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米国で想定される2つの金融政策~「順番とタイミング」が焦点に=福永博之

久々の日銀サプライズ

日本の金利水準を確認してみましょう。グラフで最も高いところは0.1%近辺です。逆に一番低いところは、マイナス0.3%をつけています。そこまで低くなった理由は、日銀がマイナス金利を導入したことによるものです。ただ実際に導入が発表された後は、一旦落ち込んだものの回復し、日銀はマイナス金利を継続しているものの、実際の長期金利はプラスを維持しているという状況です。

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そうした中で、消費者物価指数の推移を見ると100を超えてきていて、なんとなく高止まりの様子を見せています。これまでは戻そうとしても戻しきれずに押し返されていたわけですが、今回は2カ月連続で上昇しています。

世界情勢を見ると、アメリカは利上げ、ないしはバランスシートの縮小に入っており、一方、ユーロ圏ではECBがテーパリングをするかもしれないとして、ドラギ総裁が景況感にも前向きな話をしています。そうした中で、日本でも長期金利がやや上昇してきているとなると、日銀も出口戦略などという話が出るのではないかとマーケットは考えてしまいがちです。

そこで重要となるのが、今回の金利の低下局面です。実際に黒田総裁が指示をしているのかどうかは分かりませんが、前にも黒田バズーカは2月14日に行われ、バレンタインデーの贈り物などと言われました。そして今回も七夕の7月7日に日銀は行動を起こしたのです。この日、日銀は指値オペというものを実施しました。

債券は、価格と金利が逆相関になります。価格が上がれば金利は低下するわけです。そこで日銀は指値オペといって、いくらで買いますと定めたオペレーションを通達したのです。つまり、高い値段で買うということで、それだけ金利の低下につながるのです。ではどれだけ買うのかというと、今回のオペレーションでは無制限で買うとしたのです。指値オペで出てきたものはすべて買うとやったわけです。

黒田日銀は相当がんばっている

金利の上昇傾向で日本も出口かと言われていたところに、日銀は低金利を続けるのだという姿勢を、今回の7月7日の指値オペではっきり示したのです。しかも、そうした行動はサプライズだったので、金利はその後再び低下傾向になっています。日本が出口戦略に向かうなどということは時期尚早、それほど早いものではないというメッセージをマーケットにはっきり見せたというところがポイントなのです。こうしたことにより、国債の価格も安定しているのです。

そして為替についても、アメリカの長期金利が低下してくれば日米の金利差は縮まるので、日本の金利低下の余地もそれほどない中でアメリカ金利が低下すると、どうしても円高になりがちです。しかし以前のように100円台前半にはなっていません。これも、日銀の示した姿勢が背景にあります。この指値オペを行った当日も大きく円安に触れました。

市場へのメッセージマーケットの安定円安、この3つの効果を狙ってオペを行っていたのだとすれば、これは相当がんばっていると評価できることだと思います。これまでの日銀の総裁たちは何をしていたのかと思うほどです。そしてこうしたことが、信頼の蓄積、積み上げにつながって、何かをしたときに大きなインパクトになるのです。あるいは、出口戦略などの話になったときのインパクトを、逆に小さくするような、マーケットの信頼に結びついていくことになるのです。今回の政策は、非常に意義のあるものだったと思います。


※本記事は、グローバルマネー・ジャーナル 2017年7月26日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に無料購読をどうぞ。

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・米国で想定される2つの金融政策(福永博之)(7/26)
・ソフトランディングなきBREXITは撤回すべき(大前研一)(7/19)
・日本株PER低下!割安でまだまだ買う余地あり?(田口美一)(7/12)
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グローバルマネー・ジャーナル』(2017年7月26日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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