒的に割安だったコカ・コーラ株
1988年当時、コカ・コーラ株は圧倒的に割安でした。単純に1988年のPERが12~16倍で安かったと言っているのではありません。成長率と比較して圧倒的に割安だったのです。
1株当たり当期利益は毎年18%前後で上昇していました。その一方で、1988~1989年のPERは18倍よりも低い水準だったのです。
PEGレシオは一般的には次の公式で求められます。
<PEGレシオ>
PEGレシオ = 予想PER ÷ 予想利益成長率
<PERレシオで見る割安・割高度>
・1~2:標準的な範囲
・1未満:割安
・2超過:割高
このPEGレシオは、PERという単純な割安・割高指標に予想成長率を加味した指標です。下記の表のPEGレシオを確認すると、バフェットは「割安」の時にコカ・コーラ株を仕入れています。
1988年、1989年のPEGレシオは0.6~0.7だったのです。最も妥協した1994年でも0.9でした。1995年以降はPEGレシオが上昇してきたこともあり、買い増しを停止しています。
コカ・コーラは間違いなく「成長企業」でした。毎年18%前後で利益を増やす企業のPERが18倍以下だったら、これは「買い」なのです。
<PEGレシオの計算例>
18倍(PER)÷18%(予想成長率)=1(PEGレシオ)
バフェットは、PEGレシオという観点からも割安な水準でコカ・コーラ株を買い集めていたのです。