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藤久、営業利益で初の赤字に 今後はニーズを捉えた品揃え・値ごろ感で挽回を図る

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2017年8月24日に日本証券アナリスト協会で開催された、藤久株式会社2017年6月期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料

業績推移

後藤薫徳氏:私どもの前期の57期(2017年6月期)の決算です。あとで、58期(2018年6月期)以降の方針をお話しいたします。

非常に厳しい決算でして、営業利益で初めての赤字です。400万円の赤字になりました。これは、原因は既存店舗の売上減少が止められないというのが大きな原因です。

これは今にはじまったことではなくて、10年以上前から続いています。10年以上前から、ある意味ジリ貧であったと言えます。

それで、なぜ既存店舗の売上が落ち続けるのかということです。これは、お客さまの満足度・要望と、値ごろ感・品揃え・商品力が、乖離したということです。ここが大きいなと最近痛感いたしました。

我々がこの10年間やってきたことは、粗利率の向上です。それから在庫回転率の向上と、中小型店の出店をやってきました。

粗利率の向上と言うのは、私どものプライベートブランド商品に粗利の高い商品がありまして、それをもっと増やそうということです。

そして、売価を原価の上昇にもとづいて上げたこともあります。粗利を上げるために売価変更をして、高く値段を上げたことも、過去にありました。

そして、年に6回ほど大きなセールがありましたが、この価格も上げました。さらに在庫回転率の向上ということで、在庫も減らしてきています。

こういった、我々のやってきたことが、結果的にお客さまの値ごろ感ではなく割高感になったということ。それから、欲しいものが少ないこと。在庫量がなくて(商品を)選べない。プライベートブランド商品ばかりでメーカー品が少ないとか、こういった満足度から、マイナスになってしまったと思っています。

そしてもう1つの(営業利益の要因は)52期・6年前からの方針で、中・小型店を中心に出店の数を増やしたんです。私ども以外に競合店も、このあたりから出店攻勢・多店舗化が見られたものですから、負けていられないと、我々も同じ方針で出店をたくさん増やしました。

とくにこの6年間の店舗の収益は、非常に悪いです。私も今思えば悪いものですから、第1四半期から第2四半期で、悪いかどうかを立ち止まって見直すことが必要だったなと(思いました)。それでも、いずれ良くなると(想定してここまで)きてしまったんです。

結果的には、営業利益が前期はマイナス400万円。(営業利益が)悪いものですから、減損も増えました。減損が2億8,800万円。そして、税前の利益がマイナスの2億9,700万円という悪い結果になりました。

そして、法人税とその調整額も、2億2,500万円ございました。当期純損失がマイナス5億2,000万円と、過去一番悪いという結果になりました。

過去10年間を見ますと、16.1パーセントの既存店の売上が下がっているのです。これは、単純に10で割りますと、(毎年)1.6パーセントぐらいです。1.6パーセントの既存(店の売上)が、10年間毎年下がったということです。

ただ、押し上げ効果もあります。「クライ・ムキ式ソーイングスクール」というものがございます。(お客さまに手芸を)教えることを非常に注視しております。これをやらないと、新たなお客さんが生まれないということです。これが毎年、だいたい1パーセントぐらい押し上げ効果があります。

これがなければ、たとえば(プラス)2.5パーセントぐらい、(さらに)下がっているということです。

2018年6月期 利益計画

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今後の方針として、粗利率から粗利額へ・それから目先の利益から将来利益へと掲げました。今までは割高感や品薄感ということがありました。いくらか客離れがもうすでにあると私は思うのですけれど、これからは価格の見直し(を図り)、いわゆる競合他社と同等にする(方針です)。

それからセール時の値ごろ感・割安感を出す。あと品揃えです。値ごろな生地のボリュームを増やす。これはいくらか、もうすでに進んでいます。そして、お客さまの要望がある商品を増やす。

こういったことをやっていくことによって、お客さまの満足度を高めて、来店客数を増やす。売上増と粗利増に持っていきたいということです。今は教えること(クライ・ムキ式ソーイングスクール)がないと、概略で1年平均2.5パーセントぐらい、既存(店の売上)が落ちるのです。

これを、こういった値ごろ感と品揃えによって、プラスマイナスゼロにまで持っていきたいなと(考えております)。いわゆる、ゼロベースで落ちないということです。そのような方向で、今動いております。

2018年6月期 出退店計画

藤久、営業利益で初の赤字に 今後はニーズを捉えた品揃え・値ごろ感で挽回を図る

そしてそれに加えまして、教えることで加算を図ります。これはいわゆるカリキュラム講習会で、いちばん大きいものがクライ・ムキ式ソーイングスクールというものです。それ以外にも、カリキュラムの講習会を前期まで3種類スタートしています。

それを今期新たに3種類増やして、6種類。全講座数は、前期は269講座ありましたけれど、今期は368講座まで増やしてまいりたいと思っています。

2018年6月期・中期経営方針

藤久、営業利益で初の赤字に 今後はニーズを捉えた品揃え・値ごろ感で挽回を図る

それによって、カリキュラム講習に関する売上が約プラス4億円。これは200億円ですから約2パーセントです。

それ以外に(方針として考えている)もう1つは、ビーズスタジオというコーナーです。これは、手作りアクセサリーです。このコーナーを前期17店舗、店舗内にコーナーとして作りました。

これは(今まで)私どもは弱かった部類です。我々のお客さまより、もう少し年齢層が若い、手作りアクセサリーをやる方々の需要を増やすために、17店舗コーナーを作りました。

これを新たに今期は、22店舗コーナー展開をいたしますので、合計39まで増やす。こちらで約3億円の売上増です。教えることとビーズスタジオで、それぞれ4億円と3億円(の売上増)で、約7億円になります。200億円のうちの約3.5パーセントを、売上増加として持っていきたいと思っています。

そしてここ6年間で、赤字店舗をずいぶん作ってしまったものですから、この赤字店舗の閉鎖を行う。今期は30店舗閉鎖に向けて、進んでいきたいと思います。

従来は主に新店舗の設備投資が中心にあったのですけれど、今期以降は、それを既存店舗(を一部改修する)。いわゆるこういったコーナー作りをして、また改装してオープンします。この店舗の改装等に(設備投資を)回していって、新店舗から設備投資を既存店舗に振り分けていきたいと思います。

そして今期、店舗と(EC)通販の融合ということに力を入れていこうということです。以前から10億円程度EC通販をやっておりまして、これと店舗を融合していこうということです。来年4月末に、我々が(開発を)やっているアプリが完成する予定です。

私どもの店舗のお客さまは、現在約120万人の有料会員です。有料会員さまには、年会費500円をいただいておりますので、割安で買える。この120万人ぐらいの有料会員さまと、多分350万人ぐらいいる非会員さま。

この合計470万人のお客さまの、40パーセントが180万人になります。(この人数のお客さまに)アプリ会員になっていただくと(考えております)。

(資料下部の表をご覧ください。)これは私どもの60期(2020年6月期)までの目標です。これを目指して、会員の獲得をしていきたい。そして、お客さま情報の有効活用によって、店舗とECとの相乗効果を図っていきたいと思っております。

以上、私から58期以降の方針をお話し申し上げました。このあとは、ご質問がございましたら、お伺いいたします。

EC通販の売上状況・海外展開

質問者1:ご説明ありがとうございました。スパークスのスギモトと申します。(御社の決算説明会に)初めて参加させていただきました。2点お聞かせいただきたいです。

1点目。通販の売上が、それほど思ったより伸びていない状況だと思います。これは先ほど社長がおっしゃったように、お値ごろ感・品揃え度とかがやはりネックになり、なかなか通販も思ったより伸びないと理解していいでしょうか。

後藤:通販は、手芸用品が6億円ぐらいです。それ以外のものもやっておりまして、生活雑貨でございます。そちらが、大幅に落ちています。いちばん本業の手芸だけですと、伸びています。

生活雑貨というものも、いくらかやっておりまして、ほとんど楽天の中に入っています。それが大幅に落ちています。なぜ落ちているかというと、一部にヒットした商品がありました。

私どもは、その(ヒットの)前に(売上を)伸ばしたのですけれど、それが競合他社と同質化を生んだ。(競合他社の)みなさんが真似するものですから、それがあって、キャンプ用品その他・服飾用品がぐっと落ちておりました。

通販全体ではマイナスであまり伸びていないかっこうになっているのですけれど、手芸だけは今、ECは伸びていると思います。

多分、10パーセント以上は伸びていると思います。1億5,000万円ぐらい伸びていると(聞きました)。

質問者1:ありがとうございます。2点目は、海外展開の将来的な可能性についてお聞かせください。手作りというニーズは、日本のみならず海外にも多くあると思います。今、観光客も大幅に増えてくる中で、観光ニーズも、物を買うよりも体験することが強くなっています。

後藤:そうですね。

質問者1:日本国内でも500店舗ぐらいお持ちになっていると思います。そういう状況下、(手芸)教室も非常に多く開いている中で、海外に向けて、どういうふうにお考えになっているのか伺いたいです。

後藤:今は考えてないのですけれど、海外にはこういった、いわゆる手芸クラフトというものは、アメリカがいちばん大きいです。ソーイング中心に、圧倒的に大きいです。それからヨーロッパも、刺繍などが過去からあります。中国はあまりないですね。

東南アジアでは、韓国と台湾にこういった文化があります。ただ、私どもはまだ考えていないです。海外展開への可能性という意味では、ECというかたちがありますので、ECでいくとかですね。

店舗出店をアジアでやるとか、そういう可能性が、僕は十分にあると思っています。ただ、まだ足元がこのような状態で、あまり海外(の展開のこと)を言っていられないものですから。まず、国内で今やっている本業から立て直しをして、というふうに思ってます。まだ、(海外展開をしようという)気持ちは、私どもにまったくございません。

質問者1:最後に、この資料を拝見すると、将来的には1,000店舗ということを構想しておられるという、社長のコメントがありました。ただ、お話をお伺いすると、ここ3年ぐらいは少し不採算店舗を閉鎖するということでした。

店舗数縮小の方向を取って模索されるということですが、一時的に今は足元を固めても、将来的にはやはり、さらにその次の成長へ目指していく。その中で、1,000店舗というのは、構想としてまだあると理解してよろしいですか。

後藤:多分、もう少し(調子が)いいときに、気分も高揚して言ったかもしれません。

ただ、今は(店舗数を)縮めて収益力を上げなくては、こんなもの(現状の収益)ではダメなものですから。そして、またこれが良くなれば、もちろん成長しなくてはいけないものですから。

(収益が)よくなれば、また伸ばせるチャンスが出てきますので。次(の目標が)1,000店舗かどうかはわかりませんけれど、もう少し多店舗化を図っていきたいという気持ちは十分にあります。

スクラップアンドビルドの概念

質問者2:東京スター銀行のサイタと申します。海外進出はまだお考えがないというところですが、スクラップアンドビルドについてお尋ねします。

店舗展開は1,000店舗という目標を掲げられていて、昨年度は18店舗出して、25店舗閉鎖されている。その閉鎖と、スクラップアンドビルドの概念・御社の考え方はどういうものでしょうか。

後藤:スクラップアンドビルドは、本来スクラップはしない方がいいんです。(売上が)いいときは、私どもは(スクラップは)していませんでした。ビルドばかりでした。

スクラップをなぜするかというと、競合も含めて、店舗が悪くなるからです。これはお金もかかるし、損も大きいものです。世の中でもチェーン店をやっている会社は、きっとビルドばかりがたくさんあります。

既存(店舗の売上)が良くなれば、僕はスクラップは減ってくると(思います)。それがいいかたちなので、それを目指したいと思っております。

立地は永遠ではないものですから、止むを得ずスクラップは出てきますけれど、既存を上げていければ、僕はスクラップの数は減ってくると思います。

きっとうちの過去の業績を見ても、業績が悪いときはスクラップが多いです。いいときはスクラップがなくて、ビルドがずっと多い。最近は逆ですから、悪い証拠です。

質問者2:ありがとうございます。もう1点質問です。まだ海外展開・インバウンドはお考えではないということでした。御社は国内のマーケットに対する情報発信・御社のアピールを、メインではどういうことをやられているのでしょうか。

後藤:「情報発信」というのは、会社のアピールという、お客さまに対することでしょうか?

質問者2:製品のアピールですね。新製品のアピールとか、モールに入られるとか。そういったときの、御社の他社さんとの差別化に対する、顧客へのアピールです。

後藤:ふだんの営業上している、お客さまにいかに売るかという、そういうアピールではないですね?

質問者2:はい。

後藤:「PR情報」を配信している会社がございます。そこに毎月定期的にお願いをして、そこからどんどん発信していくということぐらいです。

あとは、いかに私どもがお客さまにどう売るかということを、店舗にいろいろと指示しています。あとDMと、いくらか地元のテレビCMを、営業ではやっております。私どもの、いわゆる会社のアピールということについては、今のPR情報です。

毎月いろいろな商品が出ますので、そちらにお願いして情報を配信していただくということです。あと私どもは、「Craft Town」という(手芸・ハンドメイドの)情報発信サイトをやっていますので、そのネットで発信をするということぐらいです。

質問者2:ありがとうございます。

手芸マーケットのシェア

質問者3:最初の社長のお話の中で、ここ10年で16パーセントぐらい既存店売上が減少したということでした。その要因として、値ごろ感と品揃え、御社の内部的な問題・課題が、既存店の減少につながったと理解しました。

その一方でマーケット自体のシェアとか、全体も厳しい状況なのではないかと思います。

そういう意味では、御社として10年間、競合他社以上に厳しい状況にあった。シェアとしては10年間で落ちてきたという認識をしていいのでしょうか。過去10年間を振り返られた、御社の立ち位置・シェアをどう見ていらっしゃるのでしょうか。

後藤:私は以前この場でも多分言っていると思います。市場は1,500億円と言っておりますけれど、この前市場を調査する会社にも聞きました。もう少しあって、1,800億円と言ってました。そちらの方が正しいのだろうと、私は思っております。

1,800億円だとしますと、我々のシェアは(10年間)同じです。ずっと10年間、200億円ぐらいで推移しております。でも1店舗閉鎖すると、その分を維持するために新店を出しています。

多分市場はこの10年間で多少縮んでいると思いますが、当社の売上高は横ばい。ですから、少しシェアは上がってきたのかもしれません。たとえば(収益が年に)1.6パーセント下がったと言いますと、ここ10年、その半分ぐらいは、ECと100均に食われているのだろうと私は思っています。数字をきちんと出したわけではございませんけれど。

それ以外に、競合他社もあります。私どもとそれ以外の2社の売上規模が同程度なので、ここ4・5年ぐらい、出店をかけました。

(その結果は)悪いのです。市場がそんなに上がっていなければ、ずいぶん食い合ってみなさんも悪いのかなと思っております。

質問者3:了解です。もう1点、店舗数のところで質問です。1年間で30店舗閉鎖するというお話でした。これは、6年ぐらい前から出店を加速した店舗の閉鎖が多いのか。あるいは、もっと古い経年化した店舗なのか。どんなイメージでしょうか。

後藤:最近の店舗が多いです。

質問者3:立地の検討が少し甘かったとか、そういう部分が要因ですか。

後藤:出店の方針もまずかったうえ、店の立地の検討も甘かったのです。競合が増えるものですから。量販店の中でもいいところに入ろうと思うと、大きな場所が取れないので、はじめのころは小ぶりの店舗でした。

なるべく小さな場所で合うような、中小型店舗を5年ぐらい前に作ったのです。そういったものは、非常に採算が合いづらいです。今おっしゃったご質問の、(閉店対象の)30店舗の多くは、ここ5・6年のあいだに店舗化したところが多いです。

質問者3:最後に、30店クローズすることで、だいたいどれぐらいの損益の改善を期待していいのか。もしご開示いただけるならば教えてください。

後藤:これはまだ、30店が具体的に決まっていないため、言えません。おそらく、マイナスが20億円の売上と2億円ぐらいの利益であろうと……。ですから、これはもう一過性で上がるだけで、基本的に毎月どんどん落としているのはまずいのです。赤字はまずいのですけれど、これは改善しても、2億円ぐらいしか効果はありませんから。

質問者3:ありがとうございました。

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