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日経新聞「元旦朝刊のトップ見出し」過去12年分に想うこと=櫻井英明

元旦の日経新聞の見出し、大和とバイロン・ウィーン氏による「2017年びっくり予想」、主要企業の経営者20人による株式相場予想などについて、『兜町カタリスト』の櫻井英明さんが解説します。

2017年びっくり予想、経営者が占う「有望銘柄」ほか展望まとめ

飛べない鳥より、飛ぶ鳥を探せ

元旦の日経1面トップ見出しは「『当たり前』もうない」。サブ見出しは「逆境を成長の起点に」。そして「30兆円覚醒、私たちの手に」。

この30兆円とは政府の成長戦略で計算された「IoT」などでの30兆円のこと。つまり、GDP600兆円への道に示された方向性が登場したことになる。始まった連載は「断絶(Disruption)を越えて」となった。「瞬時に過去の成功体験を時代遅れにする断絶の波」。「断絶がもたらす逆境でこそ、知恵が浮かぶ」。「古い秩序や前例を壊す断絶の力」。トヨタの「脱・ガソリン車」、三菱ケミカルの「脱・石油化学」。

正月から脳裏に残ったのは「」という字。コアコンピュタンスからの脱却が企業成長の礎となるということ。言い換えれば「選択と集中」から離脱した「拡張経営」の方向性だった。中核となるのは07年を境に変化したデジタル社会の到来。2017年のテーマとしてさらに登場するのだろう。

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興味深かったのは2030年の日経平均予想。日経ヴェリタスの市場関係者へのアンケートでは「3万円以上」が4割超。「2万5000円~3万円未満」が31.7%。10年経っても3万円という過去の経験則の延長戦上にいる市場関係者は多い。「脱」とが「断絶」が叫ばれようとしている時に、時代遅れとしか言えない。一番前例とか慣習に囚われているのが、株式市場ではないかという気がする。成熟した企業でさえ変革を望んでいる時代。新興中小型成長銘柄にこそやはり未来はあろう。

飛べない鳥より飛ぶ鳥。ニワトリやペンギンではなく、宙を舞うハトやカラスやスズメを探すことが重要だ。場合に寄ってはインコなのかも知れない。そのキーワードを探す努力を今年も重ねていきたいと考えている。

二流三流の時代

日経元旦朝刊のトップ見出し

06年「強い日本の復活」
07年「富が目覚め経済まわす」
08年「沈む国と通貨の物語」
09年「危機が生む未来」
10年「成長へ眠る力引き出す」=基本テーマは変らない
11年「先例なき時代に立つ」
12年「開かれる知、つながる力」の意味=「C世代を駆け抜ける」
※「C」とはComputer、Connected、Community、Change、Create。
13年「5割経済圏:アジアに跳ぶ」
14年「空恐ろしさを豊かさに」
年始恒例の連載テーマ「リアルの逆襲」
15年「変えるのはあなた」
16年「目覚める40億人の力(インド俊英、続々頂点に)」
17年「当たり前』もうない(逆境を成長の起点に)」

日経元旦朝刊の「経営者が占う2017年」。主要企業の経営者20人の2017年の株式相場の見通し。18人が、高値は「2万1000円以上」と予想。平均は2万1750円となった。1年と言う時間軸で日経平均が10%程度の上昇見通しということ。少し志が小さいような気がする。「トランプ米大統領の政策で米国景気が上向くとの期待。円安進行も追い風に企業の収益拡大」。それで10%でいいのだろうか。

一方で、経営者が占う2017年「有望銘柄」。1位はトヨタ<7203>で4年連続首位。2位は信越化学<4063>で4年連続で2位。3位伊藤忠<8001>、4位ソニー<6758>、5位ダイキン<6367>、同5位日立<6501>。

しかし4年連続トップのトヨタ。昨年はほとんど株価的活躍の余地はなかった。時価総額トップの銘柄を取り上げておけば良かろう、なんて秘書的心理の産物なのだろう。そもそも、ここに登場した銘柄がその年の話題の銘柄になることは少ない。むしろ少数意見の方に真実があるとすれば、リクルート、セガサミー、ALSOKなどの方が面白そうだ。

加えれば…、「当たり前もうない」のキーワードは「二流」。一流が勝てなくなってきたことの裏返しだろう。既存の一流はいつか二流三流に抜かれる。できあがった一流は、ある意味で権威と前例を尊重する人間の集合体。一方、二流三流の多くは、挫折を経験した人間の集合体。順風満帆の人間のもろさは金融危機でよく見えた。「逆境を成長の起点」とするならば、二流三流企業の夢と成長性こそ市場の中核

純粋培養ではなく雑種の時代。「100年企業を目指す」という声は多い。しかし、100年続いてきた企業はザラにある。そんな短い時間軸でなく「1000年企業」という尺度でものを考える時が来たのかも知れない。1000年という時間軸で残ってきたモノや国、価値観はきっと本物に違いない。十字軍や平安時代の摂関政治。その頃から今まであるものがない訳ではない。

因みに、1月4日の日経朝刊「私の履歴書」のカルロス・ゴーン氏。担任の神父さんの言葉は「物事を複雑にしてしまうのはそれが何も理解できていないからだ」。これは結構印象に残る言葉だった。

Next: 大和とバイロン・ウィーン氏による、2017年「10大びっくり予想」

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