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レームダックTPP=青木泰樹 京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授

トランプ大統領の誕生を横目に、11月10日に衆議院本会議で「TPP(環太平洋経済連携協定)関連法案」が可決されました。TPPが米国の離脱により頓挫するのが間違いない中で、安倍政権がグローバル化を選択したことに唖然(あぜん)とするばかりです――京都大学レジリエンス実践ユニット・特任教授/経世論研究所客員研究員である経済学者の青木泰樹氏が解説します。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年11月12日号より
※本記事のリード文はMONEY VOICE編集部によるものです

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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年11月12日号より

レームダックTPP

英国のEU離脱(ブレグジット)に続き、
米国で共和党のトランプ氏が大統領選に
勝利したことに世界は驚かされました。

しかし、私たち日本人から見れば予想外のことであっても、
当事者である米国人からすれば必然的な選択であったのかもしれません。
米国と英国は、グローバル化の発信源であり、その先頭を走ってきた国です。
当然、グローバル化による経済的恩恵を享受してきたはずです。

グローバル化の果実はどのような味だったのでしょう。
おそらく今回トランプ氏に投票した人たちにとっては、
かなり苦い味であったと推察されます。

グローバル化の進行は必然的に格差を拡大させます。
それは先進国の勤労者の生活を犠牲にして、
グローバル資本に利益をもたらす仕組みだからです
(詳細は後述の拙著を参照)。

グローバル化は中間層の経済的基盤を切り崩し、
解体させ、下層へ突き落すプロセスなのです。

明らかに今回のトランプ大統領の誕生は、
当初「トランプ現象」と呼ばれた一過性の社会現象ではなく、
地に足のついた中間層による「現状の経済ルールから脱したい」
という欲求の表れに思われます。

さらに大統領予備選で市場原理の暗部を指摘し政府介入の必要性、
すなわち民主社会主義を訴えた民主党のサンダース議員に
多くの支持が集まったことを考え合わせるならば、
共和党支持、民主党支持を問わず大多数の米国人が
グローバル化に否定的な考えを持つに至ったと考えられるのです。

柴山桂太先生が紹介されたダニ・ロドニックの
「世界経済の政治的トリレンマ」、すなわちグローバル化、
国家主権、民主主義という三つの目標を同時に
達成することはできないという構図の中で
今回の結果を当てはめるとどうでしょう。

まさしく、疲弊しつつある中間層が大統領選挙という
「直接民主主義」を梃子(てこ)にグローバル化に反撃したのです。

「No!」を突きつけた。

その意味で、ブレグジット同様、反グローバリズムの
狼煙(のろし)が本家米国でも上がったと考えられます。
グローバリズムに殴られっぱなしの中間層からの反撃が、
各国でようやく開始されようとしています。

Next: TPP関連法案を可決、反グローバル化に逆行する安倍政権

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