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完全に土俵を割った「改憲ひとり相撲」安倍政権はいつ終わるのか?=高野孟

安倍首相は10月解散を決断できない

第2に、10月解散論が浮上する1つの理由は、22日に愛媛3区青森4区で、いずれも自民党衆院議員の死去に伴う補選が設定されており、これに野党が候補者調整に成功して一本化して臨めば自民が2敗する可能性があるので、野党にそこに力を集中させないために解散・総選挙を被せて引っかき回してしまった方が有利ではないか――という点にある。

が、これはあまりにも党利党略的な、まさに解散・総選挙の弄びで、忙しい国民はそんなことに付き合っている暇はない。

しかも、秋の臨時国会では冒頭から加計・森友問題が再燃するなど、支持率が再び下落する可能性が大きいなかで、無理に解散に持ち込むということは、現状の“改憲勢力”3分の2を自ら投げ捨てて、自公で何とか過半数を確保して政権を維持することはできるだろうという、かなり際どいギャンブルに打って出ることになり、それはとりもなおさず、改憲発議を断念するという意味になる。

ところが、安倍にとって情熱を注ぐべき大きな課題はもはや改憲しか残っていないのだから、こんなところで頓狂な解散を打って、敗北すればもちろん引責辞任だし、過半数を確保しても改憲はできずにアイデンティティ喪失状態に陥るだけである。

あまりにも馬鹿げた話なので、いくら安倍でもこの選択はしないのではないか

「日程ありき」ではなくなった改憲

安倍は組閣後の会見でも、その2日後の読売テレビ番組でも、自らが5月に宣言した

  1. 臨時国会中に自民党の改憲原案をとりまとめ
  2. 来年通常国会中に衆参両院で改憲を発議し
  3. 2020年に施行する

――というスケジュールについて、「日程ありきではない」と言い出した。

これは安倍にとって重大な後退で、それが直接に意味するのは、「臨時国会中に自民党案がまとまらなくても仕方がない」ということである。

この日程は、安倍が、自民党の3役はもちろん憲法改正推進本部の保岡興治本部長をはじめとする憲法族と相談して決めたことではなく、日本会議系の団体へのビデオメッセージと読売新聞インタビューで一方的に表明して彼らに押しつけようとしたものであるから、もしその通りにならなければ安倍が一人で責任をとらなければならない。どうも党がまとまりそうもないので、予め逃げを打ったのである。

しかし、ここで滑ると、次に一体いつまでにまとまるのかは、何の保証もない。そのまま自民原案提出見送りとなれば、そこで安倍流改憲は挫折し、彼の政治生命も終わる。何とか原案がまとまったとして、公明党や野党との本格的な議論が始まるけれども、こればかりは審議打ち切り、強行採決というお得意のやり方は通用しないから、いつまでかかるのか分からない。

来年の通常国家中に発議という安倍が希望する日程も当然、先送りとなり、そうなると発議よりも来年9月の自民党総裁選が先になるのだが、改憲で半ばずっこけた形の安倍は(それまで政権が続いていたとして)何を訴えて3選に挑むのだろうか

国民の間にも「安倍の改憲ドタバタ劇はもう結構だ」という気分が今以上に広がっている公算が大きく、もうヨレヨレの安倍よりも野田聖子小泉進次郎ガラッと目先を変えないと総選挙が戦えないというような機運が生じているかもしれない。そこで安倍がコケれば、彼流の改憲もご破算となる。

Next: 万一、安倍首相が18年9月に3選を果たしたとしても…

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