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「苦悩する巨人」米IBMの完全復活は近いのか?3つのシナリオ=東条雅彦

クラウド事業が激しく落ち込んできた

ここ1年でIBMの戦略的必須領域の事業進捗に大きな変化が生じています。

まず、戦略的必須領域における、1年前の2016年2Qの状況と、直近の2017年2Qの状況を見比べてみましょう。

<2016年2Q 戦略的必須領域>

出典:IBM

出典:IBM

<2017年2Q 戦略的必須領域>

出典:IBM

出典:IBM

クラウドの成長率がこの1年間で30%から17%に下がっています。

現在、クラウドの分野はAmazonが最もシェアを伸ばしており、IBMは圧倒的に負けている状況です。

<2017年2Q 世界のクラウド市場のシェア>

出典:Synergy Research

出典:Synergy Research

IBMはAmazon、Microsoftの次に位置しており、3番手です。すぐ後ろにはGoogleという強敵が迫ってきています。しかも、IBMはAmazon、Microsoft、Google等と比べて立場的に不利な要素があります。

それはIBMはメインフレーム事業を抱えているため、顧客のシステムをクラウドに移行すればする程、メインフレームの売上高は減っていくという点です。いわゆる、カニバリゼーション(共食い)に陥ります。

IBMの「事業ポートフォリオの入れ替え」は成功するのか?

私はIBMが今進めている事業ポートフォリオを入れ替える戦略は、最終的に成功すると考えています(ただし、予定よりも大幅に時間がかかりそうですが…)。その理由を最も強く感じるのは、IBMの変化に対応する柔軟性の高さです。

今から25年前の1992年、IBMの売上高を主に支えていたのはメインフレームを中心としたハードウェア事業でした。

<1992年の事業構成(売上高)>

170912ibm_10

そして、2016年の事業構成を確認すると、ハードウェア事業はわずか10%まで下がっています。

<2016年の事業構成(売上高)>

170912ibm_11

事業部門自体が変わってしまって、まるで別会社のようです。事業ポートフォリオを変更できるというIBMのDNAは、大きな強みの1つだと思います。

IT業界とは異なりますが、思い出されるのはかつて写真フィルム市場を二分していた富士フイルムコダックです。2000年の時点で、あと10年で写真フイルム市場の9割が消えると予想されていました。

当時、富士フイルムは写真フィルムで売上高の6割、利益の3分の2を稼いでいました。富士フイルムの「本業喪失」への対応はとても早く、写真のコア技術を生かして、化粧品、医療などの新しい領域に事業をシフトさせてきました。

一方、コダックは事業ポートフォリオを入れ替えることができず、写真フィルム市場の9割がなくなった影響を受けて、2012年に倒産してしまいました。

事業環境は常に変化していくので、自社の事業を市場の変化と連動して変えていけるのかどうかはとても重要となります。

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まとめ

<1>

コンセンサスの値をベースに考えると、増収増益に転じるタイミングは2018年~2019年になる。

<2>

悲観的なストーリーを元にすると、増収増益に転じるタイミングは2022年以降となる(株式市場では悲観的な見方をされていて、株価が下落している)。

<3>

25年前のIBMと今のIBMとでは、まったく別会社のようになっている。かつてはメインフレーム事業が中心だったが、今はサービス事業が主体になっている。

<4>

IT業界という変化の激しい事業領域で生き残ってこれたのは、IBMが「変化できるDNA」を持っているためだと考えられる。

今のところ、IBMの事業はアナリティクス、クラウドなどの戦略必須領域にシフトしつつある状況です。市場の早い変化の速度に比べて、対応に苦労していますが、なんとか持続可能な状況だと私は見ています。

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ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2017年9月10日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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