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経済を強化する方法は基本的に投資しかない!4つの投資方法をリスクと期間別に解説

経済の三要素「モノ」「ヒト」「技術」を強化する、つまりは生産性を高める方法は、基本的にはひとつしかない。すなわち「投資」である。

具体的には、「モノ」の強化のために設備投資、公共投資、「ヒト」の強化のために人材投資(ヒトの雇用含む)、「技術」強化のためには、もちろん「技術開発投資」である。

さて、設備投資、公共投資、人材投資、技術開発投資の四つは、それぞれ、

●リスク
●生産性向上の効果が出るまでの期間

に違いがある。つまりは、「リスクが高いか、低いか」「生産性向上効果が短期間で生じるか、長期間必要か」により、マトリクスを作成することができるわけだ。

投資のマトリクス

投資のマトリクス

無論「リスクが高いか、低いか」とは、あくまで相対的な話である。この世に「リスクがない」投資は存在しない。

相対的に判断する限り、四つの投資は上記のマトリクスの通り分類できる。

もっともリスクが低く、生産性向上効果が短期で出る可能性が高いのは、人材投資である。何しろ、人材投資は金額が相対的に安い。設備投資で大規模工場を建設する場合、最低でも十億円規模の投資が必要になる。それに対し、人事投資は生涯年収で見ても数億円レベルで済む。

しかも、人材投資は経営者が決断すれば、すぐに実行可能だ。設備投資の場合、土地の選定から考えると、工場や店舗の建設まで一年以上を費やすケースも少なくない。

とはいえ、設備投資は公共投資や技術開発投資に比べれば、投資完了までの期間が短い。大規模公共投資は最低でも三年から五年は必要だ。技術開発投資に至っては、特に基盤技術に対する投資の場合は、便益を得られるまで「数十年」必要な場合もある上に、最終的に何の便益も得られないかも知れない。

また、設備投資は曲がりなりにも「市場がある」と経営者が判断した上で実行に移される。無論、投資はしてみたものの、

「市場がなかった」
「市場が足りなかった」

といった事態は、経営上、普通にあり得るが、公共投資や技術開発投資に比べれば低リスクなのは間違いない。

公共投資の場合、例えば高速道路を建設したとして、インフラが地域経済の発展に利するかどうか、実際には投資してみなければ分からない。無論、道路建設の目的は地域経済の成長に限らない。国家全体の安全保障に、一本の道路が資するケースもあるため、「経済的便益がなかった=失敗投資」という話にはならない。

それにしても、市場が確認されない状況であっても、公共投資は実施されなければならないのだ。そうである以上、公共投資の経済的なリスクは、設備投資に比べれば間違いなく高い。

さらに、建設に十数年(あるいは数十年)を要するケースも少なくないため、公共投資の場合は「生産性向上の効果が即座に出る」という話にはならないのだ。

公共投資以上にリスクが高く、生産性向上効果が出るまで時間を要する(あるいは、効果が出ない)のが、技術開発投資である。技術開発投資の場合、開発に従事した「ヒト」が、効果の確認の前に死んでしまうといった話が、普通にあり得る。

例えば、1911年、オランダの物理学者ヘイケ・カメルリング・オネスが、金属を冷やすと電気抵抗がゼロになる「超電導現象」を偶然、発見した。但し、超電動現象が起きる温度は、絶対零度(マイナス273℃)よりもわずか4度(摂氏)高いだけという「超低温」であった。時代が進むにつれ、金属のみならず、いくつかの合金も超電導現象が起きることが確認される。

オンネスは、「電気抵抗がゼロの超電導であれば、超強力な磁石が作れる」と考え、様々な物質で実験を繰り返した。とはいえ、今度は電流による発熱ではなく、自らが生み出した「磁場」により物質が崩壊し、「超強力な磁石を作る」というオンネスの夢は、なかなか実現しなかった。磁場を強くしていくと磁気圧がかかり、超電導体が壊れてしまうのである。

結局、磁場に強く、崩壊を免れる超電導物質が発見されたのは、オンネスの死後であった。ところで、人材投資や設備投資が「生産性向上効果が短期間で出る」という部分は、現在の日本にとって非常に重要だ。何しろ、我が国は未だにデフレーションという需要不足、供給能力過多に苦しんでいるのだ。

『週刊三橋貴明 ~新世紀のビッグブラザーへ~』 Vol.309より一部抜粋

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