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FOMC通過で見えた「投機筋の誤算」この円高の本当の理由は何なのか?=E氏

今後当面は円高基調

次に、今後の円相場の方向性ですが、需給的要因との綱引きがあるものの、当面は円高基調で見ていたほうが良いでしょう。

まず、ドルはトランプの政権不祥事による政治に対する失望感が続いているほか、従来から経済統計は決して強くなくあくまでも期待先行だったことを考えると、当面買い材料に乏しい状況です。投機筋のドルショートポジション構築は始まったばかりで、建玉残高ピークまで十分に余裕があることを考えると、当面ドルは売られやすいでしょう。

一方の円は、このところの円高にも関わらず、投機筋は円ショートを数年来のピーク水準まで積み上げていました。つまり、円高の主因はヘッジファンドなどではなく、実需や一般投資家の円買いニーズだったのです。

投機筋以外の投資家がなぜ円買いに進んだかは、円相場と連動性が高い安全資産であるゴールドとの連動性が保たれているのでも判ります。ゴールドがこのところ買われているのは、トランプ政権に対する先行き不透明感による安全資産需要の高まりなので、円相場も同様に安全資産需要で買われた可能性が高いです。

この反面、投機筋がなぜ年初来減らし続けていた円ショートを今月に入って再度積み増し始めたかは定かではありませんが、ショートポジション積み増しペースがイエレンFRB議長の議会証言以降であることや、5月以降軟調だったFANG関連に対する買いが戻ったタイミングと一致していることから、恐らくは「マーケットのリスクオンがしばし継続する」と判断してのショートポジション積み増しでしょう。

しかし、金融当局者の発言がハト派だからと言ってリスクオンになるわけはなく、経済環境や政治情勢がリスクオフ的な場合、当局者はハードランディングを避けるためハト派の発言でマーケットを落ち着かせることも十分有り得るわけです。

すでに余力一杯の円ショート筋

この数ヶ月タカ派に転じたと目されていたイエレンFRB議長が、なぜ今月中旬の議会証言で突如ハト派的発言をしたかは不明ですが、物価上昇率が目標未達の中、トランプ政権誕生を囃して期待インフレ率のみが先走って上昇した結果のリスクオフマーケットだったので、政権に対する信認が低下した以上、物価上昇率が目標に到達できないのは一時的かどうか微妙になってきたと考えてのことでしょう。

となると、イエレンFRB議長のハト派修正もこのところのトランプ政権のゴタゴタに伴う先行き不透明感に根ざしているわけですので、発言がハト派だからといってマーケットがリスクオンになるような性質ではないのは明らかです。

これを投機筋が見誤って円ショートを積み上げたとすると、円相場は早晩急激な上昇を伴う可能性が高いことを示唆しています。というのも、投機筋の現在の円ショートの建玉残高水準はこの5年ほどのピークを超えているので、これ以上の積み増し余力に乏しくなっていると思われます。

その一方で、29日未明の北朝鮮によるICBM発射での円高シフトのように、地政学的リスクからの円高リスクも依然として残っているため、投機筋のショートポジションは踏み上げられやすくなっています。

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